2月9日に和解したウェイモ v. ウーバー営業秘密訴訟の教訓について、いくつかの専門家コメントを見てゆきます。前回第118話で示したコメント①~②および番外①をとりあげます。
(*あくまで私自身が関心を持った部分のみを抽出しています。偏りあり)

① "Waymo v. Uber Shows Even Epic Battles Can Be Resolved" (James Pooley ipwatchdog 2/28/2018)


全体的状況からみて、また具体的証拠上も圧倒的に有利に見えたウェイモ側が、圧倒的な勝利を収められなかった原因の(重要な)ひとつとして、営業秘密ならではの難しさを指摘しています。


営業秘密で戦うことの難しさ(②WIRED記事より)  

ここでは、陪審審理2日目、ウーバー側弁護士によるウェイモ側エンジニアへの反対尋問が紹介されています。

ウェイモに早くから務めているエンジニア(Dimitri Dolgov)の証言
「ウェイモでは、かなり以前から特許ボーナス制度があった。米特許庁に特許出願されると、その発明をした者は金銭報償を受け取れた...」

ウーバー弁護士の反対尋問
「営業秘密には同様の制度はないのですか。本件訴訟で主張されている営業秘密は8件、たった8件です。重要とされているこの8件について、ボーナスをもらった従業員がいるのでしょうか」

Dolgove氏
「営業秘密にはボーナス制度はありません。営業秘密開発には多くの者が関わっており、報償は特許のように明確に定めることができない。今回対象となった営業秘密についても、ウェイモが訴訟を提起した後に初めて、このように特定されたものを見ました」

厳しい状況にあったウーバー側としては、ウェイモの証人を利用し、「ウェイモが貴重な情報を盗まれたという割には管理が不十分であった。…営業秘密ではないのでは」と陪審に思わせる戦法だったといいます。

グーグルのフォレンジックアナリストに対しては、「なぜレバンドウスキーが大量の秘密ファイルをダウンロードしたのに、アラームが始動しなかったのか」と尋問。
アナリストは「問題のサーバーには、特定の監視担当者がいなかった」と回答しています。


そもそも営業秘密訴訟とは(① James Pooley氏記事より)

James Pooley氏も、ウェイモが主張する営業秘密の適格性に対するウーバー陣営の攻撃とAlsup判事の厳しい姿勢を指摘しています。

反撃に出たウーバー「本当に営業秘密が存在したのか…」
同調するAlsup判事「営業秘密を主張するなら、特許のような正確性をもって説明せよ」
陪審裁判開始までに、対象となる営業秘密は当初主張された131件から10件*に絞り込まれた。これに伴い、損害賠償の請求額も制限されることになった。
(* 前出の通り「8件」という数字も出ているのですが、どちらが正しいか不明です)

このような過程を経て和解することになったウェイモ v. ウーバー訴訟から、Pooley氏は「そもそも営業秘密訴訟とは」という観点で、次のような教訓を導きます。

多くの営業秘密訴訟は、互いに相手方の不正に対する感情のぶつかり合いで始まる。
原告の思い 「裏切られた」
被告の思い 「誤解され、不当に糾弾された」

しかし時間がたつにつれ、新たな事実が表に出てくる。
当事者はそれぞれ、この戦いを続けることのコストと利益について再考するようになる。

本件の場合、陪審審理を前にして、ウェイモはすでに根本的な目的の多くを達成した。
レバンドウスキーは開発現場から去った。

ウーバーは、抗弁においてウェイモの営業秘密盗用に対する強力な防御壁を立てた。この壁は、予備的差止め命令においてAlsup判事によりさらに強化された*。
さらにCEOの交替があり、新たなリーダーには前任者とのしがらみはない。

訴訟開始時の勢いと有利な結果への期待から訴訟はさらに数ヵ月続けられたが、それぞれの経営陣はよりよい解決法を認識していたはずだ。しかし、互いに戦いに備えたチームを抑えることは難しく、皆が共通の事実を目にする公開審理を経る必要があった。

今回のケースでは、両当事者のリーダーシップが、アドバイザー・チームとともに、凝り固まった方針の軌道を修正できることを示した。

最も重要なこと。「訴訟とは過去のことを扱い、ビジネスは将来のことを扱う」
*「Alsup判事によりさらに強化された」とは ... 2017.5.15 限定的な予備的差し止め命令を認めた際のAlsup判事のことば 参照

≪ウェイモが主張する多くの営業秘密の適格性が明確になっておらず、ウェイモの主張に行き過ぎの側面が認められる状況において、主張された営業秘密全てについてウーバーによる使用を禁ずることは妥当ではない...。ウーバーによるLiDAR開発全体に影響を及ぼすことになりかねない≫


営業秘密で争うということは、特許とはまた別の準備、対応が必要になるということで、以前取り上げた話題を思い出しました。『第28話:重要性高まる営業秘密保護 ... ただし、訴訟には固有の難しさ、悩ましさも』 その一部を抽出します。

訴えるべきか、訴えざるべきか... 訴える前に検討すべき6項目

1.訴追するビジネス上の目的は何か。
2.訴訟によって、さらなる秘密情報の開示を招かないか。
3.裁判所によって自社の秘密情報の「営業秘密保護」適格を否定されたらどうするか。
4.訴訟による主要顧客やビジネス・パートナーへの影響はないか。
5.我々自身の手は汚れていないか。
6.被告(元従業員)による反訴の可能性はないか。
         ...よくよく見ると特許訴訟と相通ずる部分が少なくないですが。

さて、番外① "Why the IP system works against the small" (Paul Morinville ipwatchdog 2/13/2018)は、とてもユニークな考えであり(少なくとも私にとっては)、脳が刺激を受けました。...長くなったので次回にします。


3/11/2018   ヨシロー  




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