前回速報した米連邦第2巡回区控訴裁判所の判決(5/22/2015 ニューヨーク南部地区連邦地裁の仮差し止め命令を支持)について、もう少し詳しく見ておこうと思います。 まずは判決文中の小見出しを抽出して、全体構成をつかみます。 

全体構成

連邦第2巡回区控訴裁判所
(United States Court of Appeals for the Second Circuit)     
原告-被控訴人:People of The State of New York, by and through Eric T. Schneiderman, Attorney General of the State of New York
被告-控訴人:Actavis PLC, Forest Laboratories,LLC

担当パネル(3人判事の合議体): Walker, Raggi, Droney
判決文執筆: John M. Walker判事

事案概要(Background)
Ⅰ. FDA要件、ハッチ・ワクスマン法、州医薬品代替法
Ⅱ. 関連市場
Ⅲ. 被告によるNamenda XRの導入およびNamenda IRの引き揚げ
Ⅳ. 手続き経過

考察(Discussion)
Ⅰ. 仮差し止め命令の適用基準
Ⅱ. シャーマン法第2条に基づく独占および独占の企て
a. 反競争的行為および競争排除行為
i. 消費者への強制
ii. 競争に対する妨害
b. 競争促進効果に基づく正当化
c. 競争促進効果 v. 反競争的被害
Ⅲ. 責任に対する抗弁としての特許権
Ⅳ. シャーマン法第1条およびドネリー法
Ⅴ. 回復不能な損害
Ⅵ. 仮差し止め命令

結論(Conclusion)


判決本文 - 個別詳細

全項目をカバーすることは到底できませんが、自分なりの情報武装ポイントとして記録しておきたい部分を中心に取り上げます。最初に、「事案概要」前に記されている冒頭サマリー中の結び部分を抽出します。*[ ]内は判決原文にはなく、私が便宜上つけた小見出しです

『...原告ニューヨーク州は、シャーマン法第2条請求の本案で勝訴する蓋然性(likelihood of success on the merits)を示し、かつ仮差し止め命令が認められない場合、競争および消費者にとって回復不能な損害(irreparable harm to competition and consumers)が生ずるおそれについて十分に証明した。ゆえに当裁判所は、原告ニューヨーク州が提出した仮差し止め命令申立てを地裁が認容したことにおいて、裁量権の濫用はなかったものと結論し、地裁命令を確認する』


事案概要(Background)


[控訴裁判所レベルでは "First Impression Issue"]

『本件は、反トラスト法における新規な問題を提起するものである。すなわち、連続的製品(successive products)を通じて特許による排他権を永続させようとする独占者の行為 -- 一般に「プロダクト・ホッピング*」として知られている -- が、いかなる状況においてシャーマン法第1条および2条を違反することになるのか、という問題である。この問題は、控訴裁判所においては「先例のない争点( issue of first impression)」である』

*判決文脚注によれば、「プロダクト・ホッピング」ということばはHerbert Hovenkampという法学教授が2002年に初めて使った造語(coined word)ということです。
 
『本件被告の行為が法に違反する反競争的なものであるか否かを決定するには、複雑で高度に規制された医薬産業の市場特性、およびアルツハイマー病治療の特質について、ある程度理解することが必要である』
第2巡回区(判決)はこのように述べて、

Ⅰ. FDA要件、ハッチ・ワクスマン法、州医薬品代替法(
FDA Requirements, the Hatch-Waxman Act, and State Drug Substitution Laws)へと進んでいきます。

ハッチ・ワクスマン法は、「薬価競争・特許期間回復法(the Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act)」という別名通り、FDA(食品医薬品局)による新薬承認審査で浸食された特許期間を回復させるとともに、特許期間が満了した後、ジェネリック薬を早期に市場に出せるように簡略化された承認申請(Abbreviated New Drug Application: ANDA)の制度を新設したものです。先発薬(ブランド薬)メーカーの利害にも配慮しつつ、後発一般薬(ジェネリック薬)による市場参入を促進することを目的として... というところまでは、私もある程度は知っているつもりでした。
しかし、ジェネリック薬使用を促すため、ハッチ・ワクスマン法と並行して、各州がDrug Substitution Lawを相次いで制定し、この州法が「プロダクト・ホッピング」という慣行と結びついていることは知りませんでした。


[市場の歪み解消が意図された州法 - 選択権限を医師から薬剤師へ]

州のジェネリック薬代替法について、判決文ではこのように説明しています。
『連邦議会がハッチ・ワクスマン法を制定したときには、多くの州がさらにジェネリック薬の競争を促進すべく医薬品代替法を制定していた。いまでは、50州すべて、およびコロンビア特別区が医薬品代替法をもっている。州によって具体的文言上の差異は存在するものの、いずれの法も、処方箋に書いた通りに調剤されるべきことが医師により明示的に指示されていない限り、薬剤師が、治療学的同等性を有し(therapeutically equivalent)、より安価なジェネリック薬を調剤することを許す、または要求する』

このような州の代替法は、処方薬市場における歪みの解消を狙ったものでもあるといいます。すなわち、
『医薬品に対する支払いをする消費者(患者)に選択肢がなく、支払いをすることのない医師が選択をするこの市場では、競争原理が働かないという根本的問題が存在する。州の医薬品代替法は、ブランド薬かそのジェネリック薬かの選択権を医師から、価格比較に対する金銭的インセンティブの高い薬剤師と患者に転換することを意図したものである』

[ジェネリック薬への代替調剤をサポートするFDA "オレンジブック" ... 意図せざる事態も]

『すべての州の医薬品代替法は、ブランド薬と治療学的同等性のないジェネリック薬に変更することを禁じているものの、治療学的同等性の定義については統一されていない。ニューヨーク州とコロンビア特別区を含む30州がFDAによる治療学的同等性の定義を採用しており、FDAが「オレンジブック」において "AB"評価をしているジェネリック薬についてのみ代替調剤することを認めている。"AB"評価を受けるためには、生物学的同等性だけでなく薬学的同等性を有する( pharmaceutically equivalent)こと、すなわちブランド薬と同じ有効成分、剤形、強さ、投与ルートであることが要求される......』

FDAの「オレンジブック」(Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations) には、文字通り承認医薬品の治療学的同等性評価が表示されていて(AA, AB, B*など)、医療関係者がジェネリック薬を選択する際の重要な指針になっているそうです。しかし、判決文はこのように指摘します。

『このAB評価要件は、どの医薬品が治療学的同等性を有しているか判断する指針を提供することを意図したものだが、すでに見てきたとおり、ブランド薬メーカーがこのシステムを「操作する」機会をも与えてしまった』("The AB-rating requirement ... also provides an opportunity for brand manufacturers to "game" the system."

長くなってしまいましたが、「プロダクト・ホッピング」について理解するうえで欠けていた基礎知識をひとつ得ることができました。この基礎知識を踏まえ、第2巡回区判決の主要部分を自分なりに整理してゆくつもりです。


6/7/2015 ヨシロー

 
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