EUから離脱する("Brexit")か、残留するか("Bremain")か、を決するイギリスの国民投票まで残すところ10日(国民投票の日は2016年6月23日。6月13日時点でこれを書いています)。

イギリスでも発生している「トランプ現象」(?)により、いまや離脱派("Leaver"/ "Leave side")が残留派("Remainer"/ "Remain side")を上回る勢いなんだそうですね。そこで気になるのが欧州立法、とりわけ2017年には実施が見込まれている欧州統一特許裁判所(Unified Patent Court)と単一効特許(Unitary Patent)の行方です。

この点については、 『第84話:欧州でも営業秘密保護法の成立間近...ここで気になる"Brexit"の動向』の中で少し触れました。このように書いてしまいました

≪... より深刻なのは、2017年には始動が見込まれ、盛り上がっている欧州単一効特許(Unitary Patent)制度や欧州統一特許裁判所(Unified Patent Court: UPC)です。UPCは、独仏英3ヵ国の批准が発効の要件となっており(正確には13ヵ国以上の批准が必要で、そのうち独仏英3ヵ国が必ず含まれなければならない)、欧州単一効特許はUPCの発効が前提となっています。すなわち、Brexitが選択された場合、欧州単一効特許、統一裁判所制度は一からの見直しとなり、実質的に崩壊するだろうと見られています。≫

「実質的に崩壊するであろう」という見方も確かにありますが、 「いや、そこまでの影響はないだろう」という見方も少なくないのですね。一部の見方のみを全体的な見方であるかのように書いてしまいました。改めて、後者の見方を取り上げておくこととします。


"European Unitary Patents And Possible Brexit" James M. Singer, Fox Rothschild LLP(monaq.com 6/8/2016)
  • イギリスがEUを離脱しても、欧州特許庁(EPO)経由で特許を取得することには、何らの影響を及ぼすものではない。欧州特許出願は、欧州特許条約(EPC)に基づいて実施されており、EPCへの加盟は欧州連合(EU)への加盟とは切り離されている。実際、EPC加盟国にはEU非加盟国も存在する(たとえばスイス)。
  • 欧州単一効特許(Unitary Patent: UP)制度が発効すれば、欧州特許の保有者は、現行制度下と同様に、保有する欧州特許を関心ある加盟国において有効にする(validate)か、欧州単一効特許協定の全加盟国をカバーするUPにする選択権を有することになる。
  • イギリスがEU離脱した場合、UPはイギリスにおいて効力をもたないことになり、イギリスについては別途欧州特許を有効にする手続きが必要になる。
  • UPの発効後も、イギリスを拠点とする欧州特許弁理士は、すべての指定国(UP含む)について代理手続きをすることが許される。確かにイギリスの離脱による経済的影響の大きさに鑑みれば、単一効特許条約の進展に支障がもたらされる可能性は否定できないが、それによりUP制度が立ち止まることはないであろう。

"Beating Brexit" Joff Wild (iam-magazine blog 6/6/2016) *IPBC Global 2016レポート中の一節 
  • イギリスがEU離脱を選択すれば欧州統一特許裁判所(Unified Patent Court:UPC)協定への批准はされないまま。新たな枠組みで協定が発効するには相当の遅れが出る?...「そうでもない」との声もあり。
  • UPCはあくまで国家間協定であり、EUの条約ではないので、仮にEU離脱を決定したイギリスがUPCを批准したとしても、EU離脱の精神に反することにはならない。
  • 無論、これはイギリス政府がどうとらえるかの問題。離脱決定した場合でも、正式離脱までには時間があるため、その間にUPC批准方法を探ることになるだろう。

最後に、EU離脱が決定された場合の手続きについて。

リスボン条約(EUの新基本条約)に基づく、欧州理事会への正式通知
脱退協定のための交渉
2年間の交渉期間中に合意できない場合は、交渉期間延長も可能
*交渉は複雑となるため数年要する可能性がる
*交渉期間中、イギリスはEUメンバー継続
上記指摘("Beating Brexit")は、この2年間の交渉期間中にUPC批准策を探るということなのでしょう。



6/13/2016  ヨシロー


 
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