アメリカの法務・知財専門サイト/ブログをチェックしていると、2年ほど前からトレードシークレット関連ネタが増えていることを感じます。

先日、アメリカの大手法律事務所が東京で開催した半日セミナーに行ったところ、例年は特許の重要トピックをテーマとしているメインスピーカーの弁護士が、トレードシークレットをテーマに話していました。後で彼に話を聞くと、やはり知的財産としてのトレードシークレットの重要性に対する認識が高まっており、それに伴う契約実務や文書管理などのアドバイスが増えてきているということです。

このブログでも一度トレードシークレットについて取り上げましたが(「第2話:特許 vs トレードシークレット ... 企業の資金調達への影響は?」11/9/2014)、今回はこのトレードシークレットを守るための契約である"NDA"(Non-Disclosure Agreement)*にまつわるネタをいくつか取り上げます。(* 下に出てくる通り、"Confidentiality Agreement"という言い方もありますね)

最初に『ものを言うNDA』という観点からの話。元ネタは、


Confidential disclosure is the only safe disclosure
( InsideCounsel 11/24/2014 LORI A. JOHNSON)


ここでは重要顧客と接する営業マンが抱える問題、という切り口でNDAの必要性を紹介しています。

Great salesmen connect with their customers and develop a rapport and trust that are important to maintaining long-term relationships. Customers like to feel important, and they want to feel like they are getting the newest and best opportunities. 

    * repport (調和的な)関係

But, beware of premature disclosures regarding new products that havent yet been protected. Early disclosure can result in forfeiture of protection in many foreign countries and can have a significant impact on U.S. protection.


優秀な営業マンが顧客と良好な関係を構築・維持するためには、常に自社製品の最新情報を顧客に提供し、顧客を重視している姿勢を示さねばなりません。しかし、そのような最新情報にはまだ(特許出願)などの保護措置がとられていないものがあり、その段階で情報開示をしてしまうことにより保護機会を喪失するリスクがあるということです。

要するに、顧客の要望に応じ自社製品の最新「秘密情報」を不用意に開示してしまうことで、「トレードシークレット」としての保護はもとより、特許保護を受ける道をも閉ざしてしまう恐れがあるというわけです。

特許出願前の発明内容を公知(publicly known)にしてしまうと、特許を受ける資格を失ってしまうのです。しかもアメリカの場合、"public"の定義が他国と比べ広いので、とりわけ注意を要するといっています。

Under U.S. case law, "public" is generally interpreted to mean "not secret," regardless of whether the public is likely to encounter the disclosure. This definition is broader than the ones found in many foreign countries, which require that the disclosure be sufficiently public for someone looking for the disclosure to be able to find it.


≪アメリカにおける"public"の定義は、単に「秘密ではない」こと。多くの国では、開示を求める第三者が見ることのできる状態になっていることを要件としている...≫ といっていますが、ここはどうなんでしょう? たとえば日本の特許法でいう「公然と知られた...」という状態は、アメリカの"public"のり限定的なのでしょうか。弁理士の方に要確認です。

いずれにせよ、このような広い定義が採用されているなかで気をつけるべきは、開示される情報が『秘密情報として認識されることが予想された(expectation of confidentiality)』か否かだといいます。例えば、営業マンが自社製品の最新情報を顧客に電話で伝えた場合は、秘密情報と認識されることが予想されるでしょう。しかし、ゴルフ場で、その顧客以外のメンバーもいる組でプレーしているときに話した場合、NDAのように明らかに秘密性に対する認識を示すものがない限り、その情報はもはや公の情報になったと判断されるでしょう。

秘密情報としての認識を確保するための方法はいろいろ指摘されていますが、基本的には、やはり「ものを言う」のはNDA。できる限り、事前にNDAを締結しておこう、ということになるのだと思います。

逆に、いくらNDAを締結しても、情報を開示する側がその秘密性を保持する措置を適切にとっていない場合、NDAの強制はできないという事態も生じるので要注意、というケースもあります。これは「NDAがものを言わなかった」例ですね。たとえば、

Confidentiality Agreements Not Enforceable In Absence Of Reasonable Efforts to Preserve Confidentiality

(mondaq.com 11/26/2014 Keith M. Stolte  McDermott Will & Emery)
 

さらに、丁寧なNDAが仇(アダ)になった例もあります。たとえば、

Words Matter: Your Non-Disclosure Agreement May Trump Governing Trade Secret Law

(Jason Stiehl on July 12th, 2013 Posted in Practice & Procedure
 

これらは次回、第6話・続きとして取り上げたいと思います。 11/30/2014 ヨシロー