著名ヘッジファンド・マネージャーは、予告通り、医薬特許に攻撃を仕掛けた。攻撃前の準備にも怠りはなかったようだ。彼は元トロール会社CEOと組んで特許攻撃部隊(組織)を作り、いまも新たな攻撃を仕掛けている。

年明けに取り上げたトピックの続報です(『第18話:著名ヘッジファンド・マネージャーが医薬特許に対するIPR攻撃予告』 1/11/2015)。最初にこの話を取り上げたときは、「さすがアメリカ、いろいろなことが起こるな。しかし、本当にやるのかね、IPRなんて(彼らにとっては)別世界のことを...」程度に思っていたのですが、やるのですね。まさに「アクティビスト」。c.f.『 第25話:「知財通アクティビスト」の時代到来 - 知財収益化プレッシャーをかける投資家・株主の猛威』(2/7/2015)

今回もiam-magazine blogから最新情報を拾いました。"Bass/Spangenberg file new pharma IPR re-exams"(iam-magazine 4/2/2015 Richard Lloyd) 

まず、Bassとは18話でも紹介した通り、 サブプライムローン・バブルの崩壊を予見したことで有名な米ヘッジファンド・マネージャー、カイル・バス氏(Kyle Bass)のこと。Spangenberとは、IPNav(パテント・トロ―ル会社)の前CEO、Erich Spangenberg氏のことです。 まずは、これまでの攻撃事例(IPR申請)を見てみましょう。

以下、IPR申請日、申請人、特許権者、特許番号

2/10/2015
Coalition for Affordable Drugs
Acorda Therapeutics
8,663,685

2/27/2015
Coalition for Affordable Drugs
Acorda Therapeutics
8,007,826

3/9/2015
Ferro Ferrum Capital 
Allergan
7,030,149

4/1/2015
Coalition for Affordable Drugs
Shire Pharmaceuticals 
6,773,720

4/1/2015
Coalition for Affordable Drugs
NPS Pharmaceuticals 
7,056,886

医薬を一般公衆の手に届く適正な価格にするための連合ということですかね、ヘッジファンド・マネージャーと元トロールCEOが作った申請人Coalition for Affordable Drugs(CFAD)は。"Affordable"という語は、インド特許の強制実施の条件が論じられるとき、たとえばエイズ治療薬の特許を有する欧米の医薬メーカーがインドで十分に特許を実施していたか、すなわち、インドのエイズ患者のニーズを満たすだけの数量を生産し、インドの患者が「購入可能な価格」( affordable)で販売していたか、という文脈でも使われています。

とにかく、2月にCFADがAcorda Therapeuticsの特許に対するIPRを申請すると、Acordaの株価は10.5%も下落し、4月のIPR申請後はShire Pharmaceuticals(NPSを最近買収)の株価は1.25%下落したといいます。彼らの狙いはいうまでもない、これでしょ ... ということはあちこちで指摘されています。ひとつ挙げておきます。

"Short Activist Strategy? Coalition for Affordable Drugs Targets Drugmakers" (IPR Blog 2/12/2015 Michelle Carniaux and Michael E. Sander)*ついにIPRを専門にとりあげるBlogが出てきました。

According to the press, Kyle Bass, the founder of Hayman Capital, publicly announced his intention to go "activist" against the U.S. pharmaceutical industry and its patents, calling it a "short activist strategy." Investors interested in taking short positions in pharmaceutical stocks may now be watching CFAD’s activities in the PTAB. Acorda Therapeutic’s shares already fell 5%. And, "[t]he beautiful thing is this will lower drug prices for everyone." Id.
Sidenote: In its IPR petition, CFAD identified patent monetization firm IP Navigation Group as a Real Party in Interest. IPRs make strange bed-fellows.

"short activist strategy"ですか。また(私にとっては)新しいことばです。医薬メーカー株の売り(ショート)ポジションをもっている投資家がこのIPR攻撃に注目しているらしいですね。株価が下がるのが主目的で、「ついでに薬の値段も下がれば皆に良い」ということでしょうか...。

この記事の最後に、「IPR申請において、CFADはIPNavを "真の利害関係人"(Real Party in Interest)と特定している」とあります。 このことばもまた、特にトロール対策の重要キーワードとしてよく出てきます。IPRでは真の利害関係人を明示することが要件になっているのでしたか...勉強不足でわかりません。

追記:いま見直すと、ここはかなり恥ずかしい一言でした。「真の利害関係人」問題はIPR申請上の基本要件として法に明記してありますし、これをめぐっての論争も少なくないです。IPRにおける「真の利害関係人」問題については本ブログでも取り上げる予定です。(9/6/2015) ⇒『第60話(4):カイル・バス、フォルクスワーゲン、バイオシミラー、M&A ... (最近)これらに共通するものは?』(9/20/2015)

真の利害関係人の特定(透明性の確保)は、トロール対策法案では必ず入ってくる主要条項の一つですが、まだ法案自体が成立していませんし、米特許庁も昨年、"Attributable Ownership"ということばを使って、真の利害関係人情報を特許出願人に開示させるルール作りを試みましたが、あまりに複雑・煩雑で不評を買い不成立のままのはずです。


2015年も興味深い知財・法務デキゴトに事欠かない年になりそうです(すでになっている)。

4/7/2015  ヨシロー


 

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