2018年12月29日

プラトン(ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』より抜粋)

プラトンの見出した重要な論理といえば、やはり「イデア論」なのだが、これを説明するのは面倒なので、そのまま抜粋してしまうが、そこは読み手が、「ということはイデア論というのは、こういう概念だな」と考えてみて欲しい。


哲学者は、よく言われるように、永遠で不変な何かをとらえようとするよね。たとえば今ここにあるしゃぼん玉について哲学的な文章を書くのは、あんまり意味のあることではないだろうな。その理由は、しゃぼん玉はふっと消えてしまうからきちんと研究できない、ということがまず一つ。二つめの理由は、誰も見ていない、ほんの数秒だけのものについて書かれた哲学的な文章を人に買ってもらうのは、たぶんむずかしからだ。

プラトンは、ぼくたちが身の回りの自然に見ているものはすべて、そう、ぼくたちが手でつかんだりさわったりできるものはすべて、しゃぼん玉のようなものと考えた。なぜなら、感覚世界にあるものはすべて、しゃぼん玉のようなものはすべて、つかのまのものでしかないからだ。きみはもちろん、人間も動物も遅かれ早かれおとろえてついには死ぬ、ということを知っている。けれども大理石のかたまりだってくずれ、ゆっくりと朽ちていく。(中略)

プラトンのポイントは、ぼくたちはぜったいに、変化するものについてたしかな知を手に入れることはない、ということだった。感覚世界のもの、つまりつかんだりさわったりできるものについては、ぼくたちはあいまいな「意見ドクサ」しかもてない。ぼくたちが、「たしかな知エピステーメー」をもてるものは、理性でとらえられることだけについてだけなのだ。


つまり、プラトンはこの理性によって捉えられる、永遠普遍性をもつような概念をイデアと名づけたわけだ。
けど、われわれ一般人は、「概念」といわれてもよくわからなかったりする。

わたしなりに、この抜粋部分を説明するならこうなる。
感覚世界、つまり五感で捉えられるものは、すべて「流れ去る」ものであり、諸行無常であるのだから、確たる基準を設定してそれをもとにして断定したり量ることは決してできない。だから、この世間、巷でいわれる現実というものは、理性や永遠普遍という確固たる基準から見れば、夢まぼろしに過ぎないのだ、ということだ。
そして残念なことに、多くの人々は、その夢まぼろしのような現実こそ重要なんだという妄想に囚われて、一生涯夢まぼろしを追いかけて終わってしまうというわけ。

では理性、つまり思考や記憶といった意識にもとづいて生きるということはどういうことか?
ひとことでいえば、この感覚世界のものはすべて不完全であると見切りをつけることだ。
なるだけ完全な意識の世界に生きようとするということだ。感覚世界にあっては、その感覚を維持するだけでこと足りる、つまり生命(感覚)を維持するために必要なのこれだけというように、「足ることを知って」生きればいいのだ。

感覚世界、つまり物理的にある円や球は完全な円や球であろうか? 否だ。
いかに精密に円や球を物理的に作ろうとしたところで、微細ではあっても必ずゆがみが生じるからだ。
したがって、完全性をもった円や球は、人間が意識をもって思考した概念の中にしか存在しえないということだ。
だから、五感が捉える世界は常に不完全であり、意識が描ける概念の世界は、完全性や永遠普遍性が非常に高いということだ。

線とは何か? 線とは二つの点を結んだものである。
これをこの現実世界と呼ばれる感覚世界で物理的に表現できるだろうか? 不可能だ。
なぜなら、この世界では、点をうった瞬間に点は点でなくなり、面になってしまうからだ。
したがって、完全な点や線はわれわれの意識の中の概念でしか、きちんと表現できないものなのだ。

いい換えるとこうなる。
われわれが感覚世界で見たり触ったりして、それが円であるとか球であると思える原因は、すでに意識(思考と記憶)という場所に、完全な円や球の概念が存在し、現実にあるボールを見ることでそうした意識が呼び起こされ、「ああ、これは円だね」と判断しているというのが、プラトンのイデア論の核だということだ。
現実にある丸いもの見て、それを円だと決めたのではなく、すでに意識の中にそういう概念がもとからあったから、丸いものを円だと名づけ、定義できたというのが彼のイデア論なのだ。
このイデア論が正しいと思えるなら、生れてきて死ぬとしても、決して失われないものはあると思えるんじゃないですか?
であるならば、過剰に現実に執着することもなくなり、死への恐怖も払拭できるんじゃないですか?

さて、五感に頼り、五感で感じる快楽に生きることと、理性でもって生きること、どちらが賢明かはもう判断できることだろう。

とはいえわれわれ人間の場合、意識世界は感覚世界からの情報によって作られるので、理性が素晴らしいといって、感覚世界をすべて捨ててしまうわけにもいかないのだ。感覚世界と意識世界が繋がっているので、非常にやっかいな性質をもっているといえるのだ。

この感覚世界と意識世界を説明するために、プラトンは、本体と影の関係で説明している。また数学という論理と目で見たり手で触れられる現象と対比して説明しているというわけだ。
愚かな人は、影を見ているのに、それが本体だと勘違いして、一生涯、確実に掴めもしない影を追いかけている、と。
だが、影を追いかけている当の本人は影が本体だと思いこんでいるので、そのように批判されると、いきり立って怒るわけだ。しかも、絶対数からいうと、影が本体だと思いこんでいる人たちのほうが多いから、真理を述べる哲学者や宗教家は迫害され、酷い場合には殺害されてきたということだ。

釈迦が感覚世界だけに生きることは、酒に酔っているようなものと言ったのは、このようなことに気づいていたからだ。
日蓮も、一応はそのように言っているわけだ。

仏法は体のごとし世間は影のごとし体曲れば影ななめなり

――とね。

そして、こうしたことをきちんと弁えていれば、政治だのなんだのという感覚にもとづいて行われていることが、いかに取るに足らない、執着すべきでないことかは理解できるということだ。世間で起こっていることにいちいち腹を立てて批評批判するとか、やっきになって論争することは、ほとんど無意味だとわかるということだ。

では、理性世界のことを議論すればいいかというと、これも違う。
なぜかなら、理性世界のことは、相当部分は形而上の概念であるからだ。
つまり、感覚世界にしろ、理性世界にしろ、論争すべきようなことは何一つないというのが、釈迦の考えたことといって過言はないだろう。

理性と一口にいっても、個人的な差もあるのだから、人間はきちんと理性的な論争をすることなど、そもそも出来ないということだ。
唯一そうしたことができるとしたら、自問自答という範疇においてのみだということだ。
みながみな理性(良心)でもって自問自答して生きていれば、論争や争いも決して起こらない、平安な世界が現出するというわけだ。

もちろん、先に述べたとおり人間の場合、感覚世界と意識世界はどちらも血と肉でできた肉体に宿っているので、その境界線が曖昧であり、一体不二であるから、理性的に生きるということは、ここまでは感覚であり、ここからは理性という線引きをきちんと行ってるかということが、問われているのだろう。
つまり、人間としてよりよく生きようと思うなら、感覚と理性を調和するように制御することが要求されるのだ。

ipsilon at 11:02コメント(0) 

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