2005年01月17日

室内楽の楽しみ(7)――V. ノヴァーク『ピアノ五重奏曲』

b2ad2bf1.jpgVitezslav NOVAK
PIANO QUINTET IN A MINOR, Op.12
STRING QUARTET IN G MAJOR, Op. 22
(SUPRAPHON)

先日ご紹介したマルティヌーと同じチェコの作曲家です。
しかし、作風はまったくと言っていいほど違っている。
ノヴァークの作品の場合、ドイツ・オーストリア系のロマン派の誰かの名前を出して、その人の作曲と言っても、まず分らないでしょう(ピアノ五重奏曲の場合、第3楽章のテーマに強い民族的な色彩があるから、ここで分ってしまうかも)。
1870年生れのノヴァークと、マルティヌー(1890-1959)との20歳の年齢の違いが、この作風の相違を作っているだけではないんでしょうね。
片や、プラハ音楽院でドヴォルザークに学び、チェコを終生離れずプラハ音楽院で教職についていたという経歴、片や、パリで当時流行の新古典主義に触れ、後に渡米するといった経歴。際立った違いです。
このような経歴が、やはり作風の違いにも表れている。

さて、ノヴァークですが、ドヴォルザーク以上にドヴォルザーク的。しかも、より洗練されている。
小生は、ドヴォルザークよりノヴァークの方を買いますね。だって、こっちの方が上品だもの。田舎臭くない。
原因は、民族的旋律の処理と見ました。
実例を、ピアノ五重奏曲で見てみましょう。
第1楽章の冒頭、ピアノとチェロの出だしは、民族的というより完全にブラームス的、沈潜した激情とでもいいましょうか、その基調がこの楽章を通します。ピアノで歌われる第2主題もけっして吹き上げはしない。作曲家の抑制が効いています。
第2楽章の主題は、やや民族的色彩を持っています。弦楽パートのみで憂愁に満ちた旋律が、次々に受け渡されて行く。変奏になって、やっとピアノが伴奏で参加。この辺り、ドヴォルザークだったら、もっと歌い上げるところでしょうね。それが、適度に抑えられている。それがポイントでしょう。
第3楽章が、先程述べたように、一番民族的なところ。弾んだリズムの民謡的な旋律をヴァイオリンが提示します。しかし、ここでも田舎臭くならないのは、各楽器の旋律のやりとりで、なかなか洒落た受け渡し方をするから。

ドイツ・オーストリア系の音楽(しかもロマン主義)の影響を多大に受けつつも、民族的要素をどのように取り入れて行くかが、おそらく国民楽派のテーマだったのでしょう。その中で、世間的にもっとも成功したのがドヴォルザーク。しかし、それは必ずしも音楽的な成功ではないと思います。
そういう意味からすれば、このノヴァークなどはもっと評価されてもいいのじゃあないか。しみじみと心にしみてくる、いい楽曲だと思いますよ。
「心にしみる」、これもやはり「室内楽の楽しみ」の一つです。
ippusai at 15:59│Comments(0)TrackBack(0)室内楽 

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