2014年07月31日

小川洋子『博士の愛した数式』を読んだ

【ネタバレ】愛にも色々ある。私と博士の友愛、義姉が博士を陰で見守る愛、博士のルート(私の息子)への無償の愛。そうした愛と数学がからまり、真実の愛とは何かを紡ぎだす人間劇が優しく温かい。憶えていることが幸せなのか、忘れてしまうことが幸せなのか、どちらも幸せなことだと小川さんは言っているのだろう。1−1=0、eπi+1=0、足しても引いても――憶えていても忘れてしまっても、幸福の総量は変わらない。0があることですべての数字が明確で宏大な宇宙を開く。なんとエレガントな小説でしょうか。一番星5つつの作品に違いない。

博士の愛した江夏の背番号は28。そのまた博士も病気であり一人であっても完全無欠なのだ。ルート11歳の誕生日に絡めてなのか偶然なのか、終編が「11」になっているのが心憎い。なによりも感動したのは、ルートが亡くなってしまった博士の意志――数学を愛する心を受け継ぐという永遠性のほのめかしでしょう。


ああだ、こうだと書くことで心にある感動が消し飛んでしまいそうなので、語りたくない。
言えることは、小川さんの小説は本当に文章が優しく温かいということ。
抒情を詠っていても、それが前後の心理描写になっていたりするので、ページを進めれば進めるほど、
文字が心に沁み込んでくるのを感じられる。

やっぱり芥川賞をとっただけの作家であります。
というかそれ以前に発想が素晴らしく、テーマが重厚なのに、
深刻さを感じさせないユーモア感は一級品。



分からないのは恥ではなく、新たな真理への道標だった。彼にとって、手付かずの予想がそこにある事実を教えるのは、既に証明された定理を教えているのと同じくらい重要だった。
頭で納得できなかったり、目で見ないと信じられないという人がいる。
「いやだから信じるしかないんだよ」
これまで何度もそうやって言葉にしてきたけど、この小川さんの言葉は説得力があります。
娑婆世界に必ずある相対性、二面性で考えれば当然の結果なのですが、
そういうものを見落とすのが人間でもあるということ。

それが正しいのか「分からない」、ということは既にその問題に「正解と解決法」が必ず、、存在するということを指すわけですよ。
つまり、全ての物事には真理があり、必ず正しくで善なるものが存在するということ。
ようするに、それこそが「無限大の可能性」であるということです。
なんとも素晴らしい逆説的思考なんでしょうか。

数学が面白いという人は、やはりこういう思考を持てやすいのじゃないでしょうか。
数学者が何年も同じ定理に向き合える動機はいったいどこから出てくるのだろうか?
なんどもそう考えてきたが、なんだかすっきりした。

私が何度も何度も「物事は二面的」と訴えてきた意味はそういうことなんですけど、
まあ理解されてこなかったですね(笑)

でもその二面のうちのどっちが正しいかどうかなんてわかんないじゃん。
そう言うんでしょ。だから、間違いない正しさはそのどっちもが正しいし、
TPOによって容易に入れ替わるから、どっちも正しいんだから、善悪一如と信じれば(受け入れれば)、
絶対に間違いようがないんですよ。
ずーっとそう言ってきたんです。言い疲れてますけどね。

理論としてはこんなシンプルなことはないんですけど、
フフフ、言うは易し、行うは……だ(笑)

結局、創価の看板を外したり、議論をやめた理由はそこですしね。
物事は多面的であり、その全ての面が実は真実であるということを、相手がわかってないと、
二面性の一面にだけ拘り、喧嘩にしかならないからですよ。
「私は絶対に正しい」、そう思い込んでいる人との意見交換に、価値を見いだせなかったからなんですよ。

この政策が正しいと思う、いやそう政策じゃだめだ。
問題はそこじゃないんですよ。大事なのは心の奥底に平和を祈る強い一念があるかどうか。
そこを見ずして、表面だけで意見を交換してもね、あんまり意味はないんですよ。
もっとも、ちゃんとしている人というのは、「時」を見極め、
TPOにあった発言をしているわけだが、普通、そういうものは感情論や派閥だとかに押し流されて、
見向きもされないんだなぁ。
結局ね、政府がこうもだらしがないのはさ、国民大衆がだらしないから、政府もだらしないだけでしょ。

誰だったか言ってましたね。
国民は自分たちに見合った政府しか持てない。――とね。
だから愚衆政治だと言ったんだよ。それの何が間違ってるんだろうね。
立憲国家じゃない日本と言ったんですよ(笑)

そして、人の意見なんかを見極めて、私は誰派だよと表明する。
まあ、こんなズル賢い生き方はありません。ようするに「付和雷同」。
誰それがそう言ってるなら正しいだろう。自分なんてありはしない。
自分の頭でなんか何一つ考えていないくせに、正しいことを言っていると悦に入る。
それも誰かが言いだしたのに便乗してだ。どこに創造性があるんだ? ないよね。
でも偉そうにする。
私のもっとも嫌いなタイプだ(笑)。


正解を得た時に感じるのは、喜びや解放ではなく、静けさなのだった。
なんてシンプルな言葉で真理を表現しているのだろうか! さすがだ。
歓喜とか嬉しいとかいう言葉を、良く使うのだが、
実は違うんだよね、本当の幸福って。
静か、静謐、静穏、――そう「現世安穏」。静かであることが善なんですよ。
でも停止してない、すべては動いています。そこが味噌(笑)
調和、バランス、平衡、――自然。
あらゆるものが動いていながらも、心がけばだつことはない。
これこそが平和なんですね。

川は流れ、雲は流れ、鳥は鳴き、花は咲き、風は吹く、――自然。これが平和。
そのための活動や行動は必要だが、
まあ人間は大概において、乱している。やらなくていい事をやってる。それも自ら進んで。

静穏な自分であること。大事なのはこれですね。
いえば、怒らないでいること(笑)


「真実の直線はどこにあるか、それはここにしかない」
博士は自分の胸に手を当てた。(中略)
物質にも自然現象にも感情にも左右されない、永遠の真実は、目には見えないのだ。

いうべきこと、ナナナ、ナッシング!

紙の上に直線を引いた瞬間、それは直線ではなくなるんです。
どんな細い直線であっても、線に幅というものが出来てしまうからです。
ゆえに、真実の直線は――という意味。


博士に聞けばすぐ教えてくれるだろうに、そうしなかったのは、一人でじっくり向き合った方が、意味することをより深く理解できるのではないか、という予感がしたからだった。
えてして、予感とか直感というものは正しい。S・ジョブズなんかもそう言ってましたね。
なぜ自ら孤独を選んできたのか。答えはこういうところにあるんだけど、一般的に理解されなーい。
外に出て(人に会って)、「自分探し」をするのと、内に篭って(孤独になって)「自分探し」をするのは同じなんですよ。
でも、大概、孤独を選ぶと、私のように馬鹿にされ、だからお前は駄目なんだと言われるわけ。
もう笑っちゃうよね。

要は、中とか外とか関係ないんですよ。
自分は一体何をしたいんだ? 何者なんだ? この自分にいったい何が出来るんだ?
それを探し出し、確かめ、確信することこそが重大であるということ。
これが目的。あくまでも会うとか会わないとか、孤独でいるとかは、「手段」なんですよ。

多くの人に囲まれれば囲まれるほど、よほど、冷静沈着に自分を見つめていない限り、
他人の意見に翻弄されるんですよ。
だったら、一人で考えたほうが価値的でしょ。
基本、信心だってそうなってるんですよ。
勤行・唱題するのは、あくまで自分一人だ。とてつもなく孤独ですよ。
その時に何を考えているかでしょ、問題は。どう祈っているかでしょ。
その基本を適当にして、人に会ったって価値は生まれない。
あくまでも、仏・法・僧ですよ。会っていくのは、自分一人で真理を見つけ出しても、
それを(たとえば数学であれば、数式として)証明しないことには、真理でも何でもないからですよ。
私がここで、偉そうなことを、書いている意味はそういうことなんですよ。
書くことで、外に出すことで、見えてくるものがあるからです。

人に会っていくのは、自分が御本尊の前で感じた、真理が真実かどうか確かめるためでしょ。
だから、外に打って出る、外部の人に会っていくんじゃないですか。
同じ土俵の上にいる会員同士で、確認しあうのなんて簡単だからですよ。
(それさえも結構困難だったりしますけどね:笑 ようは内外とか会員非会員とか、
関係ないんですよ。ましてや、ネットのようなあらゆる人が見る場所ではね)

内部・当事者同士であれば、わりかし容易に認めあえ、御本尊の前で感じた心理が真実であるかどうかを
確かめようさえないこともあるでしょう。
下手をしたら、淋しさの埋め合わせに会合に出る場合だってあるんじゃないですか。
あと義務感とかね。おかしいよね。
そういうことを指摘している記事を見たことがない。おかしいんだよなぁ(笑)
指摘しなくても、いんですけどね。大事なのは正しい軌道に乗るためのヒントがあるかどうかですから。


ただ単に正確な答えを示すだけではく、質問した相手に誇りを与えることができた。
これはとても大事なこと。
相手のレベルに合わせて質問するのではなく、時間はかかっても価値ある質問をするべきだという意味。
そのことが、結果として相手を最高に敬うことになるからという考え。素敵。
いわゆる釈尊の聞き(訊き)上手という意味は、こういうことを言っているのだろう。


あらん限りの愛情を傾けた対象が真実の姿を現し、こちらに振り向いてくれた途端、慎み深く、無口になる。自分がどれくらいの情熱を注ぎこんだか訴えもしなければ、見返りを要求することもしない。

これが本物の菩薩。

それが本当に完全であるかどうかを確認した後は、ただ静かに歩みを先へ進めるだけです。

独り犀のように歩めばいいんです。
心は深い湖のように不動で、澄んでいればいいのです。




『博士の愛した数式』。今のところ、今年読んだ中で一番感動した一冊かな。
認知症の問題とかもね、変に深刻に書かれている本を読むより、
こういうものの見方もあるのだと知ることが大切なんだと思った。

前向き。いい言葉だなあ。

小川洋子『薬指の標本』の感想はこちら

ipsilon at 11:41  
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