2013年05月31日

どこへ行く途中か

ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」。兄のドミートリーが主人公のアリョーシャに「おまえは、どこへ行く途中だった?」と訊くところを読んで、アリョーシャはまさに宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」そのものだと思った。自分を勘定に入れず、足を棒にして走り回っている。▼彼は、ロシアのキリスト教(正教)におけるいわば最後の聖人のように描かれている高僧ゾシマのもとで修行を積む、若い修道僧である。不思議なのは、このゾシマが愛弟子のアリョーシャに、自分の死後は修道院を離れ別の道を行くようにと言い残して死ぬのだ。ゾシマは時代から取り残されたキリスト教の限界を見ていたのである。僧服を脱いだアリョーシャは以前にもまして人々の間に出て行き「雨にも負けず」に励むのである。▼この長大な小説のテーマは何か。高等な芸術論はさておき、作者が訴える本筋の主題は一点に集約され、「エピローグ」に至るのである。それは、まさに我々のテーマでもある、新しい人類の共同体への夢物語の提示である。▼貧しい家に生まれ、親を侮辱され、クラスの全員からいじめられ、石をもってひとり多勢に立ち向かい、様子を見に来たアリョーシャにも石を投げ、その手にかみつき骨に達するほどの傷を負わせもする小学生のイリューシャを、アリョーシャは深いところで受け止め、子供たちに和解をもたらす。やがて病死するイリョーシャを記念する中で、新しい共同体に向けての子供たちの決意が表明されるのである。キリストの復活の出来事を連想させる聖なる場面である。▼時代の風がロシアを襲い全世界に吹き荒れようとしていた19世紀末葉のロシアで書かれた小説を我々は今日の状況下で読んでいる。教会はいまどこへ行く途中なのだろうかと問いながら。(2013/05/21)

5月の聖書会は 24(金)10:30am. ヨハネ 8:32-59

聖書友の会(多摩ニュータウンみどりの教会)通信71

朝山正治 多摩市豊ケ丘6-3-2-308 Tel. 042-373-2710



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