こんばんは。ユーフォ大好き、いぬもにです。

第二楽章を読んだり、その感想をフォロワーさんと
リプで会話しあったりで。
未だに妄想が止まりません。

4月には『北宇治高校吹奏楽部のホントの話』が
発売されるツイートも出ました。


公式で発表がある前に、今の妄想を吐き出して
しまおうと、せっせとSSを書いています。

今回もそんな内容です。
お付き合い頂ければ幸いです。


【ユーフォSS】「1年後の卒部会」


今日は卒部会で吹く曲を決める。

未だに、大勢の前で話すのは慣れない。

怖いというより、変に照れるというか。

でも、そんな感情になる度に、北宇治の未来を
私に託した優子部長と恋人解消を快諾した
秀一を思い出して、奮起する。

部長になったんだから、と。


「卒部会の曲を何にしたいですか」

あ、しまった。
吹きたい曲を書いてもらってから投票制にすれば
良かった。


「リズと青い鳥だけはパス」

「あれは鎧塚先輩と傘木先輩のソロがないとね」

「宝島!」

「1年は演奏してないよ」

「きらき・・・スター・パズル・マーチ!」

「葉月ちゃんはきらきら星が好きですもんね」

嫌な予感が的中した。

みんな、口々に演奏したい曲を言っては他人の
意見を封鎖したり、同意したりで意見がまとまる
気配がない。

自分が演奏したい曲を選べるチャンスは最高学年に
なった今でも中々ないから、当たり前だ。

私も部長じゃなかったら、「愛を見つけた場所」
と発言して幹部を困らせたに違いない。


「ワタシ、テキーラやりたい」

そんなガヤガヤした雰囲気の中でも、麗奈の声は
凜として聞こえてきた。

「えー、テキーラのソロは小日向さんじゃん」

誰かが笑いながら言う。

麗奈のソロは鉄板。

おそらく、誰もがそう思っていた。

私もそうだ。

ドラムメジャーの麗奈は卒部会で指揮者なのに
トランペットが目立つ曲を無意識に探している。


「だから」

誰かの茶化すような発言にも、真面目な声の
トーンで続ける。

「ワタシは指揮者だし、小日向さんがソロも
しっかり吹ければ、先輩達も安心すると思う」

送り出す先輩のことまで考えた選曲に反対する
者はいなくなり、賞賛の声ばかりになる。


「小日向さんの成長を見せられるなら」

「テキーラなら明るく送り出せるし」

「3年のソロもないし、いいと思う」

みんなが口々に言っていた曲も副部長の秀一が
しっかり黒板に書いていたけれど、多数決する
までもなく、テキーラに決まった。


ドラムメジャーの麗奈のしごきは滝先生の
指導が優しく思えるほど、厳しかった。

特に、夢ちゃんは集中攻撃を受けていた。

だけど、一度ソロを成功させた体験がある
夢ちゃんは麗奈のしごきにもついて来て、
演奏会よりも更に上達していった。



卒部会当日。

3年生は「学園天国」と意外な選曲だった。

「いやあ、ウチラは人数少ないからさ、
学園天国がちょうど良かったんだよね」

1年は演奏してない曲でごめんと、苦笑する夏紀先輩。

加部ちゃん先輩も
「一回だけだから」
と吹いた姿に葉月ちゃんや何人かが号泣した。

私も一瞬、視界がぼやけた。

でも、部長が泣く訳にはいかない。

甘えは秀一に預けたイタリアンホワイトの
ヘアピンに置いてきた。


3年の演奏が終わったら、私達下級生の番。

「それでは聞いてください。テキーラ」

ドラムメージャーの麗奈がスラスラと挨拶をして、
指揮のするために、こちらに振り向いた。

そして、両手を上げる。

滝先生ラブの麗奈は指揮者としても滝先生を
リスペクトしていて、指揮棒を持たない。

高校から滝先生の両手のみの指揮に慣れてきた
私達には麗奈の指揮も演奏しやすかった。

夢ちゃんのソロは今までの最高の出来で。
彼女のソロが終わった後に、加部ちゃん先輩と
優子部長が泣き崩れたのが見えた。

我らの夏紀先輩は最初から泣いていた。
ああ見えて、かなり涙もろいんだよね。

夏紀先輩が泣く姿を見ても、チューバをはじめ、
低音パートは乱れる事なく演奏しきった。

今までの葉月ちゃんだったら、途中で演奏
できなくなっていたし、さっちゃんもつられて
演奏を止めていたに違いない。

意外と泣き虫の奏ちゃんも頑張って吹いた。
吹き終わった後の瞳はいつもに増して赤かった
けれど、最高の演奏をしていた。

緑ちゃんの演奏時の切り替えは流石で
全く乱れなかった。求君は、いつも通り。

これなら、先輩方も安心して卒業できる。
そう確信した瞬間。


「ブラボー!」

演奏者よりもずっと少ない観客達は、演奏よりも
大きな声で叫んだ。


ブラボーが聴こえた瞬間、緊張の糸が切れた
下級生たちは号泣し出した。優雅にお辞儀していた
麗奈ですら、肩が微かに震えている。

あの麗奈ですら、とつられそうになるけど。
グッと堪えた。

だって、私は部長。

部長がここで泣いたら総崩れになる。
せめて、卒部会が終わるまで堪えて、
号泣してる皆を何とかしなくちゃ。


私の後ろで吹いていた秀一が前に出た。

「今はまだ、音が薄い新体制ですが、
新入生を沢山勧誘して全国を目指します」

頭をかきながら、副部長らしいことを言う
秀一。
でも、優子部長は即ダメ出しをした。

「全国を目指すんじゃなくて、金賞でしょ」

「あ、はい」


涙声の優子部長の檄に、いつも通りの口調で
答える秀一を見て、私も落ち着いてきた。


「先輩達の夢をついで、私達の目標でもある
全国大会金賞を必ず取ります!」


秀一の隣に並んで、力強く宣言する。


「アンタが言うなら安心できるわ」

「あ、あの。俺、副部長ですが」

「全国を目指すと言う男は信用できんわ」

「そんなぁ」

「しっかり見届けるからね」

「はい!」

優子部長の言葉に、下級生全員が返事をする。
既に泣いてる者はいなかった。


その様子に、やっと気が付いた。

秀一が「全国を目指す」とわざと言ったことに。


新体制になってから、「全国大会金賞」を目標に
練習をしてきた。滝先生からも麗奈からも

「これでは、全国金賞は無理」

と何度も檄を飛ばされたことか。

副部長の秀一は塾に通う時間を減らしてまで
練習に専念していた。

「一度は取りたいよな。全国大会金賞」

中学からの夢だしさ。
と、呟いた彼が間違える筈がない。


泣き止まない下級生を何とかするために
優子部長が突っ込みそうなボケをしたんだ。


秀一の細かい目配りと気遣いには本当に叶わない。



私達のテキーラが卒部会の最後の演目だった。


後は自由時間。

先輩と後輩が名残惜しそうに時間の許す限り、語り合う。
昨年は違うパートの先輩方ともお話した。

でも、今年はそんな気分になれなかった。

幸い、部長の出番はないので、みんなの邪魔を
しないように、そっと音楽室を出た。


廊下に出ると、思ったよりも暖かい空気が
流れていた。


もうそろそろ、春が近い。

新入生を勧誘する季節が近づいて来た。


<完>


最後まで読んでくださり有難うございます。

アニメと第二楽章の設定のいいとこどりしてます。

卒部会も秀久美風味も書きたかったから、ご都合主義
だなと思いつつ、楽しんで仕上げました。

読んでくださった方にも楽しんで頂けたら幸いです。


ではでは、ここまで読んでくださり有難うございました。
感謝のぺっこりん!