今回は初めての商標ネタです。アメリカの商標侵害についての話。

The High Hurdle Of Irreparable Harm In Trademark Infringement Cases ( mondaq.com.  11/26/2014 Barnes & Thornburg's Intellectual Property Law Department,  Barnes & Thornburg)

"irreparable harm"ということばは、特許侵害訴訟の判決を読んでいるとよく見かけましたが、商標事件ではあまり見かけませんでした(というより、商標事件の判決文をあまり読んでいなかったので、何ともいえません)。

とにかく、"irreparable harm"というのは、法的救済の一つとしての「差し止め命令(injunction)」を求める場合に立証すべき要件の一つです。差し止め命令という特別救済が認められるためには、通常の救済である「損害賠償(damages)」だけでは「回復しえない損害」が生ずることを証明しなければならない、ということだと思います。

ただし、特許事件の場合、特許侵害の事実さえ立証されれば、自動的に「回復不能な損害」が推定されるという特別扱いをされていました。ところが2000年代に入り、「パテント・トロール」が台頭し始め、差し止め命令という強力な武器をテコにした事業会社への脅迫が問題視されるようになったため、2006年のeBay事件最高裁判決により、修正されたのです。... 確か、そうだったと思います(かつて一生懸命読んだ記憶に頼っています)。

要するに、eBay事件において連邦最高裁は、もはや特許事件を特別扱いにはしない、特許事件でも他の事件と同様、「回復不能な損害」について個々に立証する必要がある、という旨を述べました。

以上の知識のみを背景に、今回初めて商標事件の事情を読んでみました。

Due to the reputational harm caused by trademark infringement, courts historically held that infringement led to the presumption of irreparable harm. This presumption afforded trademark owners the advantage of not having to produce evidence that the loss of goodwill would be irreparable in order to obtain an injunction. With recent Supreme Court and circuit court decisions, the presumption has gone away, leaving trademark owners with a much more difficult battle in staving off infringements.


商標侵害は名声/評判に傷をつけるので、伝統的に裁判所は、侵害があれば回復不能な損害が推定されると判断してきた。この推定により、商標権者はグッドウィル(のれん、信用)の喪失が回復しえないことの証拠提出責任を免れるというアドバンテージを得ることができた。最近の最高裁と巡回控訴裁判所の判決により、この推定はなくなり、商標権者は侵害阻止の戦いにおいてより困難な立場に置かれることになった 

要するに商標の場合も、特許の場合と同様の特別扱いがされていたところ、eBay判決により特別扱いがなくなってしまった、ということのようです。
In 2006, the Supreme Court changed the injunction landscape with its decision in eBay Inc. v. MercExchange, L.L.C ,547 U.S. 388 (2006). eBay rejected the automatic presumption of
irreparable
harm in patent infringement cases,...... After eBay  and Winter, courts began to address the issue in the trademark context.

ここまでにしておきます。元ネタは事例についてもより具体的に紹介してくれていますよ。

12/2/2014 ヨシロー