こんばんは。ユーフォ大好き、いぬもにです。


今回は「届けたいメロディ」パロの夏奏SSです。
どうしても、夏奏で書きたくて。

パロですが、私なりに精いっぱい書いたので、
お付き合い頂けたら幸いです。


【ユーフォSS】「大嫌いだった先輩の卒業式」


明日、演奏が下手な副部長が卒業する。
下級生の私がアドバイスをし続けた面倒な夏紀先輩。

私は、この先輩が大嫌いだった。

練習をサボったり、後輩いじめをしたりする先輩なら、
どれだけ気が楽だったか。心の中から蔑めたのに。

以前、久美子先輩に愚痴ったら

「実は、去年の春は窓辺で寝てたよ」

と、こっそり教えてくれた。

「そして、私にも大嫌いだった先輩がいたんだよ」

とも。


「まさか、全国大会で吹いてた赤い眼鏡の先輩ですか」

「うん。奏ちゃんみたいに何でも見透かしてる癖に、
自分のことは全然話さなくて、友達やコンクールなんて
どうでもいいって言っちゃう先輩」

「先輩、私のことも軽くディスってませんか?」

「あっ・・・」


久美子先輩の失言は今に始まったことじゃない。
ただ、久美子先輩が大嫌いだった先輩と、
どうお別れしたのか気になった。


「先輩の失言は慣れてるからいいです。それより」

「ごめんね。ん、それより?」

「大嫌いだったってことは過去形ですよね」

「うん。卒業時は大好きでたまらない先輩になった。
だから、正直に大好きっだって告白したよ」


女同士で愛の告白なんて。
第一、久美子先輩には塚本先輩と言う彼氏がいるのに。


「奏ちゃんも嫌いから大好きになった先輩がいるよね?
その先輩に何も言わなくて後悔しないようにね」


久美子先輩は、私が夏紀先輩を大好きになったと
誤解している。
だからこそ、ここまで喋ってくれているんだ。


家に帰ってからも、久美子先輩の

「何も言わなくて後悔しないようにね」


が頭からこびりついて離れない。

べ、別に、夏紀先輩が大好きって訳じゃない。
アドバイスするのが当たり前だったから、
先輩が引退したら、少し物足りないだけ。

先輩が引退してから、久美子先輩に「集中して」
と注意されることが増えたのは、たぶん気のせい。


じゃあ、久美子先輩の言葉が引っ掛かるのは
何でだろう?

引っ掛かる理由はわからないけれど、最後に
挨拶できたらスッキリしそうな気がした。

「そうですね。最後にアドバイスしましょう」

卒業する先輩にアドバイスするのもおかしな話
だけど、夏紀先輩と私の関係はイビツだったから。


翌日。

季節はずれの雪がちらつく中、夏紀先輩を
急ぎ足で探した。

探している最中、吉川元部長に泣きついてる
高坂先輩という恐ろしい図を見た気がするのは
幻影だと思いたい。

りりりんは鎧塚先輩に、いつもの調子で話してる
と思ったら、号泣していて先輩を困らせていた。


全く、調子が狂う・・・

と思いながら、夏紀先輩を探し続けた。


「奏、やっと見つけた」

走っている後ろから、探し人の声が聞こえた。


「夏紀先輩、探したんですよ」

「うん、私も奏を探してた。見つかって良かったよ」

「スカーフないんですね」

「奏にあげようと思ってさ」


そう言って、夏紀先輩は私の手に自分のスカーフを
押し付ける。

青いスカーフ。貰ってもつける場所なんてないのに。


「これぐらいしかなくて、ごめん」

「何かを貰いたくて、先輩を探してたんじゃ・・・」


いつもみたいに、言い返すつもりだった。
なのに、何故か嗚咽が止まらなくなってしまった。


「うん。知ってる」

頭の上が暖かい。
初めて優しく撫でてくれるのが悲しくなって、
余計に涙が止まらなくなった。

「でも、最後ぐらい先輩らしいこと、させて」

そうだ。
これが最後なんだから、アドバイスしなくちゃ。


「先輩、卒業してもユーフォ続けてくださいね。
そしたら、苦手の高音も上手になりますから。
あと・・・」

「奏」

最後のアドバイスを続けようと頑張って話して
いるのに、夏紀先輩に指で唇をふさがれた。

「そういうアドバイスは、4月に入ってくる
後輩にしなよ。私は引退したんだからさ」


優しい顔で真実を突きつける先輩。

そんなのわかってる。わかってた。
だって、先輩は音大じゃなくて、普通の大学に
行くんだから、ユーフォを続ける訳なかった。

でも、それでも、私は。

「もっと、夏紀先輩にアドバイスしたかった。
私のアドバイスで上手になっていく先輩を
ずっと見ていたかった・・・」

立っていられなくて、しゃがみこんで
泣き出した私に合わせて座って、頭を撫でる
先輩の優しさが辛い。

「うん。有難うね」

「奏より上手な後輩が入る可能性って低いからさ。
4月になったら、アドバイスしてやってよ」

「はい」

「いい返事が聞けて安心した。じゃあ」

私の返事を聞いて、先輩が立ち上がる音がした。

嫌だ。まだ、お別れしたくない。だって・・・


「さよならって言いたくないです」

「そっか。じゃ、またね」

「はい」

笑顔で去っていく先輩を見送った。

目じりに涙を浮かべていたのは、先輩も
私と別れるのは寂しいと思ってくれたのかな。

オーディションまで、先輩にひどいことばかり
したのに、お人よしだな。

でも。だから、そんなお人よしの先輩だから
アドバイスしたくなって、受け入れてくれるから
伝わりやすい説明を一生懸命に考えたんだ。


押し付けられた青いスカーフに文字が見えた。

目を凝らしてみると

「響け!奏」

と書いてあった。

「うふふっ。響け!って何ですか、もう」


先輩らしい筆跡の文字を見ると、また涙が
あふれ出てきた。
これから、合奏練習があるというのに。


「奏ちゃん、合奏練習するよ」


遠くから久美子先輩の声が聞えた。

涙を拭いて行こう。
面倒な先輩のメッセージを受け取ったからには
私のユーフォニアムを響かせなきゃ。

先輩にバレないように涙をこっそり拭いて、
いつも通りに優雅に歩き出した。

「響け!奏」

自分の名前を一番好きだと思った、この瞬間。
私は一生忘れない。


<完>


書きたいことは書ききったので満足です!


ではでは、ここまで読んでくださり有難うございました。
感謝のぺっこりん!