5月28日、米連邦取引委員会(FTC)は、米医薬メーカーCephalon, Inc.が、同社のブロックバスター睡眠障害治療薬"Provigil"に対するジェネリック薬の競争を不当に排除したことを理由に提起していた反トラスト法訴訟で、和解に達したことを発表した。(FTC v. Cephalon, Inc. E.D. Penn)
「この画期的和解は、高額な処方薬により、患者、アメリカ企業、そして納税者に数十億ドルもの負担を強いる、反競争的な『遅延目的の支払い合意』 から消費者を守ることに向けた、FTCの取り組みにおける重要な一歩となる」 - エディス・ラミレスFTC委員長

今回は、"reverse payment"または"pay-for-delay"というブランド薬メーカーとジェネリックメーカーとの取り決めをめぐる米独禁法(反トラスト法)当局とブランド薬メーカーとの訴訟、その和解について取り上げます。FTCによるプレスリリース翌日の2015年5月29日には日本語メディアも含め広く報じられていたようです。

私自身が最初に知ったのはチェックしている Antitrust Updateというブログ記事からです。 "Teva Agrees to Pay $1.2 Billion in FTC’s Pay-For-Delay Suit Against Cephalon"(Antitrust Update 5/29/2015 ROBERT P. LoBUE | DEIRDRE A. McEVOY | NICOLE PASCHAL)  そして、このブログ記事はもちろんFTCのプレスリリースにリンクを張ってくれています。"FTC Settlement of Cephalon Pay for Delay Case Ensures $1.2 Billion in Ill-Gotten Gains Relinquished; Refunds Will Go To Purchasers Affected By Anticompetitive Tactics"(FTC 5/28/2015)  


リバース・ペイメント/pay-for-delayとは

まずはFTCのプレスリリースから、事件の背景説明と併せ、ことばの説明を抜き出します。

≪今回の和解に到る事件は、2008年にFTCが提起した訴訟に遡る。この訴訟においてFTCは、2005年から2006年にかけ、セファロンがジェネリック薬メーカー4社と締結した一連の契約により、 "Provigil"の独占を違法な手段で維持したと主張した。すなわち、セファロンはこれらジェネリック薬メーカーに特許侵害訴訟を提起した後、彼らに合計3億ドル以上を支払うことで、彼らがセファロンの"Provigil"特許について争うことを止め、ジェネリック薬の販売も6年間(2012年まで)先送りする、という和解を成立させたのである≫ *ちなみに、テバ社といえばジェネリック薬メーカー、世界最大手。なぜ本件でテバがFTCと和解しているかというと、2012年にテバがセファロンを買収しているのです。 

≪このように、ジェネリック薬メーカーが販売活動を一定期間しないことに同意し、その見返りとしてブランド薬メーカーがジェネリック薬メーカーに対し金銭の支払い、その他の給付をする形の和解を、一般に「リバース・ペイメント」特許和解という。2013年、連邦最高裁は、FTC v. Actavis事件において、リバース・ペイメントが反トラスト法違反になりうることを確認した≫
This type of settlement, in which the generic drug firm agrees not to market its product for a period of time and the brand name drug manufacturer pays the generic— whether in monetary or non-monetary form – is commonly referred to as a "reverse-payment" patent settlement.  In 2013, in FTC v. Actavis, the Supreme Court confirmed that reverse payments can violate the antitrust laws.

FTC v. Actavis事件における連邦最高裁判断


リバース・ペイメントに対しては2013年に連邦最高裁が判断を下しました。この判決前は、リバース・ペイメント取り決めは「それ自体(即)反トラスト法違反」(per se illegal)という厳しい判断や、逆にこの取り決めを反トラスト法の適用除外とする緩い判断など、裁判所ごとにバラつきがあったようです。

この判決により、リバース・ペイメントは例外扱いされることなく反トラスト法違反を構成しうることが確認されました。ただし、すべてが即違法ということではなく、ケースバイケースでそれぞれの取り決めの合理性が判断されることとなりました(「合理の原則」(rule of reason)採用)。この連邦最高裁判決については多くのコメンタリーが出ていますが、ここで参考にしたものはこれです。"Supreme Court Applies Antitrust Scrutiny To ANDA Reverse Payment Settlement Agreements" (Pharmapatentblog 6/20/2013 COURTENAY C. BRINCKERHOFF) 論点ごとに小見出しをつけてくれているので、読みやすいんです。

今回のFTC v. Cepharon, Inc.事件は、このFTC v. Actavis判決後、リバース・ペイメント争点について扱った初のFTCケースとして注目されていたということです。


12億ドルの支払いとは何か

「テバは、医薬品卸売会社、薬局、保険会社など、(ジェネリック薬を買えず)セファロンの"Provigil"購入のために払い過ぎた購入者を補償するために12億ドルを支払う。これらの購入者のうちいくつかはすでに別途提起していた関連訴訟で和解しており、そこでテバが支払った和解金は、今回FTCとの和解で用意される12億ドル和解ファンドから控除することができる。残った額は国庫に納められることになる」 - Antitrust UpdateブログやFTCプレスリリースでは、「12億ドル」についてこのように説明しています。

FTCのプレスリリースには、FTC-テバ-セファロン間の和解案原文("[Proposed] Stipulated Order for Permanent Injunction and Equibable Monetary Relief"全23頁)にリンクが張られていますから、この一次資料でどう表現されているか確認しておきます。

II. Equitable Monetary Relief 

A. セファロン当事者(セファロンおよびテバ)は、衡平法上の金銭救済として、12億ドルを支払う。これは、和解ファンド支出契約(付属書Aとして添付)を含む本命令の条件に従い、「和解ファンド」(Settlement Fund)として使用されるものとする。

B. 第II条C項およびD項に従い、本命令の登録日から30日以内に、セファロン当事者は、FTCが指定するエスクロー口座(「和解口座」)に和解ファンドを振り込むものとし、この口座をFTCまたはその代理機関が管理するものとする...。

C. セファロン当事者が「関連訴訟」における和解または判決に従い、本命令の登録日後30日より前に支払った額は、この和解ファンドから差し引かれ、それに伴い「和解口座」(Settlement Account)にセファロン当事者が振り込む総額は減額されるものとする。

D.以下略

実際にはより詳細な取り決めがありますが、少なくとも『...事情を知る複数の関係者によると、この12億ドルには、4月の5億1200万ドルなど民事訴訟で合意済みの和解金も含めた額であるため、テバが新たに支払いを約束した金額は12億ドルよりはるかに少ない。正式な和解書の写しは今のところ公表されていない。』という報道(WSJ日本語版 5/28/2015)の意味が理解できました。

より重要なFTCとの和解事項として、今後の"reverse payment/ pay-for-delay" agreementの禁止(全面的に禁止ではない)規定があります。--- Order  I. Prohibited Agreements ご参照 ---


ペンシルベニア東部地区連邦地裁での本件訴訟手続きは、2015年6月1日に事実審理の期日が設定されていますが、この和解案が地裁に承認されれば、当然、事実審理を前に手続きは終結することになります。

明日ですね(すでに承認されているとは思いますが)。
5/31/2015  ヨシロー 



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