実戦海外知財法務ノート

トロール/PAE、営業秘密、バイオシミラー、FRANDライセンス、反トラスト法 ...いま、グローバルな知財法務の現場で起こっていることをウォッチします

旧タイトルは『グローバルビジネスに活かす英語 - 海外法務・知財編』。 新タイトルの下、さらに実戦面に焦点を当て、グローバル知財法務の最新動向を追っていきます。

新興国知財・法務

第23話:インド競争法の知的財産適用除外 - 外国親会社の保有権利ではダメ?

自動車用スペアパーツに関するインド競争委員会(Competition Commission of India: CCI)の2014年8月25日付命令書に示された知的財産適用除外について、気になった点を改めて見てゆきます。⇒ 『第22話:米司法省が日本企業に10億ドル以上の罰金 ‐ 中国、インドも当局の動きが活発に』参照

以下、CCI命令書p.185 "Availability of the IPR exemption under Section 3(5)(i) of the Act"パートより

競争法第3条(5)(i)は、インドの特許法、著作権法などによって与えられた権利(知的財産権)への侵害を権利者が抑止する権利、あるいは知的財産権を守るために必要な合理的制限を課す権利は、本法(競争法)によって制限されることはない、と定めています。

Section 3(5) in the Competition Act, 2002

(5) Nothing contained in this section shall restrict— 
(i) the right of any person to restrain any infringement of, or to impose reasonable conditions, as may be necessary for protecting any of his rights which have been or may be conferred upon him under: 
  (a) the Copyright Act, 1957 (14 of 1957); 
  (b) the Patents Act, 1970 (39 of 1970); ...... 

CCIは、第3条(5)(i)に基づく適用除外を主張した自動車メーカーに対し、「彼らが当該スペアパーツに関しインドにおいて保有する知的財産権の状況について明確にする機会を与えたが、これを証明する文書を提出する者はなかった」といいます。また、いくつかの意匠や特許が主張されることはあっても、「それがカバーする具体的スペアパーツの詳細は提示されていない」といいます。

The Commssion has noted that none of the OEMs(本件自動車メーカーの総称) have submitted the relevant documentary evidence to successfully establish the grant of the applicable IPRs, in India, with respet to the various spare parts pusuant to which such OEMs have claimed the exemption under section 3(5)(i) of the Act. 

さらに、「我々が主張しているインド知的財産権は、海外の親会社によって有効に保有されており、その財産的技術は技術移転契約(TTA)により我々に移転されている」という自動車メーカー(インド現法)の主張も、CCIは受け入れませんでした。理由はこうです。

本件自動車メーカーの親会社が認可された知財権を保有しているとしても、本法第3条(5)(i)で列挙する各法の規定に基づきかかる知財権が当該自動車メーカーに認可されない限り、TTAによってインド法人に認可されることはありえない。すなわち、本件自動車メーカーは、TTAによって親会社が保有する知財権を実施する権利を保有するものであって、知財権自体を保有しているわけではない。したがって、本件自動車メーカーがインド競争法第3条(5)(i)で定める適用除外を援用することはできない。(下線 ヨシロー) 

..., even if the parent corporation of the OEMs held such rights in the territories where such rights were originally granted, the same cannot be granted upon the OEMs operating in India by entering into a TTA, unless such rights have been granted upon the OEMs pursuant to the provisions of the statutes specified under section 3(5)(i) of the Act.  Thus, OEMs pursuant to a TTA were holding a right to exploit a particular IPR held by its parent corporation and not the IPR right itself.   Consequently, such OEMs could not avail of the exemption provided in section 3(5)(i) of the Act....

これはどうなんでしょう。現地法人自身が知財権を保有しなければ、インド競争法の知財適用除外を援用できない、といっているんですよね。 ー 外国の親会社と現地法人どちらが特許を保有・管理するかについて、各社様々な要素を検討のうえ外国の親会社が保有・管理しているケースが多いと聞きます。インド競争法の観点からは、現地法人に保有させた方がいい、ということなのでしょうか。

この部分に関するコメンタリーをまだインド内外でほとんど見かけないのですが、あまり問題ではないのでしょうか? 私自身はよくわからないのですが、引き続き注視してゆくつもりです。

1/27/2015 ヨシロー


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第22話:米司法省が日本企業に10億ドル以上の罰金 - 中国、インドも当局の動きが活発に

朝日新聞(2015.1.24夕刊)によると、米司法省が2014年9月までの会計年度中の1年間に18億6100万ドル(約2192億円)の罰金を集めたと22日に発表。『このうち、罰金が多かった5社はいずれも自動車部品のカルテルへの関与で有罪を認めた日本企業で、5社だけで10億ドル(約1178億円)を超えた』そうです。

情報武装するための英語力アップを目論む本ブログとしては、即、米司法省の発表原文をチェックです。
...それにしても便利な時代になりました。昔は(「ふた昔」前以上)、このような報道に接して原文を見たい場合、「朝日新聞に連絡して原文をいただけるか相談しようか」とか、「つき合いのあるアメリカの法律事務所に入手をお願いしようか。でも入手のためにいくら請求されるか、怖いな...」などと、思い悩む必要があったのでした。 

ともかく米司法省(DOJ:Department of Justice)のホームページへ行くと、ありました


司法省・反トラスト局(Antitrust Division)のプレス発表


FOR IMMEDIATE RELEASE    AT THURSDAY, JANUARY 22, 2015    
 
ANTITRUST DIVISION ANNOUNCES FISCAL YEAR TOTAL 
IN CRIMINAL FINES COLLECTED 
 
The Department of Justice collected $1.861 billion in criminal fines and penalties resulting from Antitrust Division prosecutions in the fiscal year that ended on Sept. 30, 2014.  Contributing in part to one of the largest yearly collections for the division, five of the companies paid in full penalties that exceeded $100 million, including a $425 million criminal fine levied against Bridgestone Corp., the fourth-largest fine the Antitrust Division has ever obtained.  The second-largest fine collected was a $195 million criminal fine levied against Hitachi Automotive Systems Ltd.  The three additional companies that paid fines and penalties exceeding $100 million were Mitsubishi Electric Corp. with $190 million, Toyo Tire & Rubber Co. Ltd. with $120 million and JTEKT Corp. with $103.2 million.  The collection total also includes penalties of more than $561 million received as a result of the division’s LIBOR investigation, which has been conducted in cooperation with the Justice Department’s Criminal Division.  ......

朝日新聞の報道は、DOJ発表の日本企業関連部分をほぼそのまま紹介しています。このDOJ発表は他に、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)レートの不正操作に対する調査の結果徴収した罰金の5億6100万ドル、禁固刑の平均期間(21の個人に対し、平均26ヵ月)を開示し、今後もアメリカ消費者のために悪と闘う決意表明で締めくくられています。


2014年に見られた中国、インド当局の活発な動き

自動車部品メーカーに対する独禁法当局の調査・取り締まりといえば、2014年夏の中国とインド当局の動きがまだまだ記憶に新しいですね。例えば、
 
過去最大、日本車部品メーカーに中国が制裁金 10社に200億円
中国の独占禁止法当局は20日、デンソーや三菱電機、矢崎総業、日本精工など日本の自動車部品メーカー12社に独禁法違反があったと認定し、10社に合計12億3500万元(約200億円)の制裁金を支払うよう命じたと発表した。価格カルテルを結ぶなど業界ぐるみで自動車部品の価格をつり上げる不正行為があったと判断。海外企業を対象にした中国の独禁法違反では過去最大の摘発となった≫日本経済新聞 2014/8/20 

 ≪インド、独禁法違反で自動車14社に制裁金-ホンダやトヨタも 
インドの独占禁止当局は、国内外の自動車メーカーが予備部品の販売について競争を妨げたと認定し、14社に対し計254億ルピー(約440億円)の制裁金を科した。中国でも独占禁止法違反について業界の調査が行われている≫ ブルームバーグ 2014/8/26


インドにおける競争法 - 知的財産適用除外

インド独禁法当局であるインド競争委員会(Competition Commission of India: CCI)が2014/8/25に下した命令書は全215頁。すべては読んでいないのですが、国内および外資系自動車メーカーが純正スペアパーツの販売や修理サービスを認定ディーラーに限定し、オープン市場で扱われることを制限した。それによりスペアパーツの価格や修理サービスの料金を不当に釣り上げたことがインド独禁法(「競争法」Competition Act, 2002)に違反すると認定されています。

215頁もある命令書の内容をここですべて紹介することはできない(スペースだけでなく、知識・能力もない)ので、個人的に最も関心のある「インド競争法の知的財産権適用除外」について少し触れておきます(CCI命令書p.185 "Availability of the IPR exemption under Section 3(5)(i) of the Act"という小見出しパート)。

競争法第3条(5)(i)は、インドの特許法、著作権法などによって与えられた権利(知的財産権)への侵害を権利者が抑止する権利、あるいは知的財産権を守るために必要な合理的制限を課す権利は、本法(競争法)によって制限されることはない、と定めています。

Section 3(5) in the Competition Act, 2002

(5) Nothing contained in this section shall restrict— 
(i) the right of any person to restrain any infringement of, or to impose reasonable conditions, as may be necessary for protecting any of his rights which have been or may be conferred upon him under: 
  (a) the Copyright Act, 1957 (14 of 1957); 
  (b) the Patents Act, 1970 (39 of 1970); ...... 
特に日米欧の外資系自動車メーカーは知的財産保護に対する適用除外規定に依拠したのですが、CCIはこれを認めませんでした。その理由は、...... 

長くなりそうなので、やはりこのトピックは第23話として改めて取り上げることにします。

1/26/2015 ヨシロー



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第11話:中国シャオミのスマホ一時販売禁止 - 「フランドリー」なインドの暫定差し止め(?)

前回取り上げた中国のスマホ特許/独禁法事件に続き、今回はインドのスマホ特許訴訟です。

中国スマホ新興メーカー「小米科技(シャオミ)」に対するインド・デリー高等法院(Delhi High Court)の暫定差し止め命令が、今週末以降(12/12/2014~)日本でも広く報道されました。報道の対象となったのは12/8/2014にデリー高裁が下した命令で、特許侵害訴訟を提起していた原告エリクソンによる暫定差し止め請求を認めてたものです。

ちなみにその後の最新情報では、差止め命令を不服として上訴した(デリー高等法院の単独裁判官が下した暫定差止め命令の取り消しを同法院判事の合議体に求めた)シャオミが、上訴手続き中は差止め命令の執行を停止するよう求め、これが12月16日に認められたということです。

これでシャオミによるスマホの輸入・販売は、まずは2015年2月3日まで特定の条件下で許されることになりました。この条件の一つが、エリクソンのライセンシーであるクアルコムのチップセットを使用したものであることとされています。... 前回取り上げた中国におけるクアルコムのスマホ特許・独禁法事件に出てきた「リバース・パテントライセンス」を思い出してしまいます(『中国独禁当局、クアルコムの調査終了 - スマホ特許訴訟が激化?』)。また、この条件については、「権利消尽」(exhaustion of patent rights/ first sale doctrine)の問題を指摘する声もあります。.....混乱するので、ここでは書きません。

話を元に戻します。報道の多くは、「急成長しつつも、まだまだ保有特許が少ない(特許武装が不十分な)シャオミにとって、パテントウォーが渦巻くスマホの世界にはかなり厳しい試練が待っているだろう」という論調だったと思います。

一方で、今回の訴訟には移動通信などの標準技術を対象とした「標準必須特許(Standard Essential Patents)」が対象となっており、このSEPという性質の特許について、インドの裁判所が即決で暫定差し止め命令(ex parte injunction)を認めた、という側面があります。

ここは、「情報武装をするための英語ブログ」ですので、これらのキーワードに上手いヒネリを加えて紹介しているネタを紹介します。これです。

FRAND-ly Injunctions from India: Has Ex Parte Become the "Standard"?  (SpicyIP 12/9/2014 Shamnad Basheer)


元来、「公正、合理的かつ非差別的な」"FRAND(Fair, Reasonable and Non Discriminatory)"ライセンスが条件とされている標準必須特許について、一方当事者の主張だけに基づく(片面的手続き = ex parte)差し止めをインドの裁判所が簡単に認めすぎる。SEP権利者に対し「フレンドリー」過ぎるのではないか、暫定差し止めを認めることがインドの「スタンダード(標準)」になってしまったのか、と揶揄しているのです。ぜひ本文を読んでください。(今回はタイトルだけ)

SpicyIPというのは、インドの知財法専門家、アナリストのグループが運営しているサイトで、ブログはほぼ毎日更新され、最新情報を鋭い視点で提供してくれます。かなり優秀で、かつ実戦志向も強い人々が精力的に運営しているのだろうなと感心してしまいます。

12/18/2014 ヨシロー



 
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