2019年5月14日、EU理事会は、EU域外への輸出などを目的としたジェネリック薬やバイオシミラーの製造を、補充的保護証明書(Supplementary Protection Certificate: SPC)による先発ブランド薬保護の適用除外とする規則を承認した。この新たな規則は、EUを拠点とするジェネリック薬などのメーカーが、非EUメーカーと対等な条件で競争することを可能とするものである。"EU adopts measures in support of generic pharmaceuticals producers" European Council 5/14/2019)

先週は、欧州のSPC ”Manufacturing Waiver"(SPC製造免除)規則の採択に関するトピックが目につきました。"Manufacturing Waiver"については昨年半ばに初めて目にしていたのですが、記憶がかなり薄れていました。今回は正式採択ということですので、改めて内容確認しておきたいと思います

今回採択された規則とは、医薬等の特許期間延長について定めた規則(Regulation (EC) No.469/2009)の改正のこと。薬事当局の新薬承認審査などによって浸食された特許権利期間を補充するため、原特許の権利期間を延長する(patent term extension/restoration)日米などの方式と違い、EUでは原特許の満了後に保護期間を補充する新たな保護/証明書を発行する形をとっています(Supplementary Protection Certificate: SPC)。... たしか、EUにおける立法上の問題で(延長制度だと立法化に時間がかかる)この形をとったというかすかな記憶があります(最初にSPC制度が設置されたのは1992年)。

SPCによる先発薬保護が厳格すぎて、EUのジェネリック薬メーカーやバイオシミラー・メーカーが他国メーカーとの競争上不利になっている現状を是正する、というのが改正の趣旨ということです。EU消費者のジェネリック薬に対する早期アクセスを可能にするという目的も「備蓄を目的とした製造への適用除外」(下記)にはあるようです。


規則案の骨子

・EUを拠点とするジェネリック薬やバイオシミラーのメーカーは、次の二ついずれかを目的とする場合に、SPCによる保護期間中も先発ブランド薬のジェネリック版やバイオシミラーを製造することが認められる。
  1. EU域外国(特許保護が満了している、または存在していない国)への輸出を目的とする場合
  2. SPCの満了後初日からEU市場に出すための備蓄を目的とする場合(この場合、適用除外は当該SPCの満了前6ヵ月間に限定)

・ジェネリック薬やバイオシミラーのメーカーは、製造をする加盟国の当局およびSPC保有者(先発ブランド薬メーカー)に対し規則に基づく情報を事前に提出すること

・ジェネリック薬やバイオシミラーのメーカーは、(EU域外への)輸出用であること示す所定のロゴを当該薬のパッケージに貼付すること


立法経過

2018.5.28
欧州委員会が規則案を欧州議会とEU理事会に提出

"REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AN OF THE COUNCIL amending Regulation (EC) No 469/2009 concerning the supplementary protection certificate for medecinal products"

2019.2.14
規則案テキストについて欧州議会とEU理事会が合意


-- 委員会の当初案では、EU域外輸出を目的とした製造のみを適用除外としていましたが、欧州議会の提案により、EU市場でのSPC満了後初日から上市するための備蓄(stockpiling for "day-1 entry")を目的とした製造も適用除外対象に加えられました。さらに、EU域外で販売されたジェネリック薬やバイオシミラーがSPC有効期間中にEU市場に入り込むことを防止すべく、厳しいラベリングや通知義務が追加されています。

この辺りは、ブランド薬メーカー側、ジェネリック薬/バイオシミラー・メーカー側の利害を調整した結果のようです。... どちらにも不満は残っているようですが。
たとえば、「偏った規則だ。欧州の新薬開発意欲を減退させるもの」(ブランド薬メーカー団体)、「強化されたラベリングや通知義務は、後発薬の早期上市を妨害するために濫用される恐れがある」(ジェネリック薬/バイオシミラー・メーカー団体)


2019.4.17 
欧州議会が修正規則案を承認


2019.5.14
EU理事会が修正規則案を承認

-- これにより、"SPC Manufacuring Waiver"を定めた欧州議会・理事会規則が正式に採択されました。EU理事会承認に際し行われた加盟国投票の結果は、賛成22ヵ国、反対6ヵ国、棄権2ヵ国とのことです。


規則はEU官報での公表を経て、2019年7月1日に発効する予定


[参考資料]
  • "New developments in the SPC manufacturing waiver legislative process" (MIRIAM GUNDT, LUKAS SIEVERS,  Hogan lovells  LimeGreenIP News 1/15/2019)
  • "Agreement On SPC Manufacturing Waiver Reached, Benefitting EU Generic, Biosimilar Industry" (David Branigan, Intellectual Property Watch, 2/14/2019)
  • "SPC manufacturing waiver adopted by European Parliament" (Oswin Ridderbusch, Alexa von Uexküll (Vossius & Partner), Kluwer Patent Blog 4/17/2019)
  • "EU adopts SPC manufacturing waiver under protest from several member states" (Oswin Ridderbusch, Alexa von Uexküll (Vossius & Partner), Kluwer Patent Blog 5/14/2019)


5/19/2019   ヨシロー  


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