12月5日あたりから、表題の記事を専門サイトや専門家ブログで目にするようになりました。
Smartphone patent wars poised to heat upInsideCounsel 12/5/2014  BY RICH STEEVES) ; Watchdog s $1 billion-plus Qualcomm anti-trust ruling will be a landmark for Chinese IP (iam-magazine 12/5/2014   Jack Ellis);  Xiaomi Might Benefit From The Antitrust Battle Between Qualcomm And The Chinese Authorities  (Androidheadline.com 12/6/2014  Kristijan Lucic)

まずは、InsideCounsel記事を元ネタとして見てみると、

A decision by Chinese regulators could put an end to Qualcomm s patent licensing practice, potentially igniting a new round of patent battles in the hi tech space.

 

≪中国当局の決定によって、クアルコム社の特許ライセンシング慣行に終止符が打たれることになろう。これは、この技術分野(スマートフォン)における新たな特許戦争の始まりを告げることにもなりうる≫といっています。ここでいう当局(regulators)とは、2013年末からクアルコムの携帯電話用半導体特許を利用した取引方法に対する独禁法違反調査を行っていた国家発展改革委員会(National Development and Reform Commission: NDRC)」)です。

約1年間におよぶNDRCの調査がほぼ終了したことが中国で報じられたようです。正式の決定が公表されるのはもう少し先らしいですが、ほぼこのような措置がとられるだろうということが紹介されています。
Until recently, chipmaker Qualcomm was uniquely positioned in China. The U.S. technology company had developed a so-called "reverse patent license" program in the country, essentially forcing clients that used its chips to forego their patent fees with one another. This arrangement, coupled with favorable licensing deals for its own patents and other "monopolistic practices" put Qualcomm in a pretty favorable position in China. That is, until now.
冒頭に出てきた「クアルコムの特許ライセンシング慣行」について、もう少し詳しく述べられています。「リバース・パテント・ライセンス」というものです。

ちなみに、特許と独禁法という文脈で「リバース」と言えば、「リバース・ペイメント」*はすぐ思い浮かぶのですが、「リバース・パテント・ライセンス」というのは、私の乏しい知識では初めてのことばです。この文脈で近いものといえば「ライセンス・バック」というのは思い浮かぶのですが、少し違うようです。
 *「リバース・ペイメント(reverse payment)」は、医薬の世界の話で、先発薬(特許医薬)メーカーがジェネリックメーカーに対して一定額を払うことにより、ジェネリック品の販売開始を一定期間遅らせる取り決めで、"pay for delay"ということばも使われます。FTC(連邦取引委員会)を中心とするアメリカの独禁法当局と先発薬(ブランドドラッグ)メーカーとの法廷闘争が長く続いていました。

少し話がそれましたが、ともかく「リバース・パテント・ライセンス」。InsideCounsel記事では前出の通り、≪クアルコムが、自社チップを使用する顧客に対し、顧客が保有する特許について他の顧客には互いに実施料を請求させない≫取り決めだといっています。そして≪その他自らの特許に関する有利なライセンス条件(高額な実施料率や様々な特許の抱合せ)などを組み合わせ、中国市場において極めて有意な地位を築き上げた≫ということです。 ...... しかし、何がどう "reverse"なのか、いまひとつしっくりきません。

前出のiam-magazineやAndroidheadlineの記事もリバース・パテント・ライセンスの説明文は似たり寄ったりです。さらにいろいろ探したところ、少し詳しく書かれたものがありました。

How The Qualcomm Anti-Trust Case Could Affect China'sMobile Phone Manufacturing Industry

(10/21/2014 Business Insider)
 

Huawei and ZTE they do not have licensing agreements or receive licensing fees from any other domestic mobile phone manufacturers. This is because when they signed licensing agreements with Qualcomm they agreed to non-exclusive and non-sublicense clauses, meaning that other companies which have signed licensing agreements with Qualcomm do not need to sign any licensing agreements with them.


ここでは「リバース・パテント・ライセンス」ということば自体は使っていないのですが、クアルコムのライセンス取り決めについて、中国の主要スマホメーカーであり、それぞれ数万件の関連特許を保有するHuaweiとZTEを例に挙げて説明しています。
≪彼ら(Huawei, ZTE)は他の中国携帯メーカーとライセンス契約を締結していないし、ライセンス料を受け取ってもいない。なぜなら、彼らがクアルコムとライセンス契約を締結するとき、"non-excusive"および "non-sublicense"条項について合意するからだ。これにより、クアルコムとライセンス契約を締結した他の携帯メーカーはHuaweiやZTEとライセンス契約を締結する必要がなくなるのだ≫

このことがクアルコムに何をもたらすのか。
These agreements dictate that Qualcomm retains control of the patent and the signee may not bring charges of patent infringement against any other company that has an agreement with Qualcomm.  "T hrough this retention of patent control, Qualcomm is able to integrate all related patents and avoid disputes over patent rights. This makes Qualcomm chips even more attractive. "
中国市場におけるスマホ・携帯特許のコントロールをクアルコムが一手に握ってしまう。それによりクアルコムのライセンシーである携帯・スマホメーカーが特許権を行使する紛争も回避されることになります。それはすなわち、クアルコムの半導体(チップ)をさらに魅力的なものにする、ということです。

しかし、このようなシナリオにもNDRCの決定により終止符が打たれることになった。それはすなわち、クアルコムとの契約条件によって抑えられていた各メーカーの特許権行使権限が自由になり、特許戦争の激化を招くであろう、というのが今回の冒頭元ネタのタイトルになっているわけです。
なお、中国独禁法当局が狙っているのはもちろん訴訟の激化ではなく、中国スマホメーカーのR&D意欲を高め、よりコアな技術についての特許取得を促すことにある、といわれています。

文章は大分ごちゃごちゃしましたが、私自身は少しすっきりしましたので、寝ることとします。 
12/11/2014 ヨシロー