「グーグル、シスコ、アップル、インテル、マイクロソフトらによって、個人発明家や小規模テクノロジー企業に対する偏見(「パテント・トロール」とのレッテル貼り)が作られた。もはや、このような小規模当事者を代理して勝訴することは不可能だ」 - レイモンド・ナイロ Niro, Haller & Niro

弁護士 レイモンド・P・ナイロ(Raymond P. Niro)。 この名前を耳にし、思わず顔をしかめる日本企業の方も結構いるのではないでしょうか。レイモンド・ナイロ弁護士は、多くのトロール訴訟を手掛けただけでなく、そもそも「パテント・トロール」という名称が世に出てくることに深く関わりのある人物です*1)。

このような弁護士による冒頭の発言。その真意は何か、何が起こっているのか。ふたつの紹介記事から真相を探りたいと思います。 "
Patent trolls may find it harder to hire competent attorneys" (Inside Counsel 6/24/2015 ED SILVERSTEIN); "Guy Who Inspired The Term 'Patent Troll' May Be Leaving The Patent Trolling Business" (Techdirt 6/15/2015 Mike Masnick)


打撃となった最高裁判決 - とりわけフトコロに直結するOctane Fitness判決

ナイロ弁護士によれば、トロール訴訟で勝訴した被告の弁護士費用をトロールに負担させやすくした最高裁のOctane Fitness判決( Octane Fitness v. Icon Health & Fitness)が、最も大きな打撃になったといいます。

ソフトウェア特許を弱体化したAlice判決(Alice Corp. v. CLS Bank International)こそ、トロール訴訟減少の筆頭要因と指摘する人は多いが、トロールのフトコロを直撃するOctane Fitness判決の法が実害が大きい。「1回、2回ならまだしも、これが3回目、4回目と続いて相手方の弁護士費用を払えと命じられると厳しい」

Intellect Wirelessと発明者を代理してHTCを訴えた訴訟では、410万ドルの弁護士費用支払いを命じられており、現在も減額を求めて訴訟中とのこと。


特許庁IPR手続きと組み合わされたOctane Fitness判決の厳しさ

別の大物トロール, IPNavの元CEOであるErich Spangenberg氏も彼がIPNavを去った理由として、特許庁(PTAB)での新たな再審査制度と併せ技で使われるOctane Fitness判決の厳しさを指摘しています。
 
「我々はまず特許の購入に投資し、調査をして、侵害者を発見する。しかしながら、それだけでは済まない。(対抗措置として特許庁に申請される)IPRに直面し、そこで100万ドルの出費が強いられる。さらに、並行する訴訟で敗訴した場合、200~300万ドルの弁護士費用負担が命じられるのだ」

IPRで苦しめられたSpangenberg氏がトロール会社を去った後、ヘッジファンド・マネージャーと組んで、医薬メーカーにIPR攻撃を仕掛けていることは、ここでも紹介した通りです。(『第36話:続報 - 著名ヘッジファンド・マネージャーの医薬特許攻撃、真の狙いは』 4/7/2015)


ナイロ弁護士の次なるターゲット: Trade Secret Trolling?

パテント・トロール弁護に見切りをつけたナイロ弁護士の次なるターゲットは、営業秘密/トレードシークレット?
ある雑誌のインタビューで次のように答えているそうです。

最近の特許法改正によって、特許権を侵害された小規模クライアントを代理するビジネスモデルが破壊されたいま(事務所も30人の弁護士から18人に縮小)、我々がターゲットとするのは、契約違反、NDA、営業秘密の不正流用ケースだ。

The firm, which has shrunk to 18 lawyers from 30, is considering taking more cases involving alleged breach of contract, nondisclosure agreements and misappropriation of trade secrets.

営業秘密の重要性が叫ばれ、保護強化を図る法改正の動きが出ているいま、これに伴い、「営業秘密トローリング」の兆しも見え始めているということです。


とにかく、ナイロ弁護士にしても、Spangenberg氏にしても、どう転ぼうがメシの種にはまったく事欠かないのですね。逞しい、といえば逞しいのですが、見切りをつけられた真面目な小規模特許権者はどうすればいいのでしょうか。

6/28/2015  ヨシロー

*1) 「パテント・トロール」という名称は、1990年代に特許保有会社と侵害訴訟を争っていた当時インテルの訴訟チームリーダー Peter Detkinが相手方弁護士のやり方に憤慨し、使い始めたものであり、このときの相手方弁護士がレイモンド・ナイロでした。「パテント・トロール」はPeter Detkinの造語(coined word)と理解していたのですが(私だけでなく一般にはそう考えられているはず)、真の考案者は別の人だったようです。この記事を書きながら調べていたらTrue Storyが出てきました。長くなってしまったので、詳細は後ほど。

 

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