「やはり営業秘密保護においてものを言うのはNDA(秘密保持契約)。...とはいうものの、ものを言わないケースも結構ありそうだ...」と途中で終えたまま(第6話)、早や3週間以上過ぎてしまいました。(その間、次から次へとナマモノの最新情報が入ってきので...)。 とにかく、まずは前回の末尾部分を繰り返します。

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... 基本的には、やはり「ものを言う」のはNDA。できる限り事前にNDAを締結しておこう、ということになるのだと思います。 

逆に、いくらNDAを締結しても、情報を開示する側がその秘密性を保持する措置を適切にとっていない場合、NDAの強制はできないという事態も生じるので要注意、というケースもあります。これは「NDAがものを言わなかった」例ですね。たとえば、 

1) Confidentiality Agreements Not Enforceable In Absence Of Reasonable Efforts to Preserve Confidentiality

(mondaq.com 11/26/2014 Keith M. Stolte   McDermott Will & Emery) 
 

さらに、丁寧なNDAが仇(アダ)になった例もあります。たとえば、 

2) Words Matter: Your Non-Disclosure Agreement May Trump Governing Trade Secret Law

(Jason Stiehl on July 12th, 2013 Posted in Practice & Procedure
 

これらは次回、第6話・続きとして取り上げたいと思います。 11/30/2014 ヨシロー 

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では最初のケース。これはイリノイ北部地区連邦地裁で争われた後、第7巡回区連邦高裁裁判所に控訴されたケースです。下の原文紹介の最後に事件表記があります。"nClosures Inc. v. Block and Company, Inc." ...これは控訴審なので、控訴人が最初にくるnClolusures Inc.、被控訴人がBlock and Company, Inc.です。

本件の場合、nClosures(原告)がBlock and Company(被告)を訴え、地裁判決を不服として控訴した事件なので、控訴裁判所の判決文には、nClosuresに "Plaintiff-Appellant(原告-控訴人)"、Block and Companyに "Defendant-Appellee(被告-被控訴人)という表記が付されています。*本当はさらにnClosuresはCross-Appelee、Block and Companyには"Cross-Appellant"という表記も付いているのですが、長くなるので省略。

ちなみに、トレードシークレットや契約は各州の州法の管轄であり、これをめぐる争いは基本的に州裁判所(state courts)で争われるのですが、当事者が異なる州の法人であるために連邦裁判所(federal courts)で争われました。c.f.  diversity jurisdiction 州籍相違管轄権。

前置きが長くなりましたが、事件の紹介記事第1段落:

Applying Illinois law, the U.S. Court of Appeals for the Seventh Circuit reminded prospective business partners that non-disclosure agreements will not be effective by themselves to protect information a company regards as confidential and proprietary.  To be enforceable, the information itself must ostensibly be "confidential" and must also be subject to reasonable efforts on the part of the company to preserve its confidentiality.  nClosures Inc. v. Block and Company, Inc., No.13-3906 & 14-1097 (7th Cir., Oct. 22, 2014) (Flaum, J.)

イリノイ州法を適用し、第7巡回区連邦控訴裁判所は、秘密保持契約それ自体は企業が秘密情報/財産的情報とみなす情報を保護する上で効果を発揮しない、ということをビジネスパートナーとなる見込みだった両当事者に気づかせた。秘密保持契約が強行できるためには、当該情報が「秘密」とされており、かつその秘密性を保持するための合理的努力がなされていなければならない。

iPadなどのエンクロージャーを製造販売するためのパートナーシップを組もうとした原告(デザイン担当のnClosures)と被告(製造販売担当のBlock and Company)は、その可能性を評価するためにNDAを締結。その後、nClosuresは製品デザインやマーケット上の知識、アッセンブリ―図面などの秘密情報をBlock and Companyに開示したものの、結局、パートナーシップ契約の締結には至らず。

それから間もなく、Block and Companyが独自にエンクロージャーを販売し始め、この製品を見たnClosuresは、先のNDAに基づき開示した自社の秘密情報・ノウハウが使われているとして、トレードシークレット不正流用、契約違反などを主張して提訴、というよくあるパターンになったわけです。

結局、nClosuresの訴えは認められず、一審(イリノイ北部連邦地裁)で訴え却下、二審(第7巡回区控訴裁)でも一審判決支持となりました。NDAを締結していながら、nClosuresが敗訴した理由は何だったのか。判決文の中で、第7巡回区控訴裁は、次のように述べています。

...court will enforce [confidentiality] agreements only when the information sought to be protected is actually confidential and reasonable efforts were made to keep it confidential. Thus, in order to enforce the confidentiality agreemeent between nCloures and Block, we must find that nClosures took reasonable steps to keep its proprietary information confidential.

秘密保持契約で保護しようとした情報が実際に秘密性を有しており、その秘密性を保持するための合理的努力がなされていた場合に初めて、秘密保持契約が強行できる、としています。

具体的には、nClosuresの以下の行為が「秘密性を保持するための合理的努力をしていない」と認定されました。1) Block以外の企業や個人のデザイナー達にはNDA締結を要求していなかった、2) 秘密情報だと主張している設計図面に "confidential"や"contains proprietary information"という表示を付していなかった、3) 設計図面ファイルの保管時に施錠していない、あるいはアクセス制限なしにコンピューター保管していた。

この事例を紹介している元ネタの記事では、"The Contract is Not Always King"という小見出しがつけられていますが、正に「NDAさえとっておけば」と安心してはいけない、ということですね。

事例紹介の(2)はすぐ上に出てきた"confidential"などの表示を巡る事例です。この事件では、NDAの規定中に、『秘密文書には"confidential"などの表示を付し、口頭で秘密情報を開示した場合は、後日文書にして"confidenntial"表示を付すこと』という規定がありました(特に珍しい規定ではないと思います)。

本件原告(MITとパートナー企業)は、口頭開示後、文書のフォローを怠ったため、被告企業(compaqとSeagate)は保護情報外としてこの情報を自社製品に無許可で使用。これに対し、MIT側はトレードシークレット不正流用を主張したのですが、契約中の表示規定を守っていないことを理由に、トレードシークレットとしての保護が認められなかったという事例です。一度、NDAを締結するとつい安心して口頭で述べ、その後の文書フォローを怠ってしまうことは少なくないようで、この判決は結構反響を呼んでいたようです。

以上、気になっていた第6話・続きを終えますが、NDAやトレードシークレット保護の実効性というテーマには論争が尽きないようで、いまも日々様々な事例紹介、コメントが発信されています。引き続きこのテーマをウォッチし、取り上げようと思います。

12/24/2014 ヨシロー (お、クリスマスイブでしたか) 



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