2016年暮れ、ノキア社とアップル社の特許訴訟トピックが広く報じられました。12月21日、ノキアは同社が保有するスマホ関連特許をアップルが侵害しているとして、ドイツのデュッセルドルフ、マンハイム、ミュンヘン連邦地裁および米テキサス東部地区連邦地裁に訴訟を提起しました。

一方アップルは、一日前の2016年12月20日に「ノキア陣営」を訴えていたのです。アップルはノキアの特許権譲渡を受けていたAcacia Research Corp.とConversant Intellectual Property Management Inc.他による反トラスト法違反を主張して、カリフォルニア北部地区連邦地裁に提訴しました。

両社は2009年にもスマホ関連特許の侵害訴訟を互いに提起し、2011年に和解、ライセンス契約を締結していたため、今回は「訴訟合戦の再燃か」という報道も目立ちました。確かに2011年のライセンス契約から尾を引いている訴訟という意味では「再燃」ですが、5年後のいまノキア側の状況も変わり、両社の攻防にも新たな、興味深い論点が加わっています。... "privateering"です。


アップルが攻撃するノキアの "privateering"行為とは

今回の反トラスト法訴訟を "privateering"ということばを使って紹介している専門家ブログ記事をみてみます。

  1. "Enough is enough: Apple files antitrust complaint against multiple Nokia privateers" (Florian Mueller, FOSS Patents 12/21/2016)  *FOSS Patentsは知財の世界で高名なブログのひとつ。今回の内外報道でも、Mueller氏によるブログ記事を引用しているものが結構ありました。ただしMueller氏によれば、Appleによる反トラスト法訴訟を最初に報じたのは"PatentlyApple"とのこと。
  2.  "Apple now suing Nokia itself on antitrust grounds; Nokia suing Apple over 40 patents in 11 countries" (Florian Mueller, FOSS Patents 12/22/2016)  *タイトルに"privateering"は出てこないのですが、本文冒頭にすぐ出てきます。→ "Yesterday, Apple's antitrust lawsuit in the Northern District of California against certain Nokia privateers (patent assertion entities that Nokia has fed with patents) became known...."
  3. "Apple’s anti-privateering push against Nokia looks like a litigation play rather than a serious challenge" (Richard Lloyd, iam blog 1/6/2017)

辞書で意味を見ると、"privateer"=「(戦時、政府から許可を得た民間の)私拿捕(だほ)船、私掠(しりゃく)船」とあります。これをもじって、「(主に事業会社である)特許権者から特許を与えられたPAE(Patent Assertion Entities)/トロール」を意味しているようです。

そこで、"privateering"とは「(主に事業会社である)特許権者が、自社特許をPAE/トロールに売却する行為」であり、そこではPAE/トロールがpatent assertion行為によりこの特許をマネタイズしてゆくことが前提になっているようです。

以上を前提に、アップルが今回の反トラスト法訴訟で主張していることをみてみます。

  • ノキアは2011年の和解に基づくクロスライセンス契約の際に、同契約ではカバーされないという「分離された」特許("divested" patents)のリストを提供してきた。なぜこれらの特許を契約対象から外したかについての説明はなかった。
  • 実際はこれらの分離された特許は、AcaciaやConversantを始めとするPAEに移転され、その後アップルを含む複数企業に対する高額ロイヤルティ請求に使われた。
  • さらにこれらの特許の中には、ノキアがFRAND宣言をしている標準必須特許(SEP)も含まれており、AcaciaやConversantに移転することによりFRAND義務を不当に逃れ、高額請求の対象にしている。
  • ノキアとAcaciaらの特許移転契約では、Acaciaが獲得したロイヤルティや和解額の多くの部分をノキアが受領する権利を保持するになっており、ノキアだけでは得られなかったロイヤルティよりはるかに多くを不当に得ようとしていたことは明らかである。 

なお、上記FOSS Patentsブログ記事2.では、アップルの当初の訴状ではノキア自身は被告になっていなかったものの、間もなく被告として追加される見込みであることが指摘されています。


とりあえず本日はここまで。次回(第101話・続き)は、「"privateering"に対する賛否両論」と「訴状の全体構成」(小見出しまとめ...これだけでもアップルの主張がかなり見えてきます)を紹介するつもりです。


1/8/2017  ヨシロー 新年あけましておめでとうございます。穏やかなお正月で何よりでした。



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