May 06, 2012
color5楽譜 3つのサラバンド

color5楽譜 3つのサラバンド
T.Fuwa
初期の名曲「3つのサラバンド」の、新記譜法「color5」による楽譜。
「color5」とはWebサイト「楽譜の風景」管理人、T.Fuwa氏出版の譜面に採用されている新記譜法であり、♯=赤、♭=青、ダブル♯=橙、ダブル♭=水色など一定の法則で音符を色分けしてあることを特徴とする。特に臨時記号の多い曲で威力を発揮し、譜読み間違いの防止や、(慣れは必要だが)スピーディーな譜読みへの寄与が期待できる。
画像はサラバンド3番の一部であるが、従来の譜面と比較していただければ一目瞭然、非常にすっきりと、簡潔明快にまとまっている。

譜面上に臨時記号が無いことは、譜面の横幅を狭めることにも貢献しており、結果的に譜捲り回数の減少につながることも大きなポイント。(画像の部分でもcolor5で5小節の幅に対して、従来の楽譜では3小節も収まっていない。)
今回紹介のサラバンド1〜3番については、3曲とも各々A3用紙1枚に収められており、譜捲りの必要が全くない。また、DL販売で製本されていないことを逆に利用し、A3楽譜には横に五線が貫くスタイルを採用、さらに見やすくなっている。その上で、A3プリンタ所有者は多くないことや、iPad等の端末での使用も考慮し、A4版も用意されているのが嬉しい。
他に、大譜表におけるト音記号とヘ音記号の間のスペースが、実際の音符の高さの幅と一致していることや、従来は加線を用いて表現していた低音部をもう一段ヘ音記号の五線を用意するなど、「色」以外の要素でも工夫が見られる。とにかく「見やすい楽譜, 譜読みしやすい楽譜」を意図して作られていると言える。
また、底本とされたサラベール版では第1〜3番全てに臨時記号の記入漏れなどが散見されるが、明らかな間違いと判断できるものについては、手直しが加えられていることにも触れておきたい。
このような独自の規格には、反対者も一定の割合で発生するのが常であろう。そしてその批判内容がどのようなものかも大体察しはつく。しかし、ただ単純に「趣味でサティの曲を弾きたい!」という人の、ハードルを下げるためにも、このような一つの「選択肢」が用意されていることは非常に有意義と言えるのではなかろうか。
クラシックをより容易に楽しむための一つの手段として、「color5」は非常に優れた表現法であると言え、今後のさらなる発展を期待したい。