サブプライムローン・バブルの崩壊を予見したことで有名な米ヘッジファンド・マネージャー、カイル・バス氏(Kyle Bass)が、複数の医薬メーカーに対し特許法に基づく攻撃を仕掛けると予告しているそうです。

1月7日付ロイターによれば、バス氏は、≪いくつかの医薬メーカーが疑問のある方法で特許を維持し続けており、このような特許に対し2012年制定のアメリカ発明法に基づくInter Partes Review(IPR)を申請する≫と表明しています。 "US hedge fund plans to take on big pharma over patents" (Wednesday, 7 Jan 2015 | 2:49 PM ET Reuters)

Bass, the founder of Dallas-based Hayman Capital Management, L.P., said some drug firms were hanging onto patents in questionable ways and he planned to take around 15 firms into a so called Inter Partes Review (IPR) process created by the America Invents Act. in 2012.

バス氏によれば、対象となるメーカーは15社。IPR手続きにより彼らの特許にチャレンジし、無効にする。和解するつもりはない、ということです。そして、≪これらのメーカーは、単に薬の投与量を変えるだけ、あるいはパッケージ方法を変えるだけで医薬特許を拡大(延長)しようとしており、このような動きは抑えつける必要がある≫と「憤り」ます。

"The companies that are expanding patents by simply changing the dosage or the way they are packaging something are going to get knee capped,'' he said.

バス氏は、計画中のIPR申請について、これ以上の詳細は明らかにしていません。いくつかの知財専門家から、「IPRという制度が十分に理解されていないマーケットにおいて、バス氏の行為がどれだけ医薬メーカーの株価に影響を及ぼすかは疑問」、「投資家による特許マーケット進出動向に新たな一章を加える動き」などの声が出されています。

私としては、その前に、バス氏がいう≪単に薬の投与量を変えるだけ、あるいはパッケージ方法を変えるだけで医薬特許を拡大(延長)しようとしており...≫とは具体的に何を指しているのかが気になります。このことを言っているのでは、と思い当たる一つの事例を昨年目にしましたので、ここで取り上げておきます。


「NY州がアルツハイマー治療薬の"switching"に対し反トラスト法訴訟を提起」
"New York AG files anti-trust lawsuit against drug maker" (Inside Counsel 9/17/2014 BY CHRIS DIMARCO)
 
2014年9月15日、ニューヨーク州司法長官局は、医薬メーカー"Actavis"およびニューヨーク拠点の子会社 "Forest Laboratories"が、同社の人気アルツハイマー治療薬"Nameda"の販売中止を計画していることに対し、反トラスト法違反を構成すると主張して、両社を提訴した。

販売中止がなぜ反トラスト法違反になるのか、もう少し詳しい説明を見ると、

≪Actavisの"Nameda"を対象とする特許は今後2,3年で権利期間が満了するのだが、Activisは(満了後)安価なジェネリック薬が出てくるまで "Nameda"を販売し続けることをせずに、一切の販売をやめようとしている。この行為の根底には、"Nameda"の利用患者を(ジェネリック薬ではなく)新しいActivisの治療薬 "Nameda XR"(長い権利期間が残っている新たな特許対象薬)へ強制的にスイッチさせようという狙いがある。≫

Actavis’ patent for the drug Nameda is set to expire within the next few years, but rather than keeping the treatment available until lower-cost generic versions hit the market, the company has decided to discontinue the drug altogether. 
The AG’s office alleges that this was done in an effort to force patients to switch to another Activis drug, Nameda XR, which is covered by a patent with many years left until expiration...
 
先発薬の特許期間が満了に近づくタイミングで、投与量や剤形などを変えた新バージョンの薬(権利期間の長い特許あり)に切り替え、安価なジェネリック薬への移行を結果的に不可能にする先発薬メーカーの行為を "product switching"や"product hopping"といい、ジェネリック薬メーカーや州政府などから特許期間の不当な延長行為として訴えられるケースがあるようです。

ただ、先発薬メーカーにすれば、単に特許独占の延長を目的として新バージョンに切り替えているわけではなく、投与回数を少なくしたり、飲みやすい剤形にするなど、患者にとって益のあるバージョンアップを技術革新によって成し遂げた、ということになります。

実際、product switching/hoppingがジェネリック薬との競争を阻害し、患者に不利益をもたらすものであるか否かは、ケースバイケースで判断されるべきものであり、 "per se illegal"(当然違法、それ自体違法)ではなく "rule of reason"(合理の原則)で判断すべき、としている判例も複数あるようです。

著名ヘッジファンド・マネージャーが、どのような意図をもって医薬メーカーの特許攻撃を予告したのかはよくわかりませんが、おかげさまで "Actavis"訴訟についての私自身の関心を呼び戻すことができました。ちなみに、本件Actavisケースは、ジェネリックメーカーでなく、政府が原告となったケースとしては初、ということでも注目されているということです。

1/11/2015 ヨシロー
😜 続報あり(第36話)

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