間もなく先発薬(ブランド薬)の特許期間も切れ、安価なジェネリック薬が市場に出てこようというときに、より飲みやすい剤形の新バージョン薬が先発薬メーカーから発売された。先発薬メーカーは多くの患者が利用している当初タイプの医薬の販売を止め、新バージョンに置き換えるという。対象となる先発薬が存在しなくなると、ジェネリック薬も承認あるいは処方されようがなく、患者としては新型薬にスイッチせざるを得ないことになる。そして、この新型薬には、長い権利期間を有する新たな特許も取得されている。

このような医薬メーカーの行為(「プロダクト・ホッピング」や「プロダクト・スイッチング」と呼ばれる)は不当な競争阻害行為として反トラスト法違反を構成するのではないか。否、むしろこの行為を違法として抑えつけることこそ、合理的な新製品の開発、ひいてはイノベーションの促進を阻害することになりかねないのではないか。

いまアメリカで先発・後発メーカー間の法的論争を超え、注目の的となっているのが、米Actavis社のアルツハイマー治療薬"Nameda"の新型薬導入をめぐる訴訟です(State of New York v. Actavis PLC(1:14-cv-07473, SDNY))。

2014年9月にニューヨーク州が原告となりニューヨーク南部地区連邦地裁に提起されたこの訴訟については、2015年1月末までの動向を含めこのブログでも紹介しましたので、ご参照ください(「第24話: 医薬メーカーのビジネス方法を左右しかねないActavisの「プロダクト・スイッチング」反トラスト法訴訟」 2/1/2015)。

地裁は、州政府の申立てを認め、Actavisによる従来型治療薬"Nameda IR"の販売中止を禁ずる仮処分命令を下し、これを不服とするActavisが連邦第2巡回区控訴裁判所*1)へ控訴していました。

実はこのとき、「先例が少なく、結果の予測がつかないこの争点に対する第2巡回区控訴裁の判決(仮差し止め命令を不服とする中間控訴に対するもの)は、2015年2月16日までに下される見込みだそうです」と書きました。--- ふと気がつくと、とうに2月16日を過ぎたいま、中間判決は出ていないようです。とりあえず、すぐ手に入る情報でupdateしてみました。提訴時から通しで書きます。

NY State v. Actavis  - Procedual history

2014年9月15日 NY州(司法長官)がActavis社をニューヨーク南部地区連邦地裁に提訴。 

2014年12月11日 NY南部地裁命令: NY州提出の仮差し止め命令申立てを認容(Actavisが "Nameda IR"(当初タイプ)の販売を終了することを禁ずる)
  ↓
Actavisはこの命令を不服とし、即座に第2巡回区連邦控訴裁判所に控訴した。 

2015年1月15日 第2巡回区控訴裁にActavis支持の意見書(amicus briefs)提出される by ビジネススクール教授(ハーバード、スタンフォード、NY他) - 仮差し止め反対「イノベーションを阻害する」

2015年2月20日 第2巡回区控訴裁にNY州支持の意見書(amicus briefs)提出される。by AAI(The American Antitrust Institute)

2015年3月9日 第2巡回区控訴裁、Actavisの中間控訴に対する口頭弁論を4月13日の週に開催することに。
当初、第2巡回区は5月半ばの口頭弁論を予定していたが、Actavisが3月16日までに開催するよう要求していた。 第2巡回区は、口頭弁論早期開催は受け入れたが、控訴審判決が出るまで地裁の仮差し止め命令の執行停止を求めるActavisの申立ては却下した。 
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このような手続き経過になっているようです。直接裁判記録を見ているわけではないので、前回の「2月16日判決予定」と同様、確言はできません。元ネタと該当部分を記しておきます。

The Second Circuit announced on Monday(3/9) that it would hear Actavis PLC's appeal to overturn the preliminary injunction issued by Judge Robert Sweet of the Southern District of New York as soon as possible, with a projected date for oral argument during the week of April 13. 

The Second Circuit initially planned to hear the appeal in mid-May, but Actavis filed an emergency motion to request that the court schedule oral argument no later than the week of March 16 or, instead, assign the case to a merits panel to be decided on the briefs without oral argument. Although the appeals court is hearing the case on an expedited basis, it has refused to stay the injunction while it reviews the case.

"Second Circuit Agrees To Earlier Oral Arguments In Actavis, Although Preliminary Injunction Will Remain In Place" (mondaq.com 3/11/2015 Deirdre A. McEvoy and Nicole Paschal Patterson Belknap Webb & Tyler LLP)


*1) 連邦控訴裁判所:regional circuit courtsとFederal Circuit Courtについて (基礎情報)

 Actavis訴訟は特許を利用した反競争的行為ということで、特許法自体を争点とするものではないので、特許専門の連邦巡回区控訴裁判所(Court of Appleals for the Feceral Circuit: CAFC)ではなく、全米を12の地域に分けた"regional circuit court"(1st~11thおよびDistrict of Columbia(コロンビア特別区))のひとつである第2巡回区(Federal Court of Appeals for the Second Circuit: CA2 とか2d.Cir.と略称される)が管轄しています。地裁がニューヨークなのでこの地区を管轄する第2巡回区控訴裁にいったわけです。著作権法や商標法をめぐる控訴事件も基本的にはそれぞれのreginal circuitの管轄になります。地域割りについては、米連邦裁判所"Court Locator"がわかりやすく教えてくれます。⇒ http://www.uscourts.gov/Court_Locator.aspx


引き続き、この興味深い事件は経過を追ってゆくつもりです。

3/15/2015 ヨシロー


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