≪これは、合衆国政府が一度認可した特許財産権を取り上げたことに対し、正当な補償を求める集団訴訟(クラスアクション)である。合衆国政府(実行者は米国特許商標庁PTAB)がアメリカ発明法(AIA)の付与後手続きによって原告および本件クラスの特許クレームを無効にする行為は、合衆国憲法修正第5条に違反する「正当な補償なき収用(a taking without just compensation)」に該当する≫
(Christy Inc. v. USA, Ct. Fed.Clms., filed 5/9/2018)


前回Oil States最高裁判決についてとり上げた際 (『第120話:Oil States事件の連邦最高裁判決下される --- I.P.R.の合憲性について、最高裁が判断したこと、しなかったこと』(5/6/2018))、このように締めくくりました。

最高裁は、今回の判決がかなり狭い範囲に限定されたものであることを明記しています。

≪本判決は範囲の狭いものであることを強調しておく。ここで扱うのはIPRの合憲性のみであり、たとえば、特許侵害事件といった他の特許問題が憲法第3条裁判所以外の機関(non-Article Ⅲ forum)で審理されうるか否かについて扱うものではない。... ... 憲法の「デュープロセス条項」や「収用条項(Takings Clause)」の文脈においても特許権は私有財産ではないことを本判決が示唆している、というような誤った解釈をすべきではない≫
ただでさえアンチIPRの業界や投資家が多いなか、多数意見自体がこのようなことばをつかっている以上、IPR論争はまだまだ尽きることはなさそうです。

まさに、この最高裁判決を紹介した3日後に、冒頭の訴訟が提起されました。原告はIPRによって一度認可された特許を無効にされた特許権者であり、最高裁が判決対象外とする憲法条項(修正第5条)の違反を主張して、連邦請求裁判所に対しクラスアクションを提起したのです。

合衆国憲法修正第5条
「... 何人も、法の適正な過程(デュープロセス)によらずに、生命、自由または財産を奪われることはない。何人も、正当な補償なしに、私有財産を公共の用のために収用されることはない(…nor shall private property be taken for public use, without just compensation.)」


原告Christy Inc.は、米特許商標庁(USPTO)による修正第5条違反(「正当な補償のない収用」)とともに、USPTOによる「契約違反」を主張して損害賠償を請求しています。ここでいう契約とは、特許を有効なものとして認可する特許庁と、対価として特許発行料(issue fee)と維持料金(maintenance fee)を支払う出願人/特許権者との間で交わされた取決めをいいます。

より詳細はこちらで。訴状原文にもリンクが張られています。


実際のところ、IPRを憲法違反とするのと同じくらい、IPRによる特許無効化に対し政府に補償させることは難しいと思います。しかし、このような特許付与をめぐる憲法論議に伴い(その前からではありますが)、特許制度への信頼性回復を求める声がかなり強くなってきているようです。


批判の元、PTABにおけるBRI基準を改正へ

今回のクラスアクションと同じ5月9日、Andrei Ianqu新長官が率いるUSPTOは、PTAB手続き(IPR, PGR, CBM)における特許クレーム解釈で用いられているBRI(Broadest Reasonable Interpretation)基準を変更し、連邦地裁やITC(国際貿易委員会)で用いられる基準(Phillips判決基準)を採用するルール改正案を発表しました(連邦官報告示 ”Changes to the Claim Construction Standard for Interpreting Claims in Trial Proceedings Before the Patent Trial and Appeal Board" (83 FR 21221) May 9, 2018)。

発明者、特許権者、そして投資家が信頼できる特許制度の再構築を目指す、と公言するIancu新長官の本気度を示す第一歩か...。


5/14/2018   ヨシロー


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