クアルコムとアップルの米国反トラスト法・特許侵害訴訟が急展開を見せています。しばらく離れていた当ブログ再開のトピックとして、3月14日に下されたカリフォルニア南部地区連邦地裁の(略式)判決や翌15日の同地裁陪審評決を中心に書き始めたところ、やはり両者間の特許紛争を扱っていた米国際貿易委員会(ITC)の決定が、3月26日の朝と夕、立て続けに出されました。このITC決定については日本でも広く報じられました。

  • アップル製品輸入制限を 米ITC勧告 特許対価、クアルコム主張認める(日本経済新聞 3/27/2019)
  • 知財訴訟、アップルの経営リスクに  米ITC判事が輸入禁止を勧告 (日本経済新聞 3/27/2019)
  • 米クアルコムとアップルの法廷闘争は一勝一敗、焦点は連邦取引委の訴訟(ロイター 3/27/2019) 他

ITCの手続き(関税法337条手続き)についてもウォッチはしていたのですが、標題のとおり「公益」(public interest)をめぐる論争についてITCの判断が示されることを期待していました。
一般のメディアではあまりとりあげられていない「公益」論争とはどのようなものか。その背景についてとりあげる前に、米国におけるクアルコムとアップルの主な反トラスト法・特許侵害訴訟をザックリ整理しておきたいと思います(ここで切り離すことができない連邦取引委員会(FTC)の訴訟も含めて)。


Qualcomm, Apple, FTC の主な米国反トラスト・特許訴訟

FTC v. Qualcomm (カリフォルニア北部地区連邦地裁, Lucy Koh判事)
2017.1.17提訴 反トラスト法(FTC法第5条) -- SEPライセンス慣行

2018.11.16 一部略式判決 「クアルコムはSSO知財ポリシーに従い、競合モデムサプライヤーにもライセンス供与しなければならない」

Apple v. Qualcomm (カリフォルニア南部地区連邦地裁, Gonzalo P. Curiel判事)
2017.1.20提訴 反トラスト法 - SEPライセンス慣行、契約違反(10億ドル請求)

2019.3.14 一部略式判決 「クアルコムは、アップルとのビジネス契約に基づきアップルに支払った10億ドルの返還を要求することはできない」

Qualcomm v. Apple (カリフォルニア南部地区連邦地裁, )
2017.7.6提訴 特許侵害(non-SEP 6件)

2019.3.15 陪審評決 - アップルによるクアルコム特許の侵害認定、3100万ドルの損害賠償

④ In the Matter of Certain Micro Devices... (Qualcomm v. Apple) 337-TA-1065
2017.7.7提訴 関税法337条(特許侵害 non-SEP 6件)

2018.9.28 仮決定(Pender行政法判事)「'490特許は有効、侵害された。ただし、公益に照らし(iPhoneに対する)排除命令は認めない」
2019.3.26 最終決定(委員会)'490特許は無効。ゆえに337条違反なし。公益について判断する実益なし」


⑤  In the Matter of Certain Micro Devices...(Qualcomm v. Apple) 337-TA-1093
2017.11.30提訴  関税法337条(特許侵害 non-SEP 5件)

2019.3.26 仮決定(McNamara行政法判事)「アップルによるクアルコム特許の侵害あり、輸入排除命令が妥当」

  *③と④の特許は同じもの。④と⑤の特許は別のもの。


侵害を認定しつつ「公益」を理由に排除命令を認めず

標題にある「公益」論争の発端となったのが、④のITC関税法337条事件において2018.9.28にペンダー行政法判事(Administrative Law Judge: ALJ)が下した仮決定です。ペンダーALJは、インテルのチップが搭載されたアップル製品(iPhone)による侵害を認定したものの、救済としての排除命令については公益(public interest)を理由に認めなかったのです。

ここでペンダーALJが理由とした「公益」とは、1) 排除命令が実質的にスマホ市場からインテルを排除することになりクアルコムの独占力をますます強めてしまう恐れがある。さらに、2) インテルをスマホ市場から排除することにより、5G技術に関する米国の開発能力を害することになり、国家安全保障と国際競争力に影響を及ぼすことになりかねない。このような影響に鑑みると、排除命令が公益に反するというもので、アップルの主張を受け入れたものです。

ペンダーALJの仮決定に対しては、クアルコム、アップルともに、委員会(ITCの6人の委員から構成される)のレビューを求め、2018年12月18日、委員会は同仮決定のレビューを決定するとともに、「公益」について広くコメントを求めたのです。

 (「公益」論争に関する当時および最近の専門家記事)
"Designing Around a Monopoly: the Public Interest Dispute between Qualcomm and Apple Takes a New Turn" (Sandra Badin, Matthew Galica, Michael Renaud,James Wodarski,  Mintz,  JDSupra 3/14/2019)
 
"Apple v. Qualcomm: Is Public Interest Apple's Best Defense in the ITC?" (Shamita Etienne-Cummings, White & Case LLP  JDSupra 10/19/2018)
 
数多く提出されたコメントも踏まえ、ついに出された委員会(ITC)の最終決定が上記の通り、そもそもクアルコムの特許は無効なため、337条違反が成立せず。ゆえに公益については論ずる必要なし、という拍子抜けの結果となったわけです。

次回、もう少し詳しく「公益」論争についてとりあげるとともに、①~③ケースについても順次触れたいと思います(おそらくその間により重要な判決が出てしまうでしょうね)。


3/31/2019  ヨシロー   ... 個別のお客様向け勉強会資料作成などに時間をとられているうちに、すっかりブログ記事から遠ざかってしまいました。アップデートしないといけない過去記事もいろいろとあり、これから挽回してゆく所存です(ウソにならないよう、本記事4月1日直前に間に合わせました)。



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