BPCIA(Biologics Price Competition and Innovation Act 「生物製剤価格競争・イノベーション法」)の解釈をめぐり、first impression case(先例のない事件)が相次いで提起されている米国訴訟の動向について、主だったものをいくつか取り上げてきましたが、漏れたもの、アップデートされないままのものもあり、気になっていました。ここで、いくつか漏れたものを補足しつつ、これまで取り上げたケースを整理しておきたいと思います。


Amgen v. Sandoz(NDCA):先発薬 "Neupogen®" 
FDA承認バイオシミラー第一号をめぐるケース

2014.10.24 アムジェンは、サンドがBPCIAに基づき "Zarxio®"(アムジェンの"Neupogen®"のバイオシミラー)の簡易新薬申請を利用しながら、同法が定める特許紛争解決手続き(42 USC §262(l))に従わないことはカリフォルニア州不正競争法違反に該当するなどと主張して、カリフォルニア北部地区連邦地裁に提訴した。 

2015.1.7 FDA諮問委が"Zarxio®"の承認を全会一致で支持

2015.2.5 アムジェンはサンドによる"Zarxio®"販売を禁ずる仮差止め命令を地裁に請求 

2015.3.6 FDAが"Zarxio®"のバイオシミラー申請を承認。「パープルブック」に掲載される。 

2015.3.19 カリフォルニア北部地裁 アムジェンによる仮差止め申立てを却下 

2015.7.21 CAFC判決
  • 「パテントダンス」(42 U.S.C.§262(l))の履行は必須ではない
  • バイオシミラー申請人による180日の上市通知の提出(42 U.S.C. §262(l)(8))時期は、当該バイオシミラーのFDA 承認後
 (2015.8.6  Amgen v. Apotex フロリダ地裁で訴訟 - 下記参照)

2016.2.16 サンドによる最高裁への上告請求
ー 180日の上市通知の時期をFDA承認後としたCAFC判断の取り消しを請求

 (2016.2.26  Amgen v. Sandoz "Embrel®"についてニュージャージー地裁で訴訟
   2016.3.4 Amgen v. Sandoz "Neulasta®"についてニュージャージー地裁で訴訟 - 下記参照)

2016.3.21 アムジェンによる最高裁への上告請求
- 「180日の上市通知に関するCAFCの判断に誤りはない。これについて最高裁が再審理するならば、「パテントダンス」を必須でないとしたCAFC判断も見直すべき」

⇒現在:最高裁の判断待ちー上告請求(petition for writ of certiorari)を受理するか否か(cert.granted/denied)。
  アムジェンは「BPCIAの解釈をめぐる論争は7件の訴訟で争われているところであり、最高裁が判断するのは時期尚早」と主張している。とりわけ、下記Amgen v. Apotex事件におけるCAFCの審理が2016年4月4日に予定されていることに言及。


Amgen v. Sandoz(DNJ):先発薬 "Embrel®" -* カイル・バス氏がIPR申請
2016.2.26 最初はBPCIAに基づく「パテントダンス」手続きを実施していたものの途中でやめてしまったサンドに対し、アムジェンがニュージャージー地区連邦地裁に提起した特許侵害訴訟。

ここで対象となっていた5件の特許のうち1件(USP 8,163,522)について、あのヘッジファンド・マネージャー、カイル・バス氏が(正確には同氏がIPNavの元CEOであるSpangenberg氏と設立したCoalition for Affordable Drugsの名で)、2015年8月22日に米特許庁審判部(Patent Trial And Appeal Board: PTAB)にIPRを申請していたのです。

多くの批判をものともせず、医薬特許に対するIPR攻撃を続けているとは聞いていましたが、ここにも顔を出していたとは...。なお、このIPR申請は、自明性主張を裏付ける議論・証拠の不十分さなどを理由に、2016年3月11日付で不受理とする決定が下されています。

Coalition for Afforable Drugs VLLC(Petitioner) v. Hoffman-LaRoche Inc.(Patent Owner)*
CASE IPR2015-01792
Decision: Denying Institution of Inter Partes Review 37 CFR §42.108
*522特許の所有者はロシュ。アムジェンは同特許の排他的ライセンスを受けている。

Amgen v. Sandoz(DNJ):先発薬 "Neulasta®"
2016.3.4 "Embrel®"訴訟と同じ、ニュージャージー地区連邦地裁に提訴。ただし、特許侵害を主張するのではなく、サンドによる「パテントダンス」手続きの不順守を確認し、順守を命ずるよう地裁に求める確認訴訟(Action for Declaratory Judgment/ DJ Action)。 


アムジェンによるサンドへの新たな訴訟については以下の専門家ブログで知りました。

... 日付が変わってしまったので、ここで止めます。「第83話・続き」でAmgen v. Apotex(SDFl):先発薬 "Neulasta®"と Janssen v. Celltrion(D.Mass):先発薬"Remicade®"について取り上げます。


4/25/2016 ヨシロー


↓ よろしければ一押しお願いします。            

              

ビジネス英語 ブログランキングへ

 
                                               にほんブログ村 英語ブログ ビジネス英語へ                                             
にほんブログ村

                               にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ