こんばんは。いぬもにです。
前回のSS【京咲SS】「リセット」で、風越女子の文堂星夏ちゃんを
咲ちゃんの中学時代の同級生として捏造登場させました。
書いてるうちに、星夏ちゃんに愛着がわいてしまって、もっと
星夏ちゃんと咲ちゃんのふたりの話を書きたいなと思いました。
前回のSSはユーフォパロでしたが、今回はパロなしです。
ついでに、京ちゃんの出番もありません。
でも、捏造・・・いえ、妄想盛り沢山なので・・・
「妄想てんこ盛りはちょっとー」って方は回れ右してくださいね。
【SS】長野県大会個人戦2日目
今日は長野県大会個人戦2日目。
お昼ご飯を食べ終わった後、風越のメンバーと別れて、試合会場に向かった。
(ふぅ、なかなか順位は上がらないなあ)
私、文堂星夏は会場の天井を見上げてため息をついた。
今日の本選に出場できたものの、全国大会に行けるベスト3に入るのは
無理だと最初からわかっていた。
私は風越女子のナンバー5。学内だけでも、私より強い人が4人もいる。
吉留先輩と深堀先輩は手堅い打ち手で隙がない。
ナンバー2の池田先輩の火力にはとても敵わない。
そして、火力も防御力も兼ね揃えたキャプテン。
団体戦に共に出場した先輩達に勝てる気がしない。
他校も強い人ばかりだ。
団体戦の中堅で対戦した清澄の竹井さん、龍門渕の国広さん、鶴賀女子の
蒲原さん。清澄には昨年インターミドルチャンプの原村和もいるし、
龍門渕のメンバーだって強い。鶴賀の大将も池田先輩より一枚上手に
思えたし、鶴賀の副将もオカルト能力を持っていると深堀先輩から聞いた。
個人戦のみ出場している強い選手もいるから用心しろと久保コーチから
注意もあった。
そして、何よりも。
咲ちゃん。清澄高校の大将を務めた宮永咲。
まさか、中学の同級生があんなに麻雀が強いとは思わなかった。
池田先輩を和了らせて窮地を凌ぎ、天江衣をまくり大逆転して、
全国大会行きの切符を手にした。
咲ちゃんが池田先輩を和了らせたというのは、試合から数日経って
キャプテンが教えてくれたことだ。
「あの子、華菜が点数を言う前に点棒を正確に用意してたの。間違いなく、
差し込みだけれど、華菜の和了り役がわかっているのが怖かったわ」
いつも落ち着いているキャプテンが震えていたから印象に残っている。
「こんな人たちを相手にして、全国大会なんて行ける訳ない・・・」
思わず、本音を呟いてしまった。
でも。私は風越女子の部員だから。
今年は全国大会に行けなくても、これから順位を上げて来年に繋げ
なくては。自分に喝を入れて、午後の最初の試合会場に向かった。
「あ、咲ちゃん」
部屋に入ったら、咲ちゃんがいた。
呼びかけたら、中学時代と変わらず、穏やかな笑顔で振り向いた。
あのギラギラした勝負師の表情だった団体決勝戦が嘘のようだ。
「星夏ちゃん、久しぶりだね」
声のトーンも中学時代とまるで変わらない。
「うん、久しぶり。個人戦で当たると思わなかった」
「私も・・・」
咲ちゃんは穏やかに微笑みつつ。一瞬、下を向いて顔を上げた。
私を正面に見据えた顔は、あの団体決勝戦の時と同じ表情になっていた。
一見、笑顔だけど。目がギラギラしている勝負師そのものの表情に。
「星夏ちゃん、ごめん。私、本気で打つから」
現在の咲ちゃんの順位は、意外にも私と同じぐらいだった。
順位を上げるには1位を取るのが手っ取り早いのはわかっている。
これは真剣勝負なのだから。
「もちろん、試合だから当然だよ。私も全力で打つから!」
だから、私も答えた。相手が咲ちゃんでも手抜きなんかする訳ないと。
「ふふっ、よろしくね」
「こちらこそ」
残りの2人も部屋に入ってきた。
予選ギリギリ通過組のようで、現在の順位もビリに近い。これは咲ちゃんとの
勝負になるなと試合前は思っていた。
「ツモ。2600、1300です」
「ロン。3200です」
「ツモ。2300、1200です」
試合が始まったら、咲ちゃんは速攻でどんどん和了った。少しでもミスしたら
ロンされる。何も出来ないまま、咲ちゃんの親番の東4局になった。
「ツモ。4000オールです」
「ロン。4800です」
「ロン。12000です。お疲れ様でした」
連続で3回和了り、同卓の子がトンで試合が東風戦で終わった。
「あ、有難うございました」
トンだ子はお辞儀はしたものの、声は出てなかった。狙い撃ちのように
飛ばされたのだから当然だと思う。ギリギリ点棒が残った私達でさえ、
声が震えていたのだから。
「星夏ちゃん、お互いにお疲れさまだね!」
試合終了後、咲ちゃんから声を掛けられた。
彼女がどんな表情をしていたのか、私には見る余裕もなかった。
「咲ちゃん、すごいね・・・」
やっと、これだけを言えた。
「星夏ちゃんも手強かったよ。本当は星夏ちゃんを飛ばしたかった
んだけど、隙がなくて出来なかった」
「え?」
だから、試合前にごめんと言ったんだ。順位が近い私を飛ばす予定
だったから!
狙い飛ばされて挨拶で声も出なくて、うな垂れて部屋を出たあの子。
私があの立場にいた可能性もあったと思うと、体も震えてきた。
「無謀かもしれないけど、個人戦でも全国に行きたいんだ。原村さんに
全力になれって怒られちゃったし」
舌をペロって出しながら話す咲ちゃん。
現在の順位も手加減していたからと暗に言っていた。でも、残り試合は
午後の分だけ。ここから順位を上げて全国大会行きの切符を手にする
のは無謀に思えた。
「咲ちゃんは、この順位から全国大会行きを狙うの?」
「うん。まだ幾つか試合は残ってるから」
「う、うちのキャプテンも倒して?」
「総合得点で抜かすのは難しそうだけど、同卓したら全力で頑張るよ」
勝つと言わなかったのは、流石にキャプテン相手だったからか。
「じゃあ、またね」
「うん」
咲ちゃんと別れて、次の試合会場に行く途中。池田先輩に会った。
「早い試合だったんだな」
「咲ちゃん。あ、清澄の宮永さんが同卓の子を飛ばしたので」
「宮永らしいな!文堂は、次の試合から頑張ればいいし!」
「え?らしい?」
「ああ、やっとエンジンが掛かったんだな。あいつなら、
同卓の奴を全員飛ばすぐらい朝飯前だ。そのぐらい、強い」
池田先輩がキャプテン以外を誉めるなんて意外だった。
しかも、全員を飛ばすぐらいに強いと評価するほどに。
「池田先輩は、キャプテンと、さ・・・宮永さんだったら、
どちらが強いと思いますか?」
だから、思わず聞いてしまった。
「キャプテンだし!と言いたいけど、難しいな」
「そうですか」
咲ちゃんはキャプテンと同等・・・ そんなレベルだったんだ。
「とにかく、今は自分の順位を上げることだけ考えるんだ。
まあ、私も厳しい戦いだけど全国を目指すよ」
池田先輩の順位は一桁台。私よりも全国大会行きは現実味が
ありそうだった。たしかに、今は人のことよりも自分のことだ。
「はい。わかりました!」
「よしっ。終わった時にお互いに笑顔で会おう!」
先輩は笑顔で次の試合会場に行った。
先輩の背中を見送って気が付いた。先輩が私とこの時間に
通路で会ったということは、先輩も誰かを飛ばして試合を
早く終わらせたという事に。
さすが、池田先輩の火力はすごい。絶好調になった先輩なら
全国行きも十分に狙える。
私も全国は無理でも、今よりも順位を上げて笑顔で終わらせたい。
そう心から思って、私も次の試合会場に向かった。
「やっぱり、全国への壁は高かったな」
全ての試合が終わって、天井を見上げて一息ついた。
思ったよりも順位は上がらなかったけれど、上位のメンバーを
見たら、今の私には抜かすのは無理だった。
悔しいけれど、実力不足を認めるしかなかった。
「キャプテンはすごいなあ」
上位メンバーと同卓しても、総合1位を一度も譲らなかった
キャプテンは本当に強い。長野県1位私達のキャプテンだと
思うと誇らしく思えた。
「咲ちゃん、本当に個人戦でも全国に行くんだ・・・」
そして、咲ちゃん。常に1位を取り、どんどん順位を上げて
ギリギリとはいえ個人戦3位で、全国大会の最後の切符を
ゲットした。
「何、ブツブツ言ってるんだし!」
気が付いたら、池田先輩が顔を覗き込んでいた。
「うわっ。池田先輩!お疲れ様でした!」
「文堂もお疲れだし。大健闘だったな」
「有難うございます」
先輩に何と声を掛けていいのかわからなかった。池田先輩の
後ろには泣きじゃくっている吉留先輩の姿も見えた。
「みはるんもそんなに泣くなし!」
「だって、私がもっと頑張れば、華菜ちゃんが全国に行けた
かもしれないのに・・・」
「無理だったよ。もし、みはるんが宮永や南浦を蹴落として
くれたとしても、私の順位が低すぎた。悔しいけど、実力不足
だったんだ」
「でも」
「また、来年に向けて頑張ろう」
団体戦の時は号泣していた池田先輩が吉留先輩をあやすように
慰めていた。
先輩のように麻雀も心も強くなりたいと思った。
気が付いたら、表彰式で呼ばれているキャプテン以外の風越女子
部員が集まっていた。
「個人戦も団体戦も強敵だらけで、正直、全国行きの奪還は厳しい。
でも、まだ一年ある。明日から特訓だし!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
返事をしながら、池田先輩の喝を反芻していた。
そうだ、まだ来年の試合まで一年あるんだ。今日は全然歯が立たなかった
相手でも一年間特訓すれば勝てるようになるかもしれない。
咲ちゃんにも。
だから、また明日から先輩達と一緒に頑張ろう。そう誓った。
<カン>
ここまで読んでくださり有難うございました。感謝のぺっこりん!
前回のSS【京咲SS】「リセット」で、風越女子の文堂星夏ちゃんを
咲ちゃんの中学時代の同級生として
書いてるうちに、星夏ちゃんに愛着がわいてしまって、もっと
星夏ちゃんと咲ちゃんのふたりの話を書きたいなと思いました。
前回のSSはユーフォパロでしたが、今回はパロなしです。
ついでに、京ちゃんの出番もありません。
でも、捏造・・・いえ、妄想盛り沢山なので・・・
「妄想てんこ盛りはちょっとー」って方は回れ右してくださいね。
【SS】長野県大会個人戦2日目
今日は長野県大会個人戦2日目。
お昼ご飯を食べ終わった後、風越のメンバーと別れて、試合会場に向かった。
(ふぅ、なかなか順位は上がらないなあ)
私、文堂星夏は会場の天井を見上げてため息をついた。
今日の本選に出場できたものの、全国大会に行けるベスト3に入るのは
無理だと最初からわかっていた。
私は風越女子のナンバー5。学内だけでも、私より強い人が4人もいる。
吉留先輩と深堀先輩は手堅い打ち手で隙がない。
ナンバー2の池田先輩の火力にはとても敵わない。
そして、火力も防御力も兼ね揃えたキャプテン。
団体戦に共に出場した先輩達に勝てる気がしない。
他校も強い人ばかりだ。
団体戦の中堅で対戦した清澄の竹井さん、龍門渕の国広さん、鶴賀女子の
蒲原さん。清澄には昨年インターミドルチャンプの原村和もいるし、
龍門渕のメンバーだって強い。鶴賀の大将も池田先輩より一枚上手に
思えたし、鶴賀の副将もオカルト能力を持っていると深堀先輩から聞いた。
個人戦のみ出場している強い選手もいるから用心しろと久保コーチから
注意もあった。
そして、何よりも。
咲ちゃん。清澄高校の大将を務めた宮永咲。
まさか、中学の同級生があんなに麻雀が強いとは思わなかった。
池田先輩を和了らせて窮地を凌ぎ、天江衣をまくり大逆転して、
全国大会行きの切符を手にした。
咲ちゃんが池田先輩を和了らせたというのは、試合から数日経って
キャプテンが教えてくれたことだ。
「あの子、華菜が点数を言う前に点棒を正確に用意してたの。間違いなく、
差し込みだけれど、華菜の和了り役がわかっているのが怖かったわ」
いつも落ち着いているキャプテンが震えていたから印象に残っている。
「こんな人たちを相手にして、全国大会なんて行ける訳ない・・・」
思わず、本音を呟いてしまった。
でも。私は風越女子の部員だから。
今年は全国大会に行けなくても、これから順位を上げて来年に繋げ
なくては。自分に喝を入れて、午後の最初の試合会場に向かった。
「あ、咲ちゃん」
部屋に入ったら、咲ちゃんがいた。
呼びかけたら、中学時代と変わらず、穏やかな笑顔で振り向いた。
あのギラギラした勝負師の表情だった団体決勝戦が嘘のようだ。
「星夏ちゃん、久しぶりだね」
声のトーンも中学時代とまるで変わらない。
「うん、久しぶり。個人戦で当たると思わなかった」
「私も・・・」
咲ちゃんは穏やかに微笑みつつ。一瞬、下を向いて顔を上げた。
私を正面に見据えた顔は、あの団体決勝戦の時と同じ表情になっていた。
一見、笑顔だけど。目がギラギラしている勝負師そのものの表情に。
「星夏ちゃん、ごめん。私、本気で打つから」
現在の咲ちゃんの順位は、意外にも私と同じぐらいだった。
順位を上げるには1位を取るのが手っ取り早いのはわかっている。
これは真剣勝負なのだから。
「もちろん、試合だから当然だよ。私も全力で打つから!」
だから、私も答えた。相手が咲ちゃんでも手抜きなんかする訳ないと。
「ふふっ、よろしくね」
「こちらこそ」
残りの2人も部屋に入ってきた。
予選ギリギリ通過組のようで、現在の順位もビリに近い。これは咲ちゃんとの
勝負になるなと試合前は思っていた。
「ツモ。2600、1300です」
「ロン。3200です」
「ツモ。2300、1200です」
試合が始まったら、咲ちゃんは速攻でどんどん和了った。少しでもミスしたら
ロンされる。何も出来ないまま、咲ちゃんの親番の東4局になった。
「ツモ。4000オールです」
「ロン。4800です」
「ロン。12000です。お疲れ様でした」
連続で3回和了り、同卓の子がトンで試合が東風戦で終わった。
「あ、有難うございました」
トンだ子はお辞儀はしたものの、声は出てなかった。狙い撃ちのように
飛ばされたのだから当然だと思う。ギリギリ点棒が残った私達でさえ、
声が震えていたのだから。
「星夏ちゃん、お互いにお疲れさまだね!」
試合終了後、咲ちゃんから声を掛けられた。
彼女がどんな表情をしていたのか、私には見る余裕もなかった。
「咲ちゃん、すごいね・・・」
やっと、これだけを言えた。
「星夏ちゃんも手強かったよ。本当は星夏ちゃんを飛ばしたかった
んだけど、隙がなくて出来なかった」
「え?」
だから、試合前にごめんと言ったんだ。順位が近い私を飛ばす予定
だったから!
狙い飛ばされて挨拶で声も出なくて、うな垂れて部屋を出たあの子。
私があの立場にいた可能性もあったと思うと、体も震えてきた。
「無謀かもしれないけど、個人戦でも全国に行きたいんだ。原村さんに
全力になれって怒られちゃったし」
舌をペロって出しながら話す咲ちゃん。
現在の順位も手加減していたからと暗に言っていた。でも、残り試合は
午後の分だけ。ここから順位を上げて全国大会行きの切符を手にする
のは無謀に思えた。
「咲ちゃんは、この順位から全国大会行きを狙うの?」
「うん。まだ幾つか試合は残ってるから」
「う、うちのキャプテンも倒して?」
「総合得点で抜かすのは難しそうだけど、同卓したら全力で頑張るよ」
勝つと言わなかったのは、流石にキャプテン相手だったからか。
「じゃあ、またね」
「うん」
咲ちゃんと別れて、次の試合会場に行く途中。池田先輩に会った。
「早い試合だったんだな」
「咲ちゃん。あ、清澄の宮永さんが同卓の子を飛ばしたので」
「宮永らしいな!文堂は、次の試合から頑張ればいいし!」
「え?らしい?」
「ああ、やっとエンジンが掛かったんだな。あいつなら、
同卓の奴を全員飛ばすぐらい朝飯前だ。そのぐらい、強い」
池田先輩がキャプテン以外を誉めるなんて意外だった。
しかも、全員を飛ばすぐらいに強いと評価するほどに。
「池田先輩は、キャプテンと、さ・・・宮永さんだったら、
どちらが強いと思いますか?」
だから、思わず聞いてしまった。
「キャプテンだし!と言いたいけど、難しいな」
「そうですか」
咲ちゃんはキャプテンと同等・・・ そんなレベルだったんだ。
「とにかく、今は自分の順位を上げることだけ考えるんだ。
まあ、私も厳しい戦いだけど全国を目指すよ」
池田先輩の順位は一桁台。私よりも全国大会行きは現実味が
ありそうだった。たしかに、今は人のことよりも自分のことだ。
「はい。わかりました!」
「よしっ。終わった時にお互いに笑顔で会おう!」
先輩は笑顔で次の試合会場に行った。
先輩の背中を見送って気が付いた。先輩が私とこの時間に
通路で会ったということは、先輩も誰かを飛ばして試合を
早く終わらせたという事に。
さすが、池田先輩の火力はすごい。絶好調になった先輩なら
全国行きも十分に狙える。
私も全国は無理でも、今よりも順位を上げて笑顔で終わらせたい。
そう心から思って、私も次の試合会場に向かった。
「やっぱり、全国への壁は高かったな」
全ての試合が終わって、天井を見上げて一息ついた。
思ったよりも順位は上がらなかったけれど、上位のメンバーを
見たら、今の私には抜かすのは無理だった。
悔しいけれど、実力不足を認めるしかなかった。
「キャプテンはすごいなあ」
上位メンバーと同卓しても、総合1位を一度も譲らなかった
キャプテンは本当に強い。長野県1位私達のキャプテンだと
思うと誇らしく思えた。
「咲ちゃん、本当に個人戦でも全国に行くんだ・・・」
そして、咲ちゃん。常に1位を取り、どんどん順位を上げて
ギリギリとはいえ個人戦3位で、全国大会の最後の切符を
ゲットした。
「何、ブツブツ言ってるんだし!」
気が付いたら、池田先輩が顔を覗き込んでいた。
「うわっ。池田先輩!お疲れ様でした!」
「文堂もお疲れだし。大健闘だったな」
「有難うございます」
先輩に何と声を掛けていいのかわからなかった。池田先輩の
後ろには泣きじゃくっている吉留先輩の姿も見えた。
「みはるんもそんなに泣くなし!」
「だって、私がもっと頑張れば、華菜ちゃんが全国に行けた
かもしれないのに・・・」
「無理だったよ。もし、みはるんが宮永や南浦を蹴落として
くれたとしても、私の順位が低すぎた。悔しいけど、実力不足
だったんだ」
「でも」
「また、来年に向けて頑張ろう」
団体戦の時は号泣していた池田先輩が吉留先輩をあやすように
慰めていた。
先輩のように麻雀も心も強くなりたいと思った。
気が付いたら、表彰式で呼ばれているキャプテン以外の風越女子
部員が集まっていた。
「個人戦も団体戦も強敵だらけで、正直、全国行きの奪還は厳しい。
でも、まだ一年ある。明日から特訓だし!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
返事をしながら、池田先輩の喝を反芻していた。
そうだ、まだ来年の試合まで一年あるんだ。今日は全然歯が立たなかった
相手でも一年間特訓すれば勝てるようになるかもしれない。
咲ちゃんにも。
だから、また明日から先輩達と一緒に頑張ろう。そう誓った。
<カン>
ここまで読んでくださり有難うございました。感謝のぺっこりん!