こんばんは。桐野もにです。

実は、pixivでは同名義でウマ娘SSも書いてまして。ルドエア(ルドグル)とフジグルをメインにSSをアップしているのですが。フジグルSSは滅多にアップされないという諸事情のため、書き上げたフジグルSSは先にブログにアップしておこうと思いました。

そのうち、pixivのみでアップしているSSをブログにも転載しようと検討中です。


とりあえず、今回は、こちらのフジグルSSをどうぞ~。


【ウマ娘SS】「頭痛のエアグルーヴを看病したいフジキセキ」


その日。
練習熱心なエアグルーヴが、まだ日も高いうちにトレーニングを切り上げていた。遠くからでも、真っ青な顔をしていて、体調不良になっているとわかった。

1人で歩いて帰れる体調不良は、頭痛だろうか。発熱していれば、赤い顔をしているし。咳き込んでいる様子もないから風邪ではない。何よりも、頭を押えながら歩いている。

「後で、お見舞いに行こうかな……」

うっかり、考えてたことを口に出してしまっていたらしい。

「エアグルーヴが心配?」

背後から、いつの間にか近くに来ていたトレーナーさんに声を掛けられた。

「うわっ!トレーナーさん、何でもないよ。さあ、トレーニングを再開しなくちゃね」

エアグルーヴは気になるけど。トレーニングの後に寮に帰ってからお見舞いに行けばいいし。トレーニングを疎かにする訳にはいかない。

「フジキセキの今日のトレーニングメニューは、エアグルーヴの看病に変更になりました。彼女が心配なんでしょ。早く行ってあげて」

なのに。
トレーナーさんは、笑顔でとんでもない提案をしてきた。看病がトレーニングメニューとか言われても、誤魔化されないからさ。

「いやいやいや!そんな訳にはいかないよ」

「ダーメ!エアグルーヴを気にしながら走って怪我されたら困るし。それに、最近、レース続きで疲れもあるだろうしね。今日は走るのは切り上げよう」

笑顔のまま、正論を言われてしまっては、どうしようもない。事実、トレーナーさんと話している今もエアグルーヴが心配で仕方ない。特に、今日は彼女と同室のファインモーションが不在だから、尚更。

「わ、わかった」

「物分かりのいいフジキセキちゃんに、とっておきの情報を教えてあげる。購買で飲む人参ゼリーが新発売したんだって。甘い人参ゼリーが好きなウマ娘には大好評らしいよ」

トレーナーさんは、たまに甘いもの情報を教えてくれる。
もちろん、トレーナーさんは私が甘いものが苦手なのはわかっていて。だからこそ、甘いものに疎い私に情報を流してくれる。しかも、病人でも食べられそうなものばかり。

「何から何まで有難う、トレーナーさん」

「どういたしまして。フジキセキの大切なポニーちゃんは私も気になるから」

「あー、エアグルーヴは大切な友人だけど、ポニーちゃんとか、そういうんじゃないから!」

「はいはい。そういうことにしてあげる。早く行ってあげて。きっと、エアグルーヴもフジキセキがお見舞い来てくれたら、心強いと思うし。ね?」

「うん。有難う、トレーナーさん!」

トレーナーさんに一礼をして、更衣室に駆け出した。後ろから

「ほんと、素直じゃないんだから」

と、トレーナーさんの独り言が聞こえた気がした。


******


制服に着替えて、購買に寄り道する。
いつも、エアグルーヴのお見舞いに買っている人参クッキーと、オペラオーことテイエムオペラオーがお気に入りのミネラルウォーター。それに、トレーナーさんから教わった新発売の飲む人参ゼリーを買った。

オペラオーがお気に入りのミネラルウォーターは、病人モードのエアグルーヴも好きらしく。お見舞いの時に、薬を飲む用に持っていくようになった。

他の栗東寮のポニーちゃんが体調不良になっても、ここまではしない。何故か、エアグルーヴにだけは、お見舞い品まで持って行ってしまう。
ああ、頭痛薬と飲むゼリーを食べさせるための小皿とスプーンも持って行った方がいいかな。部屋に置いてあるのを忘れずに持って行こう。


******


寮に帰って、ルームウェアに着替えてから、お見舞い品と頭痛薬と小皿にスプーンを持って、エアグルーヴの部屋に行った。ノックをして、

「入るよ」

声を掛けてから、中に入ると。エアグルーヴはベッドの中にいた。日が高いうちから、ベッドに入るほどの酷い頭痛なんだ。

「エアグルーヴ、調子はどう?」

って聞くまでもなかったか。涙目で首を横に振っている。

「薬は飲んだ?」

「飲んでない。レースに響きそうで怖いから」

「この頭痛薬なら飲んでも大丈夫だよ。でも。まず、何かお腹に入れないとね。人参クッキーは食べられそう?」

普段なら、人参クッキーはエアグルーヴの大好物だ。でも、泣きそうな顔で首を横に振った。噛み締めると頭に響くのかもしれない。
それなら、飲む人参ゼリーなら、どうだろう。ちょうど、お見舞いで買ってきたし。

「飲む人参ゼリーもあるよ。新製品だから買ってきちゃった。試してみる?」

「ん……」

エアグルーヴがやっと首を縦に振ってくれた。飲む人参ゼリーを吸い上げるのは難しいかな。小皿に出してスプーンで掬って、彼女の口元に持っていく。

「どうかな?もう少し食べる?」

「うん」

少し笑顔になって頷いてくれた。

「わかった。はい、あーん」

飲む人参ゼリーをスプーンで掬って。何度か食べさせた。これぐらい食べれば、薬で胃を荒らさずに済むかな。

「次は薬を飲もうね」

エアグルーヴの口の中に頭痛薬を入れて、すぐにペットボトルの水を飲ませた。

「もう大丈夫。少し眠れば良くなるよ」

「うん……」

耳が垂れたままで、やる気もかなり落としたようだ。カップケーキを食べたら、やる気が上がったと先輩たちが話していた。
私には理解出来ないけど、甘いものが好きなエアグルーヴなら、やる気が上がるかもしれない。

「あのさ。元気になるためにカップケーキも食べようよ!購買のカップケーキは美味しいらしくて、やる気も上がるって、先輩から聞いたんだ。今から、買ってくるよ」

立ち上がろうとしたら、Tシャツを強く掴まれていて動けなかった。

「カップケーキより。添い寝が、いい……」

Tシャツを強く掴んでいる指は震えている。かなり、勇気を出して甘えてくれたんだ。その勇気に答えないとね。

「いいよ」

裾を掴んでいる指を上から包み込みながら、ベッドに入った。

「花嫁さんの角隠しの部分を手で温めると、頭痛が少し楽になるんだって。試してみる?」

「うん」

エアグルーヴのこめかみより少し上の部分に軽く手を当てる。かなり冷たくなっていて、ひんやりした感覚がエアグルーヴの頭痛の辛さを伝えてくる。

「どうかな?」

「温かくて気持ちいい……」

「良かった。しばらく、手を当てているね」

「うん」

エアグルーヴがピッタリとくっついてきた。体調不良の時は甘えん坊で、添い寝をせがんでくっついてくる。そして、しばらくすると。

「すぅすぅ……」

規則正しい寝息を立て始める。穏やかな顔で眠っていて、頭痛薬が効いてきたと教えてくれる。

「お休み、エアグルーヴ」

頭を撫でてから、ふんわり抱き締めて、目を瞑った。


******


うっかり、熟睡してしまった。腕の中にいるエアグルーヴは、まだ穏やかな顔で眠っていた。

「良かった。頭痛は治ったみたいだね」

ピッタリとくっついたまま眠る姿が愛おしくて、ついつい過剰に世話を焼いてしまう。他のポニーちゃんが頭痛になっても、
「お大事にね」
の一言で終わらせるのに。

エアグルーヴにだけは、デザートを買ってきて食べさせたり薬を飲ませたり。頼まれれば、添い寝までしている。

「君に甘えられるのが、私は好きなのかな」

添い寝をおねだりする甘えん坊なエアグルーヴは、とびきり可愛い。ギャップ萌えという奴だ。そして、私を信頼して、体を預けきって眠る隙だらけな姿も保護欲を掻き立てる。

「ふじ?」

半分寝ぼけながら上目遣いで見上げて来るの反則。何、その可愛い仕草は。普段とのギャップが激しくて萌えてしまう。

「頭痛は治まった?」

「うん。看病してくれて有難う……」

「どういたしまして。治って良かったよ」

うっかり、体調不良の時の癖で頭を撫でてしまったけど。エアグルーヴは嬉しそうに撫でられるままでいる。瞳まで細めて、尻尾も振ってるから、布団が大きく波打っている。

「あの。頭痛が治ったら、もう撫でてもらえない?」

急に尻尾の動きが止まったと思えば、泣きそうな顔で可愛いことを聞いてきた。さっきの返事も
「うん」
だったし、本調子じゃないかもね。

「エアグルーヴが望めば、いつでも頭を撫でてあげるよ」

頭を撫でながら、本心を伝えれば。再び、尻尾をバタバタと振り始めて、泣きそうだったのも笑顔になった。

「他に何かして欲しいことはある?」

「もう少しだけ、こうして甘えて……。やっぱり、今のナシ!」

本当に可愛いな。必死におねだりしたのに、真っ赤な顔で打ち消そうとして。もちろん、本音は甘えたいのはわかったから、私から抱き締める。

「ふぇっ!?ふじ?」

「好きなだけ甘えていいんだよ。病気じゃなくても、いつでもさ」

「でもでも。頭痛や風邪の時は看病して貰ってる大義名分があるけど。元気になったら、恋人しか甘えられないものだし。フジにはトレーナーさんがいる……から」

「トレーナーさんと付き合ってないよ?だって、トレーナーさんには恋人がいるんだから」

「じゃ、じゃあ、ただの噂だったんだ。良かった……」

「エアグルーヴさん?」

「ふぇっ!?な、何でもない!忘れて!」

耳をヘニャリと垂らして、私の胸に顔を押し付けてきたけど。火照ってるみたいで熱い。

まさか、ね。
エアグルーヴが私を恋愛相手として好きな訳ある筈……

「フジ、大好き……」

あった。

すごく小さい声だけど、ウマ娘の聴力は偉大だ。一字一句バッチリ聞こえた。

「い、今の聞いてない…かった…よ、ね?」

泣きそうな顔で確認してきて。本当に私に恋をしてくれてるんだとわかった。聞こえなかったと言えば、今まで通りに過ごせるかもしれない。

でも、独り言のフリして、必死に想いを伝えてきたエアグルーヴを大切にしたい。そっか。大切にしたいってことは、私もエアグルーヴを好きなんだ。

体調不良の時だけ、甘えん坊になると思っていたけど。本当は常に甘えたがりで、でも遠慮ばかりしちゃう彼女が愛おしい。

エアグルーヴにだけ、過剰に世話焼きしてしまうのも好きだからだ。やっと、気が付いた。

「ゴメン。聞こえた。私もエアグルーヴが好き」

ギュッと抱き締める。腕の中で震えているのが愛おしくて、左手は頭を撫でる。思う存分に甘えていいと伝わることを願って。

「何だか、フジの大切なウマ娘になったみたいな気がする」

「なったみたいじゃなくて。エアグルーヴは私の大切なウマ娘だよ。もう、ずっと前からね」

好きと気付いたのは、今だけど。
過剰に世話を焼いてしまうし。トレーニングを切り上げられるぐらい、心配してしまうし。

「ずっと前から?」

「うん。エアグルーヴだけなんだ。こんなに過保護に看病してしまうのは。何か、心配でさ。ついつい、目の前で薬を飲ませて眠って治るのを見届けないと不安になるんだ」

「他のウマ娘には看病してない?」

「してないよ。せいぜい、医務室に連れて行くぐらいかな」

「そっか。ふふっ……」

「急に笑い出してどうしたの?」

「本当にフジに大切にされているんだなと、わかったら嬉しくて」

思いきり体を預けてくるのが愛おしくて。体調不良の時以外も甘えて欲しかったんだなと気が付いた。

「私もエアグルーヴに甘えられるの嬉しいな」

「ほんと?」

「うん。甘えん坊なエアグルーヴは、とびきり可愛いからね。だから、ついつい過保護に世話を焼いてしまうんだよ」

「そんな優しいこと言われたら、もっと甘えちゃ。きゃっ!」

ギュっと抱き締め直して、頭を撫でる。

「これでいいのかな?」

「うん。ずっと夢だったんだ。病気が治っても、フジに甘え続けるのが。でも、もう高等部だし、フジには恋人がいるからと思って遠慮してた」

モジモジしながら、遠慮がちに言うのがいじらしくて。つい、髪をグシャグシャと乱暴に撫でてしまった。

「エアグルーヴ、知ってる?恋人や家族には、何歳になっても甘えていいんだよ」

「添い寝のおねだりも?」

「もちろん!」

顔をパアッと輝かせるのが可愛い。
だけどね、エアグルーヴ。恋人には、もっともっと甘えていいんだよ。彼女の髪をかきあげて、そっと額にキスを落とした。

「あっ……」

「キスは気に入ってくれたかな?」

「うん。もう一回……」

「いいよ」

額にキスされると思って、自分で髪を持ちあげてるのが愛おしいけど、ゴメンね。せっかく、恋人になったから、桜色の唇に口付けさせてもらうよ。

唇にキスした瞬間、瞳をパチクリとさせてるの本当に可愛いな。何が起きたか、数秒後に理解して。私の胸に顔を埋める仕草は、甘えん坊で照れ屋のエアグルーヴらしい。

「エアグルーヴ、愛している」

さっき、グシャグシャにした髪を整えながら、もう一度告白した。


< Fin. >


ではでは、最後まで読んでくださり、有難うございました。感謝のぺっこりん!