7月16日、欧州司法裁判所は、注目のファーウェイ v. ZTE事件で、FRAND宣言をした標準必須特許の保有者が差し止め救済を求める前にとるべきステップについて指針を示す判決を下した。(Huawei Technologies Co. v. ZTE Corp., CJEU, 7/16/2015)

標準必須特許(Standard Essential Patent: SEP)の権利行使に関する欧州司法裁判所の判断がついに下されました。「要するに裁判所は...」と冒頭の一文できれいにまとめたかったのですが、それができません。参照した専門家の紹介記事は3つ。それぞれのタイトルと冒頭部分を記します。

"EU Court: Standard Essential Patent Owners May Be Abusing Dominance" (Antitrust Update 7/16/2015 MELISSA R. GINSBERG,DEIRDRE A. McEVOY) 「7月16日、欧州司法裁判所は、FRAND条件下でライセンスを受ける意思のある者に対し差し止め救済を求める標準必須特許の保有者は、市場支配的地位の濫用を認定される可能性がある、と判示した」

"CJEU Judgement in Huawei v. ZTE: Analysis" (Comparative Patent Remedies 7/16/2015 Thomas F. Cotter) 「ついに下された欧州司法裁判所の判決は、FRAND宣言をした標準必須特許の保有者が被疑侵害者に対し差し止め救済を求めることが市場支配的地位の濫用になるか否か、という問題に対し、中間的立場をとったといえよう」

"European Union High Court gives guidance on seeking injunctive relief on FRAND-encumbered SEPs (Huawei v. ZTE)" (Essential Patent Blog 7/16/2015 David Long) 「欧州司法裁判所は、FRAND宣言をした標準必須特許の保有者が差し止め救済を求める前にとるべきステップについて指針を示す判決を下した。裁判所はまた、ライセンスを受ける意思のある者は、遅滞なく行動すべきであり、カウンターオファーを提示し、FRANDライセンスに向けた交渉の最中であっても、過去および進行中の使用に対するロイヤルティの支払いを(信託その他の手段で)積極的になすべきとしている...」


事実背景と手続き経緯

原告ファーウェイは欧州電気通信標準化機構(European Telecommunications Standards Institute : ETSI)のメンバーであり、移動電話に利用される標準技術LTEに関わる必須特許(ドイツ指定を含む欧州特許)を保有している。ファーウェイは、標準必須特許について公正、合理的かつ非差別的(fair, reasonable, and non discriminatory: FRAND)条件でライセンスを供与するという宣言をしている。
 
ZTEはLTE技術を利用する移動電話を製造しており、2010年11月から2011年3月にかけ、ファーウェイの標準必須特許に関するライセンス交渉を行った。ファーウェイが自ら合理的と考える額を提示したのに対し、ZTEはクロスライセンスを要求し、結局、両者は合意に達することができなかった。
 
2011年4月、ファーウェイは、ZTEによる特許侵害を主張し、損害賠償と差し止め命令を求めてドイツ・デュッセルドルフ地方裁判所に提訴。ZTEは、ライセンス交渉の意思ある相手に対し差し止め救済を求めるファーウェイの訴訟は市場支配的的地位の濫用(abuse of dominant position)に当たると主張した。

そこでデュッセルドルフ地裁は2013年3月に手続きを停止し、この争点に対する欧州競争法(「欧州連合の機能に関する条約」(TFEU)第102条:市場支配的地位の濫用)に基づく判断を欧州司法裁判所に求めた。


欧州司法裁判所の判断

今回(2015年7月16日)欧州司法裁判所が下したのは、デュッセルドルフ地裁から付託されたこの争点に対する判断です。判決原文の末尾にある結論部分は以下の通り(だと思います。しっくりこない場合、是非原文でご確認を。そして誤りがある場合、ご指摘いただけるとありがたいです)。

≪1.TFEU第102条は次のように解釈されなければならない。すなわち、
標準設定機関に対しFRAND条件でのライセンス供与を宣言した標準必須特許の保有者は、以下の条件が満たされる場合、当該特許の侵害を禁ずる差し止め命令を求め、または当該特許が使用された製品の市場からの回収を求める訴訟を提起することにより、同102条でいう支配的地位を濫用しているとは認定されない。

ー 訴訟の提起前に当該特許保有者が、まず被疑侵害者に対し、当該特許の存在およびそれが侵害される態様を明示して注意喚起をし、次に、被疑侵害者がFRAND条件に基づきライセンス契約を締結する意思があることを明示した後に、とりわけロイヤルティとその計算方法について明示したFRAND条件での具体的ライセンス申し出を書面で提示した。かつ、

ー 被疑侵害者が当該特許の使用を継続している場合において、当該分野における商業慣行上、その被疑侵害者が特許保有者の申し出に対し誠実、勤勉に対応しているといえない場合(このことは、客観的要素に基づいて立証されなければならない)。

2.TFEU第102条は次のように解釈されなければならない。すなわち、
市場支配的地位を有し、標準設定機関に対しFRAND条件でのライセンス供与を誓約した標準必須特許の保有者が、当該特許の被疑侵害者に対し侵害訴訟を提起し、過去の侵害行為に対する不当利得返還や損害賠償を請求することを禁ずるものではない。≫

とりあえず、ここまでにします。もう少し専門家のコメントを吟味して、今回の判決の意味を自分なりに把握できるようにしたいと考えています。


7/18/2015  ヨシロー  ... なんと、7月初めて。いろいろな動きがあるのに。


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