実戦海外知財法務ノート

トロール/PAE、営業秘密、バイオシミラー、FRANDライセンス、反トラスト法 ...いま、グローバルな知財法務の現場で起こっていることをウォッチします

旧タイトルは『グローバルビジネスに活かす英語 - 海外法務・知財編』。 新タイトルの下、さらに実戦面に焦点を当て、グローバル知財法務の最新動向を追っていきます。

トロール/NPE/PAE/PIPCO

第110話: STRONGER PATENTS AGAIN! あの米特許強化法案が帰ってきた。...背景には世界特許制度ランキング4年連続トップから10位転落への懸念(?)

前回「予告」した "STRONGER PATENTS ACT OF 2017" について、改めてとり上げます。今議会(第115議会, 会期2017 - 2018)では初となる本格的な知財法案です。


法案名(short title): STRONGER PATENTS ACT OF 2017 ("Support Technology and Research for Our Nation’s Growth and Economic Resilience" Patents Act of 2017)

法案番号:S.1390  *「予告」編のときはまだ法案番号は付されていませんでした。

提出日:2017年6月21日

提出者:Christopher Coons上院議員(民主党 デラウェア州選出)
  • 共同提出者:Richard Durbin上院議員(民主党 イリノイ州選出),  Mazie Hirono(民主党 ハワイ州選出), Tom Cotton上院議員(共和党 アーカンソー州選出)    * Coons, Durbin, Hirono上院議員はいずれも第114議会におけるSTRONG Patens Act法案の提出者。今回の法案で共和党のCotton議員が新たに加わっています。

審議状況:2017年6月21日、上院司法委へ回付  (*2017.7.9現在の情報)

法案内容:
2011年特許改革法(America Invents Act)、とりわけ同法に基づく特許庁PTABの付与後手続き(IPR, PGR)がもたらした「意図せざる結果」や一連の最高裁判決による、米国特許制度の弱体化を是正することを目的とする。

たとえば、
  • 特許庁PTABにおけるクレーム解釈基準や無効性証明基準を連邦地裁の基準と揃える(基準の厳格化)。
  • IPR, PGRの申請人適格をより厳しくする。真の利害関係人チェックを厳格に。(*メンバーに代ってIPRを申請するUnified Patentsのようなやり方は難しくなる?)
  • 侵害に対する差し止め救済条件の緩和。特許の有効性と侵害が認定された場合、差し止め救済の要件である「回復不能の損害が生ずること」および「損賠賠償などコモンロー上の救済では不十分であること」が推定される(eBay最高裁判決を実質的に覆す)、他

以下、法案目次で全体を概観しておきます。 

S.1390 — 115th Congress (2017-2018)

TITLE I—STRONGER PATENTS ACT
Sec. 101. Findings.
Sec. 102. Inter partes review.
Sec. 103. Post-grant review.
Sec. 104. Composition of post-grant review and inter partes review panels.
Sec. 105. Reexamination of patents.
Sec. 106. Restoration of patents as property rights.
Sec. 107. Elimination of USPTO fee diversion.
Sec. 108. Infringement of patent.
Sec. 109. Institutions of higher education.
Sec. 110. Assisting small businesses in the U.S. patent system.

TITLE II—TARGETING ROGUE AND OPAQUE LETTERS
Sec. 201. Definitions.
Sec. 202. Unfair or deceptive acts or practices in connection with the assertion
of a United States patent.
Sec. 203. Enforcement by Federal Trade Commission.
Sec. 204. Preemption of State laws on patent demand letters and enforcement
by State attorneys general. 


4年連続トップから10位に転落した「世界特許制度ランキング」とは?

ところで、Coons上院議員は本法案提出理由として以下ように指摘しています。

Why STRONGER Patents ?
  • 過去10年の間になされた変更(連邦最高裁の一連の判決や、特許庁で行われる新たな付与後手続きによる意図せざる結果)によって米国の特許制度が弱体化した。
  • その結果、米国商工会議所によるランキングにおいて、いまや米国の特許制度は10位になってしまった。それまでは常にトップを維持していたのに。
  • このままでは、技術集約型の小規模企業に対する投資家の信頼が損なわれ、イノベーションにおける米国の歴史的優位性も、欧州や中国の後塵を拝することになりかねない....(以下略)


それにしても、「特許制度のランキング」とは... 初めて聞きました。米商工会議所が独自の指標でランク付けし、2017年で5年目になるそうです。当初は11ヵ国で比較していたのが、2017年版では45ヵ国になったとのこと(全世界のGDPの約90%を占める45ヵ国を選択)。
↓ これです。

U.S. Chamber International IP Index | Fifth Edition | February 2017

6つのカテゴリーに分け、カテゴリー毎に設けた指標について点数をつけ、ランキングしています。

カテゴリー
1.特許等
2.著作権等
3.商標等
4.トレードシークレットおよび市場アクセス
5.法執行・エンフォースメント
6.国際条約加盟・批准

たとえば、「特許等」カテゴリーの指標は以下の8項目
  1. 保護期間
  2. 特許性要件
  3. CII(computer-implemented invention)の特許性
  4. 医薬関連特許の権利行使・紛争解決メカニズム
  5. 強制実施許諾の方基準および実績
  6. 医薬特許期間の回復
  7. 規制関連データの保護期間
  8. 特許異議申立て

総合ランキングは米国が1位なのですが、今回、特許等カテゴリーで10位になったわけです。
それぞれを見てみます。

総合(得点)
米国 (32.62)
イギリス (32.39)
ドイツ (31.92)
日本 (31.29)
スウェーデン (30.99)
フランス  (30.87)
スイス  (29.86)
シンガポール  (28.62)
韓国  (28.31)
イタリア (27.73)

特許の部(得点)
イギリス (7.5)
スイス (7.5)
スウェーデン (7.5)
ドイツ (7.5)
フランス (7.5)
日本 (7.3)
スペイン (7.25)
シンガポール (7.25)
イタリア (7.25)
米国 (7.0)


米国は特許の部において何が減点対象となったのか...内訳を見てみましょう。
米商工会議所レポートには国別スコア・コメントのページが用意されています。

保護期間 (1)
特許性要件 (0.75)
CII(computer-implemented invention)の特許性 (1)
医薬関連特許の権利行使・紛争解決メカニズム (1)
強制実施許諾の方基準および実績 (1)
医薬特許期間の回復 (1)
規制関連データの保護期間 (0.75)
特許異議申立て (0.5) 

  • 0.5ポイント減点となった「特許異議申立て」指標は、2017年から新たに加わったもので、「特許付与を遅らせないような制度になっているか」、「公正で透明性ある制度になっているか」が評価されるそうです。...まさにIPRやPGRに対する疑問が反映されたのかもしれません。
  • なお、強制実施は減点対象になっていませんが、eBay判決後の差し止め救済厳格化により、実質的に侵害者に対する強制実施制度が存在しているという指摘(さらにはこれを利用した大企業の「効率的侵害(efficient infringement)」)をよく聞きますが、どうなのでしょうか。 

日本のカテゴリ別スコアやコメントも気になるところですが、この辺りで終えることにします。

このストロンガー特許法案が上下両院を通過し、大統領府へ行くか否か(大統領署名を経て法成立するか否か)まったく予想がつきません。しかし、Make America Great "Innovator" again! を目指す法案だとアピールすれば、トランプ大統領には受ける(かも)。



7/9/2017  ヨシロー





↓ よろしければ一押しお願いします。            

                                                                             

にほんブログ村

                                                    にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ   


                                                                                                                      
 
ビジネス英語 ブログランキングへ

 
                                                                               にほんブログ村 英語ブログ ビジネス英語へ             











第110話・予告: STRONGER PATENTS AGAIN! あの米特許強化法案が帰ってきた。より強力に、超党派法案として

トロール対策の名の下に「国を挙げて米国特許を弱体化させた」流れを逆転させるべく、再びあの法案が、より強化されて提出された。

あの法案とは、前の第114議会で提出されたSTRONG PATENTS ACT OF 2015のこと。当ブログでも紹介しました。 『第31話: 新法案の提出でにわかに熱気を帯びてきた米特許改革論争... 「2015年ストロング特許法」とは』 他 



当時から行き過ぎた「トロール狩り」への懸念が法案提出の根拠になっていましたが、2年後のいま、事態はさらに悪化しているというのが、法案提出議員の認識です。


2017年6月21日に提出された新法案は、STRONGER PATENTS ACT OF 2017


法案提出者は、2015年法案の提出者だったChristopher Coons上院議員(民主党 デラウェア州選出)、Richard Durbin上院議員(民主党 イリノイ州選出)、Mazie Hirono(民主党 ハワイ州選出) に、さらにアーカンソー州選出の共和党議員Tom Cotton上院議員が加わっています。



... 現在、出先で iPhoneで書いているため「予告」にとどめ、後ほど詳しく書くつもりです。


それにしても確かに今回の法案、名称からして "STRONG PATENTS"から "STRONGER PATENTS"へと、文字通り強化されていますね。


6/30/2017  ヨシロー





↓ よろしければ一押しお願いします。            

                                                                           

にほんブログ村

                                                   にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ   


                                                                                                                   
 
ビジネス英語 ブログランキングへ

 
                                                                             にほんブログ村 英語ブログ ビジネス英語へ             

第103話:マイクロソフトが1万件の自社特許を提供してクラウドサービス顧客をトロールから守る... どうやって?

アメリカの知財トピックですが、今回は日経の報道が速かったですね。
マイクロソフト、「特許の怪物」から顧客保護 クラウドで、訴訟リスクを軽減
米マイクロソフトは、保有する知的財産を使い他社を訴えて稼ぐ「パテント・トロール(特許の怪物)」と呼ばれる企業から、クラウドサービスの顧客を守るサービスを始める。顧客企業が訴えられた場合の対抗訴訟に、保有する1万件の関連特許を利用できるようにするのが柱。...日本経済新聞 2/9/2017

これは米マイクロソフトが2月8日に発表した「アジュール・IPアドバンテージ・プログラム」について報じたものです。市場の拡大と共に高まるクラウド分野での特許訴訟リスク、とりわけ特許武装・特許防衛が十分でない新規参入企業をターゲットにするパテントトロールの脅威 ... このように危険な世界において、マイクロソフトの「アジュール」技術ユーザー様は、クラウド分野においても強大な特許ポートフォリオを構築しているマイクロソフトの「特許の傘」でお守りします。... 大よそこのような趣旨のことをいっているのだと思います。

確かにあれだけ多くの特許をもっている会社がバックアップしてくれるなら心強い、とうなずきたくなりますが、具体的にどうサポートしてもらえるのでしょうか。実際にトロールから訴えられたら、あるいは警告状が届いたら(最近は warning letter ではなく、demand letter というようですね)、どうするのでしょうか。まさか、届いた訴状や警告状をポンとマイクロソフトに渡し、「あとはよろしくお願いします」ということではないですよね。

公表されているプログラム内容を読んでみました。


アジュール・IPアドバンテージ・プログラム - 3つの提案

Microsoft Azure IP Advantage を見ると、特許リスク対応として3部構成の提案が示されています。
  1. アジュール顧客向け「補償」の拡大(Build confidently with uncapped indemnification
  2. マイクロソフト特許ポートフォリオの防衛的利用(Deter and defend lawsuits with patent pick)
  3. トロールからアジュール顧客を守るライセンス(Get broad protection with a springing license)

1.は、元々マイクロソフト固有のアジュール技術を使用したことに対し侵害訴訟が提起された場合に顧客を補償する現行条件を拡大して、アジュールサービスに組み込まれたオープンソース技術に対する訴訟にも、上限なしの補償条項を適用するというもの。特別な手続きの必要なく、アジュール顧客には自動的に適用されることになります。

2.が、トロールなどに侵害を主張された際に、マイクロソフトの1万件の特許ポートフォリオを利用できるというものですね。ところで "patent pick"ということばが使われていますが、これはなんでしょう。実は、2.の"patent pick"と3.の"springing license"には利用条件が定められており、別途"Microsoft Azure IP Advantage Benefit Terms and Conditions"というものが用意されています。それによると、

1万件の特許ポートフォリオすべてを利用できるのではなく、顧客が特許侵害訴訟を提起された場合、6ヵ月以内にポートフォリオリストから1件の特許を選択し、この特許の購入要望書をマイクロソフトに提出すること(§4.1)。その後、顧客はマイクロソフトとこの1件の特許について、あくまで防衛目的で侵害訴訟を提起してきた原告に対して利用することができる。特許を購入するに際し、顧客は原告が購入特許を侵害していると確信していること(§4.2(c))


1万件の特許ポートフォリオ利用の真実

ここまで読むと、思わず「えー、そうなんだ」と声が出ました。ここでもう明らかですが、この1万件の特許(実際はこのうち1件を選択する)はトロール対策としては使えないですね。トロールに訴えられても、自ら製造行為等をしていないトロール/NPEに対しては、自社特許の侵害を主張して対抗できない ...これこそ、トロールのトロールたるゆえんなのですから。

マイクロソフトが用意したアジュールプログラムのFAQを読んでいくと、正にこの点に触れたものがありました。

Q:"patent pick"の目的はなんですか。

A:訴訟を提起されたときに防衛目的で使用できるワールドクラスの重要特許ポートフォリオへのアクセスを顧客に提供することにより、事業会社がアジュール技術を利用する顧客を特許侵害で訴えることを抑止することです(to deter operating companies from suing Azure cutomers ...)。

もうひとつ、Terms and Conditions に§4.4. No Assistanceという規定があります。1万件の特許からどれを選択するかにおいてマイクロソフトは一切の援助や指針を提供することはない、と明示規定してあります。それはそうですよね。数多くの顧客に対し、ひとつひとつそこまでは面倒を見られない...。


結 論

アジュールIPアドバンテージ・プログラムの少なくとも"patent pick"はトロール対策向けではない。むしろ、拡大された"indemnification"がトロールをも包含した権利主張をカバーするものとなる。何を利用するにせよ、このプログラムを最大限有効利用できるためには、顧客・ユーザー自身が有能な専門家と打ち合わせ、理解を深め、万全の準備を整える必要あり、ということになりますね。


他に "springing license"についても触れたいことがあるのですが、ここまでとしておきます。


2/12/2017  ヨシロー  


↓ よろしければ一押しお願いします。            

                                                                 

にほんブログ村

                                             にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ   


                                                                                                 
 
ビジネス英語 ブログランキングへ

 
                                                                 にほんブログ村 英語ブログ ビジネス英語へ          




 

第101話(続き):トロール/PAEに特許を供給する行為は独禁法違反? - 再燃するノキア vs アップルの訴訟合戦で問われる"privateering"行為の適否

アップルにより反競争的共謀行為として反トラスト法違反を主張された"privateering"という行為について、もう少しみてゆきます。

"privateering"に対する賛否両論

[批判派]
第101話
で参照したFOSS Patentsブログ運営者のFlorian Mueller氏は、"privateering"反対派の代表格ということができるでしょう。彼は、アップルの反トラスト訴訟について、「このような訴訟を誰かが提起することをずっと待ち望んでいた」といいます。

実際、Mueller氏は2015年5月、FOSS Patentsにおいて、ノキアを始めとする"privateering"従事企業を公表し、「パテントトロール/PAEを肥えさせている事業会社の実名公表キャンペーン」を展開したのです。(”Privateering: let's name and shame companies that feed patent trolls -- please help complete the list" FOSS Patents 5/12/2015)(ちなみに、privateeringを行った企業のひとつとしてアップル名も公表されています)

[賛成派]
このキャンペーンに対してすぐに異論を唱えたのが、同じく第101話で紹介したiamブログのRichard Lloyd氏です。("There is nothing wrong with privateering; patent owners are entitled to maximise the value of their assets" Richard Lloyd, iam 5/19/2015) トロール/PAEならぬ事業会社が自ら開発し、取得した特許の価値を最大化しようとするのは当然の行為であり、どのように最大化するかは自由なのではないか、というわけです。

そもそも "privateering"ということばを使うこと自体に最初から偏見が入っている。実際に行われているのは、"outsourcing"である、という声もあります。(この辺りは、昨年10月に米FTC(連邦取引委員会)が発表したFTC研究レポートの中で、「パテントトロールということばは有用でない」として、”PAE”という呼称を使うことにしたのと似た面があります。c.f. 『第98話:ついに出た、米FTCの「トロール」分析レポート。遅きに失したのか、待望の提言書か』 10/17/2016)

今回の反トラスト法訴訟についても、Lloyd氏は次のように指摘します。
≪privateeringは市場に非効率性をもたらすというが、ライセンスを受けることに抵抗し、引き延ばしのため訴訟戦術をとる企業の方がより問題である。また、忘れてはならないことは、ノキアがAcaciaとConversantその他に移転した特許は、ノキア自身による巨額なR&D投資の結果創り出したもの。発明をした者が自らの苦労の成果をどのように利用するかについて制約を受けるようなことになれば、投資する動機がなくなってしまう≫ ("Apple’s anti-privateering push against Nokia looks like a litigation play rather than a serious challenge" Richard Lloyd, iam blog 1/6/2017)


訴訟作戦ブックに新たな戦術が加わった(?)

いずれにせよ、両氏が一致しているのは、今回のアップルによる反トラスト法訴訟はこれまでにはなかった新たな争い方を示すものであるということ。

Mueller氏は、待ち望んでいたこの訴訟がどうか和解で終結しないで欲しいとコメントし、Lloyd氏は、とにかく今回の訴訟が、特許訴訟における作戦ブックに新たな戦術を加えたことは確か、といいます。


訴状構成

最後に訴状原文中の小見出しを抽出してみました。法案などもそうですが、小見出しの順番やそれぞれの関係について注意しながら抽出すると、それだけで結構ストーリーが見えてきます。プリントアウトした訴状を見ながらretypeするのですが、少々骨が折れます...そこで、さらに和文にしようと思いましたが、原文のままにしました(タイプミスがあったらご容赦。気づいたら直します)

COMPLAINT

INTRODUCTION 
THE PARTIES 
JURISDICTION AND VENUE 
INTRADISTRICT ASSIGNMENT 
 
ACACIA'S AND CONVERSANT'S ANTICOMPETITIVE PATENT TRANSFER SCHEME WITH NOKIA 
 
 I. Acasia, Conversant, and Other PAEs Partner with Nokia in an Anticompetitive and Illegal Patent Transfer Scheme 
 
 II. Diffusing Patents as an Anticompetitive Scheme 
 
 III. Anticompetitive Effects in Relevant Markets from Nokia's, Acasia's, and Conversant's Anticompetitive Patent Transfer Scheme 
  A. Patent Technology Markets and Market/Monolopy Power Therein 
  B. The Overall Anticompetitive Patent Diffusion Scheme 
  C. Nokia's and Acacia's Conspiracy to Anticompetitively Diffuse Patents 
  D. Nokia's and Acacia's Evasion of Nokia's FRAND Licensing Commitments 
       1. Standard-Setting Confers Monopoly Power on Owners of Declared SEPs 
 2. FRAND Licensing Commitments: Essential Safeguards and Prerequites to Standardizing Patened Technology 
 3. Nokia's FRAND Commitments Are Binding Contractual Obligations that Transfer with SEPs 
 4. Acacia's and Nokia's Use of Patent Transfers to Facilitate Breaches of FRAND Obligations 
   E. Conversant's and Nokia's Conspiracy to Engage in Similar Anticompetitive Conduct 
   F. Nokia Has Enlisted Other PAE Conspirators in Anticompetitive Schemes 
 1. Nokia's Coodination with Vringo 
 2. Nokia's Coodination with Sisvel 
 3. Nokia's Coodination with Inventergy 
 
 IV. Acacia's and Conversant's Conspiracy With Nokia Harm Apple, the Cellular Industry, and Consumers 

COUNT I.   
 BREACH OF FRAND CONTRACT 
COUNT II. 
 ACACIA-NOKIA, CORE WIRELESS-NOKIA AGREEMENTS TO RESTRAIN COMPETITION IN CELLULAR TECHNOLOGY LICENSING (SECTION 1 OF SHERMAN ACT) 
COUNT III. 
 UNLAWFUL ASSET ACQUISITION (SECTION 7 OF CLAYTON ACT) 
COUNT IV. 
 CONSPIRACIES TO MONOPOLIZE THE SEP TECHNOLOGY MARKET (SECTION 2 OF SHERMAN ACT) 
COUNT V. 
 UNFAIR COMPETITION UNDER CAL. BUS. & PROF.CODE §17200 

RELIEF SOUGHT 



1/9/2017  ヨシロー 


↓ よろしければ一押しお願いします。            

                                                            

にほんブログ村

                                          にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ   


                                                                                        
 
ビジネス英語 ブログランキングへ

 
                                                           にほんブログ村 英語ブログ ビジネス英語へ          




 

第101話: トロール/PAEに特許を供給する行為は独禁法違反? - 再燃するノキア vs アップルの訴訟合戦で問われる"privateering"行為の適否

2016年暮れ、ノキア社とアップル社の特許訴訟トピックが広く報じられました。12月21日、ノキアは同社が保有するスマホ関連特許をアップルが侵害しているとして、ドイツのデュッセルドルフ、マンハイム、ミュンヘン連邦地裁および米テキサス東部地区連邦地裁に訴訟を提起しました。

一方アップルは、一日前の2016年12月20日に「ノキア陣営」を訴えていたのです。アップルはノキアの特許権譲渡を受けていたAcacia Research Corp.とConversant Intellectual Property Management Inc.他による反トラスト法違反を主張して、カリフォルニア北部地区連邦地裁に提訴しました。

両社は2009年にもスマホ関連特許の侵害訴訟を互いに提起し、2011年に和解、ライセンス契約を締結していたため、今回は「訴訟合戦の再燃か」という報道も目立ちました。確かに2011年のライセンス契約から尾を引いている訴訟という意味では「再燃」ですが、5年後のいまノキア側の状況も変わり、両社の攻防にも新たな、興味深い論点が加わっています。... "privateering"です。


アップルが攻撃するノキアの "privateering"行為とは

今回の反トラスト法訴訟を "privateering"ということばを使って紹介している専門家ブログ記事をみてみます。

  1. "Enough is enough: Apple files antitrust complaint against multiple Nokia privateers" (Florian Mueller, FOSS Patents 12/21/2016)  *FOSS Patentsは知財の世界で高名なブログのひとつ。今回の内外報道でも、Mueller氏によるブログ記事を引用しているものが結構ありました。ただしMueller氏によれば、Appleによる反トラスト法訴訟を最初に報じたのは"PatentlyApple"とのこと。
  2.  "Apple now suing Nokia itself on antitrust grounds; Nokia suing Apple over 40 patents in 11 countries" (Florian Mueller, FOSS Patents 12/22/2016)  *タイトルに"privateering"は出てこないのですが、本文冒頭にすぐ出てきます。→ "Yesterday, Apple's antitrust lawsuit in the Northern District of California against certain Nokia privateers (patent assertion entities that Nokia has fed with patents) became known...."
  3. "Apple’s anti-privateering push against Nokia looks like a litigation play rather than a serious challenge" (Richard Lloyd, iam blog 1/6/2017)

辞書で意味を見ると、"privateer"=「(戦時、政府から許可を得た民間の)私拿捕(だほ)船、私掠(しりゃく)船」とあります。これをもじって、「(主に事業会社である)特許権者から特許を与えられたPAE(Patent Assertion Entities)/トロール」を意味しているようです。

そこで、"privateering"とは「(主に事業会社である)特許権者が、自社特許をPAE/トロールに売却する行為」であり、そこではPAE/トロールがpatent assertion行為によりこの特許をマネタイズしてゆくことが前提になっているようです。

以上を前提に、アップルが今回の反トラスト法訴訟で主張していることをみてみます。

  • ノキアは2011年の和解に基づくクロスライセンス契約の際に、同契約ではカバーされないという「分離された」特許("divested" patents)のリストを提供してきた。なぜこれらの特許を契約対象から外したかについての説明はなかった。
  • 実際はこれらの分離された特許は、AcaciaやConversantを始めとするPAEに移転され、その後アップルを含む複数企業に対する高額ロイヤルティ請求に使われた。
  • さらにこれらの特許の中には、ノキアがFRAND宣言をしている標準必須特許(SEP)も含まれており、AcaciaやConversantに移転することによりFRAND義務を不当に逃れ、高額請求の対象にしている。
  • ノキアとAcaciaらの特許移転契約では、Acaciaが獲得したロイヤルティや和解額の多くの部分をノキアが受領する権利を保持するになっており、ノキアだけでは得られなかったロイヤルティよりはるかに多くを不当に得ようとしていたことは明らかである。 

なお、上記FOSS Patentsブログ記事2.では、アップルの当初の訴状ではノキア自身は被告になっていなかったものの、間もなく被告として追加される見込みであることが指摘されています。


とりあえず本日はここまで。次回(第101話・続き)は、「"privateering"に対する賛否両論」と「訴状の全体構成」(小見出しまとめ...これだけでもアップルの主張がかなり見えてきます)を紹介するつもりです。


1/8/2017  ヨシロー 新年あけましておめでとうございます。穏やかなお正月で何よりでした。



↓ よろしければ一押しお願いします。            

                                                            

にほんブログ村

                                          にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ   


                                                                                        
 
ビジネス英語 ブログランキングへ

 
                                                           にほんブログ村 英語ブログ ビジネス英語へ          





第98話・続き:ついに出た、米FTCの「トロール」分析レポート。遅きに失したのか、待望の提言書か --- EUでも出た「PAEレポート」

第98話続きです。FTCは 22のPAE(Patent Assertion Entity)と、彼らの関連会社 2500社以上を調査対象とし、 2009年1月から2014年9月半ばまでの活動を精査しました(今回の調査では、公開情報だけでなく、FTCの権限に基づき収集した非公開情報も検討したということです)。

2種類のPAE - ニューサンス訴訟への対処

その結果、PAEのビジネスモデルは、 "Portfolio PAE"(「ポートフォリオPAE」) "Litigation PAE"(「リティゲーション(訴訟)PAE」)という2種類に分けることができると結論しました。 

レポートでは次のように説明しています。(Executive Summary "Key Findings"より)  
    • ポートフォリオPAE -  大きなポートフォリオ(しばしば数百、数千件の特許から成る)を対象とするライセンス交渉をしてくる。最初に侵害訴訟を仕掛けることは少ない。ライセンス対価は百万ドル単位になるのが通例。今回の調査対象となったライセンス案件中、ポートフォリオPAEによるライセンス案件数は9%に過ぎないが、対価額は全体の80%、約32億ドルに及ぶ。
    • リティゲーションPAE - まず潜在的ライセンシーを訴え、その後短期間で和解し、ライセンス契約を締結する。彼らのポートフォリオは小さく、特許10件以下の場合も少なくない。ライセンスの対価は合計で30万ドル未満であることがリティゲーションPAEの典型例。ある試算によれば(AIPLA 2013 Report of the Economic Survey)、30万ドルとは、特許侵害訴訟手続きの初期段階で要する防御費用のほぼ下限の額に相当する。このように、比較的低額のライセンス対価に鑑みると、リティゲーションPAEの行為は「ニューサンス訴訟( nuisance litigation)」に相当するといえる。
 
そのうえでFTCは、リティゲーションPAEによる「ニューサンス訴訟」*への対応が必要だといいます。

《特許権を守るうえで侵害訴訟は重要な役割を果たすものであり、堅固な司法制度によって特許法への尊重が促進されることは、FTCも認識している。しかしながら、ニューサンス侵害訴訟は、司法資源に負担をかけ、また生産的なビジネス行動からの逸脱を招くなどの可能性がある。これらのバランスに配慮しつつ、FTCは以下の改革を提言する。
    1. PAE訴訟におけるディスカバリ負担と費用の非対称性へ対処すること
    2. 侵害訴訟を提起した原告について、さらなる情報を裁判所と被告に提供すること
    3. 同一理論に基づいて被告に提起された複数訴訟を簡素化すること
    4. 裁判所が特許事件における訴答要件を厳格化し続けるなかで、これらの侵害理論に関する十分な通知を提供すること》

* "nuisance litigation"
調べたところ日本語の定訳が見当たりません。"public nuisance"(公的不法妨害)や "private nuisance"(私的不法妨害)といった法律用語はあるようですが、その一部を使い「不法妨害訴訟」とすると意味が違ってきそうですので、そのままカタカナにしておきました。いくつか文献にあたってみると、次のような意味をもつようです。 
 
≪原告の主張が弱い、あるいは実体のないものであることを、原告被告の双方が認識しているにもかかわらず、和解により得られる価値を目的に提起される訴訟。被告が、最後まで戦えば勝訴する可能性が高いことを知りつつも、高い訴訟費用を秤にかけ、和解金を支払ってしまうという現実が背景にある≫ 
今回のFTCレポートでは、30万ドルという額を "nuisance litigation"判断の目安としているようです(後に紹介する通り、これは複数の専門家に徹底的に非難されていますが)。 
 

FTCレポートへのコメント、批判、評価

FTCレポートの内容紹介はここまでにして(「さわり」のみですが)、レポートに対する専門家の各種コメントを取り上げておきます。辛辣な批判か、コメントなしで概要のみを紹介するものが大半で、称賛はあまり見当たりません。

a) 「一定の評価」派

"FTC releases report on PAE Activity, recognizes important role of enforcing patents" (Steve Brachmann & Gene Quinn, ipwatchdog 10/6/2016) 
- FTCレポートを真っ先に紹介。この段階では、「レポート内容に新味はないものの、FTCが問題を認識してくれたこと自体に意義あり。とりわけ、正当な特許権行使者まで『パテントトロール』という語で一括りにし、排除しようとする風潮にくぎを刺した点に価値あり」と比較的レポートに好意的だったのです(後に一変)。 

"Lies, Damn Lies and Media Bias: Fortune Misrepresents FTC Report on Patent Assertion Entities" (Gene Quinn & Steve Brachmann, ipwatchdog 10/13/2016) 
- 上記記事の二人。FTCの意図(特許権行使者すべてを悪者扱いすることを戒め、それぞれのビジネスモデルに基づきPAEを2タイプに分け、「パテントトロール」ということばの使用を「有用でない」として排除)を、「まったく理解しない」フォーチュン誌の記事に噛みついている。そのフォーチュン記事とは、

⇒ "FTC Patent Report Calls for Reform to Nuisance Lawsuits - The FTC Has Some Harsh Words for Patent Trolls" (Jeff John Roberts Fortune 10/6/2016)
- 私も標題のとおり、あえて「トロール」ということばを入れましたが、あくまで「あえて」であり、「」つきのトロールです。ところがフォーチュンの記事を読むと、確かに "トロール"、"PAE"、"NPE"の語が混在し、何らの区別なしに使われているのです。

まあ、一般経済誌にそこまで専門的な理解を望むのは無理があるのではとも思いますが、両弁護士にとっては「やっと政府の認識がここまできたというのに、いい加減にしてくれ!」という気持ちなのかもしれません。


b)「批判」派 --- 「遅すぎる、時代遅れになってしまった」

"The FTC report on PAEs was published yesterday, but is probably already out of date" (Richard Lloyd, iam-magazine blog, 10/7/2016)
- 前出ipwatchdog記事と同様、レポート発表後すぐに出されたコメント。FTCの改革提言はすでに議会や裁判所で議論されたあるいは実現済みのものばかり、また調査対象のPAEも22ではあまりに少ない、と厳しい批判が並びます。調査対象の少なさについては、クアルコム、ドルビーラボラトリーズ、Tesseraなどのハイテク企業をメンバーとするInnovation Allianceも「非常にがっかりした」とのコメントを発表しているとのこと。

Richard Lloyd氏のレポートが指摘するFTCレポートのその他の問題点。

  • 30万ドル未満のライセンス対価をニューサンス訴訟の目安とすることの問題点。--- 30万ドル未満の和解ケースにニューサンス訴訟が多いのも事実だろうが、現実にはすべての特許が数億ドルの価値をもつわけではない。逆に多くの特許は、より低額のライセンス対価となる。(Villanova University Michael Risch法学教授のコメント引用)
  • FTCレポートでは権利行使者(PAE)の側面のみを対象にしているが、侵害者側についての調査なし。--- 大企業による「効率的侵害」などの問題には触れていない。
  • 2009年1月から2014年9月のPAE活動が対象では、いまの実態に即さず。--- 現在の米国におけるPAEの権利行使環境を非常に厳しくした最高裁Alice判決(2014年6月)や、特許庁におけるIPR(2013年9月施行)の本格的影響が出てきたのは、調査対象期間を過ぎた後の話。

特に30万ドル未満のライセンス対価のニューサンス訴訟目安については、前出ipwatchdogブログを運営するGene Quinn弁護士らが、「特許取引の実態を知らない役所が余計なことを言うな」と、徹底批判を展開しています。

"Why should litigation costs of the infringer be relevant to determine if a license is fair or just a nuisance?" (Gene Quinn, ipwatchdog, 10/18/2016)
ー 確かに今回のFTCレポートには独禁法の観点からは何らの指摘もなく、専ら特許法関連の分析が展開されているのです。それにしても、当初の「一定の意義あり」という評価が一変しています。激しいです。


c) 「賞賛」派

もちろん、FTCの労作に対する評価もきちんとされています。ただ、全面的賞賛ではなく、「一定の評価」派に近いかもしれません。 

"Tech GCs Cheer FTC Report on Patent Assertion" (Jennifer Williams-Alvarez, Corporate Counsel, 10/14/2016)
ー 「このレポートは、とにかく、改革のためのよい出発点となるもの。陰に隠れがちなPAE問題に日の光を当ててくれた」(Mark Chandler, general counsel at Cisco Systems Inc. )など。


欧州からも出た! PAEレポート

続編を書くのが遅れているうちに、欧州でもPAEレポートが出たという知らせが入りました。正確な日付はわかりませんが、FTCレポートの2,3週間後、2016年10月後半のようです。 (注:11/4/2016発行でした)

レポートタイトルは、"Patent Assertion Entities in Europe" 全150頁

EUPAEreport2016


統一特許裁判所制度の下で出現する可能性のあるPAEについて検討したもの。
 
・ハイクオリティ特許
・特許所有に関する透明性
・FRANDライセンスとSEPのさらなる明確化、

がPAE対策のカギになるということです。


"High Quality Patents Could Keep Patent Trolls In Check In Europe, EU Report Finds" (William New, Intellectual Property Watch, 10/27/2016)
"Europe is no place to be a patent troll, concludes new Commission report" (Joff Wild iam-magazine blog, 10/28/2016)
 
これで米欧と揃いました。日本でも経産省がNPE研究に乗り出したとの報道がありました。2017年あたりには日米欧三極のPAEレポートが揃うのでしょうか。

 

11/6/2016  ヨシロー 

   
↓ よろしければ一押しお願いします。            

              

ビジネス英語 ブログランキングへ

 
                                                        にほんブログ村 英語ブログ ビジネス英語へ                                                      
にほんブログ村

                                        にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ   


                                                                                   









第98話:ついに出た、米FTCの「トロール」分析レポート。遅きに失したのか、待望の提言書か

2、3年前までは、ときどき会うアメリカ人弁護士と「FTC(連邦取引委員会)がかなり踏み込んでやっているというパテントトロール問題の調査・研究レポート、そろそろ出ますかな」などと話していました。そのうち、話題にさえならなくなり、すっかり忘れていたら、... 出ました。2016年10月6日木曜日です。

 "Patent Assertion Entity Activity - AN FTC STUDY
  Federal Trade Commission October 2016

FTCPAEreport


全269頁(うち本文146頁、残りはAppendix)の大作です。とりあえず構成(目次抜粋)は以下の通りです。

- Table of Contents -

Executive Summary and Recommendations
Chapter 1: Introduction and Background
  ・Definition of a Patent Assertion Entity
  ・Legal Framework for PAE Activity
  ・Prior Studies of PAE Activity ... 
Chapter 2: PAE Organization and Structure
Chapter 3: Patent Assertion
Chapter 4: Wireless Case Study
Chapter 5: Patent Characteristics

Appendix A: Glossary of Frequently Used Terms
Appendix B: Methodology
Appendix C: PAE Special Order
Appendix D: Wireless Case Study Special Order


「いいトロール、悪いトロール?」 混乱を招いた曖昧な定義

当ブログ標題ではつい「パテントトロール」ということばを使ってしまいましたが、今回のFTCレポートは一貫して "PAE"(Patent Assertion Entity)ということばを使っています。FTCは、レポート第1章の冒頭で"PAE"について定義し、この問題を論ずるうえで定義を明らかにしておくことがいかに重要であるかを強調しています。

確かに、いわゆる「パテントトロール」問題は、常にその定義の曖昧さによって議論がぶれ、混乱が繰り返し生じていたと思います。2000年代には、「...自らは実施せず、権利行使により金を得るのがトロールならば、大学や研究機関はどうなるのか。彼らは『いいトロール』ということか...」「侵害訴訟の脅威を与えてライセンスを受けさせるというなら、IBMなど大手事業会社の多くもパテントトロールだ...」など、矛先が定まらないという感じでした。 

一方、"NPE"(Non Practicing Entity)という用語にしても、「トロールという蔑称に対し、中立的で、適切な用語だとは思うが、特許や権利の意味合いが全く含まれておらず、わかりにくい」といった指摘がありました。

さらに、最近では、特許権行使をする者すべて、真摯に権利行使をしようとする特許権者も含め「パテントトロール」のレッテルを貼り、自らの侵害行為を正当化しようとする(主に大手事業会社の)「効率的侵害(efficient infringing)」ということばさえ聞かれるようになってきました。(cf.『第67話:「大企業による『効率的侵害』を助長しかねない特許改革法案」- NYタイムズの痛烈な批判に専門家の評価は?』(11/8/2015))


「トロール」より「PAE」 再定義と論点の明確化 

このような歴史に照らせば、FTCが今回のレポートにおいて、真に問題とすべき行為者を定義し、混在していた呼び名について整理したことは、かなり意義のあることといえるようです(いまだに「トロール」で一括りにしてしまう私にとっても)。

第1章 導入及び背景
Patent Assertion Entityの定義

当委員会が本レポートその他において用いる"Patent Assertion Entity"(PAE)ということばは、主に特許を獲得し、侵害被疑者に権利主張することによって収益を得ることを求める企業のことをいう。PAEということば自体が示す通り、特許出願手続きを経て特許庁から獲得するのではなく、第三者から取得した特許の権利主張をすることが彼らのビジネスモデルである......。

2011年のレポート("The Evolving IP Marketplace: Aligning Patent Notice and Remedies with Competition")において、当委員会は "patent assertion entity" やPAEということばを使い、主に特許技術の開発と他者への権利移転を求めるという別のタイプのNPEと区別した。ここでいう別タイプのNPE例としては、大学や半導体設計会社が挙げられる。

...当委員会は、「パテントトロール」といった呼び名は、特許権主張行為(patent assertion activity)に向かわせるそれぞれのビジネスモデルに対する理解なしに、かかる行為の社会的影響について予め決めつけてしまうという意味で、有用ではないと判断する。
(*下線、ヨシロー)


このような考えの下、FTCは22のPAEと彼らの関連会社2500社以上を調査対象とし、2009年1月から2014年9月半ばまでの活動を精査。その結果、PAEのビジネスモデルは次の2種類に分けることができると結論しました。

・Portfolio PAE
・Litigation PAE


これについては、レポート第2章に詳細が説明されています。

Chapter 2: PAE ORGANIZATION AND STRUCTURE
 ・Introduction
 ・Two Models of PAE Behavior: Portfolio PAE and Litigation PAEs
 ・Some Litigation PAEs Comprised Multiple Affiliates
 ・Transparency Issues with Multi-Affiliate Structures  

「ポートフォリオ PAE」と「リティゲーション(訴訟)PAE」...FTCがそれぞれのビジネスモデルをどう区別し、どう評価したのか。次回「第98話・続き」でもう少し詳しく取り上げたいと思います。


10/17/2016 ヨシロー 

 







プロフィール

花村ヨシロー

記事検索
最新記事
  • ライブドアブログ