注目のFTC v. Qualcomm反トラスト法訴訟・第2ステージ(控訴審)、第1ラウンドにおいてクアルコム側が勝利を収めました。
 
2019年8月23日、連邦第9巡回区控訴裁判所(U.S.Court of Appeals for the Ninth Circuit: CA9)は、第一審(カリフォルニア北部地区連邦地裁: NDCA)の差止め命令に対する執行停止を求めていたクアルコムの申立てを認容したのです(FTC v. Qualcomm, CA9, 8/23/2019, motion granted)。

前話(第139話~第141話)で「IoT時代におけるSEPライセンシング最新事例」として、コンチネンタル対アバンシ、ノキアらの米独訴訟を紹介しましたが、今回のFTC対クアルコムの訴訟もまさにそのひとつ。むしろ、今後のSEPライセンシング全般に及ぼす影響度、重要度は、はるかに高いかもしれません。
*最近、当ブログで本件に触れた記事は以下の通り
まずは、地裁判決骨子と差止め命令をみておきます(判決原文はここ。長文です)。

地裁(NDCA)のFTC v. Qualcomm判決骨子および差止め命令 (2019.5.21)

「クアルコムによる以下の行為は反トラスト法(FTC法第5条)違反」
  • 特許ライセンス契約の締結をモデムチップ供給の条件とした("No License, No Chip" policy)
  • 競合するモデムチップ・サプライヤーにはSEPライセンスを拒絶した(refusal to license to rivals)
  • アップルその他のスマホメーカーと事実上の排他的取引を行った(de facto exclusive dealings)

差止め命令 (Injunction)
  1. クアルコムは顧客の特許ライセンス締結をモデムチップ供給の条件としてはならない。クアルコムは、モデムチップ供給や付随する技術サポートへのアクセス制限や差別的提供といった脅威のない条件下で、顧客と善意のライセンス交渉/再交渉を行わなければならない。
  2. クアルコムは、FRAND条件下で、権利消尽効果をもつSEPライセンスをモデムチップ・サプライヤーに申し出なければならない。またFRAND条件についての判定は仲裁または司法紛争解決に付さなければならない。
  3. クアルコムは、明示的または事実上の排他的モデムチップ供給契約を締結してはならない。
  4. クアルコムは、法執行や規制問題について顧客が政府機関に相談することに対し干渉してはならない。
  5. 上記差止め命令に対するクアルコムの順守を確保するため、当裁判所は、クアルコムが以後7年間、順守監視手続きに服することを命ずる。具体的には、クアルコムは、上記差止め命令の順守について毎年FTCに報告するものとする。

クアルコムは地裁判決を不服とし、すぐに控訴裁(CA9)に控訴するとともに、控訴手続き中の差止め命令の執行停止を求める申立て(motion for a stay of the injunction pending appeal)を提出しました。当初の申立ては上記差止め命令すべての執行停止を求めていましたが、その後、執行停止の対象を(1.と2.に)限定する"partial stay"の申立てに修正しています。

以下、この申立てを認容したCA9の命令(Order)をみてゆきます。全7頁という短い文書の中で、論点がコンパクトにまとめられているとともに、かなり興味深い記載が複数出てきますので、ほぼ全部を紹介します。


控訴裁(CA9)、差止め命令の執行停止を認める命令 (2019.8.23)

FTCの訴え
クアルコムは、保有するSEPのライセンシングおよびCDMAおよびプレミアムLTEの販売に関連した以下の行為により、シャーマン法第1条及び第2条に違反し、それゆえFTC法第5条に違反した。

1)標準化団体(SSO)への誓約に反し、ライバルチップメーカーへのSEPライセンスを拒絶した。
2)クアルコムとの特許ライセンスを締結しない端末(スマホ)メーカーに対し、モデムチップ販売を拒絶した。
3)端末メーカーとのライセンス契約において、端末にクアルコムのチップが使われているか、クアルコムのライバル社製チップが使われているかに関係なく、端末をベースとした高額ロイヤルティを課した。

地裁の事実認定および法律上の結論
クアルコムは、
1)自社SEPをライバルのチップサプライヤーにもライセンスする反トラスト法上の義務があった。
2)ロイヤルティレートを操作することにより実質的にライバルメーカーのチップに付加額を上乗せすることで、反競争的行為に従事した。

クアルコムが執行停止を求めている地裁の差止め命令

  • クアルコムはライバルメーカーに対しても、権利消尽効果をもつライセンスを供与すること
  • クアルコムは特許ライセンスの締結をモデムチップ供給の条件としてはならない。そのうえで、顧客と交渉/再交渉しなければならない。

差止め命令の執行停止に関する判断要素

執行停止を認めるか否かの判断において、以下の要素を検討する。(参照 Nken v. Holder, 556 U.S. 418, 426(2009))
    1. 申立人が本案で勝訴する蓋然性を示したか否か
    2. 執行が停止されない場合に申立人が回復不能の損害(irreparable harm)を受けるか否か
    3. 本件手続きの他方当事者が執行停止により相当の損害を受けるか否か(比較考量)
    4. 執行停止は公益に反さないか
以上の判断要素について検討した結果、当裁判所はクアルコムの一部執行停止申立てを認容する。

控訴裁の判断
 

.............


今回はここまで。次回は差止め命令の執行停止を認めたCA9の判断理由について紹介します。また、判断理由の中でも明記されているFTCとDOJ(司法省)反トラスト局の見解の相違についても触れたいと思います。


8/25/2019  ヨシロー   



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