米サンフランシスコの連邦地裁は1月7日、サルが撮影したセルフィー(自撮り)写真について、サルには著作権がないとする判断を下した。

ナルト

(©ナルト...とはならない?)

休み明けの長い1週間がやっと終わった1月8日、日本でも各紙(夕刊)、さらにNHKでもこのニュースが報じられたようですね。おおよそこんなことが伝えられていました。

このサルはインドネシアのクロザル「ナルト」(7歳)。2011年、英国人写真家デービッド・スレイター氏が機材を離れた隙にカメラを奪って自らの写真を撮影した。スレーター氏は写真の著作権が自分にあるとして、この自撮り写真を含む写真集を出版していたが、動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」が、写真の著作権はナルトにあるとして2015年9月に訴訟を起こしていた。

面白い話だね、いい写真だけど、やはりサルに著作権は認められないよね...さらりと読み流せば、こんな感想をもつ程度ですぐに忘れてしまいそうです。しかし、気にすると、なにかと引っかかることが出てきます。

関連当事者は、インドネシアのサル、イギリスの写真家、動物愛護団体。どういう資格で動物愛護団体が訴訟を提起したのか。なぜ米サンフランシスコの裁判所で争えるのか。また、具体的にこの裁判で何を請求していたのか...。

すぐに(無償で)入手できる情報をネットで収集しました。まずは、訴状です。次のことがわかりました。

原告はサルのナルト、動物愛護団体は後見人

提訴日: 2015年9月21日
裁判所: カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所
事件番号: 15-cv-4324
訴訟原因: 著作権侵害
陪審裁判請求(Demand for Jury Trial)

原告(Plaintiff): Naruto, a Crested Macaque, by and through his Next Friends, PEOPLE FOR THE ETHICAL TREATMENT OF ANIMALS, INC.,and ANTJE ENGELHARDS,Ph.D.

被告(Defendants): DAVID JOHN SLATER, an individual, BLURB, INC.,a Delaware Corporation, and WILDLIFE PERSONALITIES,LTD., a United Kingdom provate limited company

まず、動物愛護団体PETA(米ヴァージニア州を拠点とする非営利団体)は、ナルトが生まれたときから研究・保護活動を続けてきた大学教授(Engelhards氏)とともに、Narutoの後見人(next friendはguardianとほぼ同義とのこと)という立場で訴訟を提起しており、原告はあくまでナルトです。

次に裁判管轄について、訴状の"Jurisdiction and Venue"パートで確認します。
被告スレーター氏はイギリス人ですが、サンフランシスコに本店を置く出版社Blurb社とともに、ナルトの自撮り写真("Monkey Selfies"として世界的に知られている)を含む写真集を出版し、カリフォルニア北部地区を含む各地で販売したということで、カリフォルニア北部地区地裁の管轄権に服すと主張されています。


原告ナルト(PETA)の請求事項

では具体的にナルト(PETA)は地裁に何を求めているのか。訴状の"Prayer for Relief"より確認します。
  • ナルトが "Monkey Selfies"の著作者であり、著作権保有者であることの宣言的判決(確認判決)、
  • 被告による"Monkey Selfies"の複製、ライセンス供与、その他利用を禁ずる差し止め命令
  • "Monkey Selfies"に対するナルトの著作権侵害により被告が得た利益、費用の計算
  • "Monkey Selfies"に対するナルトの著作権侵害により被告が得た不当利得の返還
  • 損害賠償支払い
  • "Monkey Selfies"に対するナルトの著作権および人格権を本件後見人が管理することの許可、他

被告の主張 - サル(ナルト)に原告適格なし

1月7に地裁が下した判断とは、被告が提出していた訴え却下申立て(motion for dismissal of complaint)に対する裁判所命令というです。正確にいえば、正式命令を出す前の予備的命令。この命令自体は入手することができませんでしたので、以下の専門家ブログを参照しました。

"Naruto, We Hardly Knew Ye—Judge Calls Monkeyshines On "Monkey Selfie" Case" (Nicholas M. O'Donnell, Sullivan & Worcester LLP, mondaq.com 1/8/2016)
 "No monkeying around with copyright ownership" (The IPKat 1/7/2016)

カリフォルニア北部地区連邦地方のウィリアム・H・オリック判事は、「クロザルが撮影した写真はサル自身の著作権対象にならない」とする命令案を示しましたが、最終命令を出す前に、原告に対し修正訴状を提出する機会を与えたということです。

前日に行われたヒアリングの場で、オリック判事は、ナルトに著作権をもたせるか否かは連邦議会と大統領が考えることであり、少なくとも現行著作権法では認められない、という考えを示しています。現行著作権法に基づいて請求するなら(訴状修正の機会を与えるので)別のアプローチをとって欲しいということかもしれません。

なお、この命令案に対するナルト氏のコメントはとれなかったということです...


1/10/2016 ヨシロー  
...確かに昨年9月から10月にかけてこの写真ずいぶん見かけたんだけど全く気にも留めていませんでした。こんな事件だったとは。

 

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