2018年12月30日

ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』

いやはや、素晴らしい本です。
4、5年前に読んだのだが、まったく違う感動や発見があって、とても楽しめた。
まああれです。読んでない人はすぐにでも読みなされ! と言いたくなる一冊です。

児童文学の範囲に入る作品だが、世界35か国語に翻訳されているほどのベストセラーであり、児童文学でいうなら、エンデの『モモ』『はてしない物語』についで、世界中で読まれている作品なのだそうだから。
しかし、ゴルデルの本音は14歳以上の大人に読んでもらいたいとのこと。
なぜって、大人は先入観の塊になっていて、あるがままにとか、柔軟にものを見れなくなってるからだそうだ。
生涯、子どもの感覚をもっていることが大事だということなのだろう。

あまりにも感じたことが多くて、困り果ててしまうのだが、少しばかり。
読書メーターの感想に長文を書くのは気がひけるので。

とにかく構成が素晴らしい。
冒頭から少しづつ進むミステリー風の小説部分は、はじめのうちは、いらないんじゃないと思えるのだが、この小説部分が中盤から壮大な展開になり、濃厚な意味をもちはじめる。そしてそれがそのまま、われわれの「存在」とはなにか? につながり、カント哲学で最高に盛り上がるあたりまで読めば、あとはもう勢いにまかせて読めるであろう作品だ。

いってしまえば、カント哲学が繙かれる場面にあわせて、恐らくわれわれが最も気になる問い、
「われわれは神に作られた操り人形であるのか? 自由意志はないのか? あるのか?」という問いを突き付けてくるというわけだ。

カント哲学以降は、この自由を様々な哲学者がどう考えたかが繙かれ、最後にはコペンハーゲン解釈、あるとかないといった「存在論」の答えは、量子力学の世界では「どちらともいえない」ということが証明されていると伝えてくる。実際の作品の中では、そういう答えを文字にはしてませんけどね。
でも、哲学史や物理学史をある程度知っている人なら、なぜ作中にコペンハーゲンを出してきたのかは洞察できるようになっているというわけだ。
ちなみに、コペンハーゲン解釈をいい換えるなら、「思考は現実化する」ということだ。

この世界はすべて二面性があって善悪とか生死があるように見える。
善が素晴らしくて、悪はどうしようもないも。あなたがそう思考すれば、あなたにとって世界はそうなる。世界の半分は素晴らしいが、世界の半分は、あなたにとって汚らわしくなるということ。
善はいいもの。悪も反面教師にして学べばいいもの。そう見れば、世界はまるごといいものになるというわけ。

wikiにある、コペンハーゲン解釈をよく読んでみればいい。そう書いてありますから。
量子力学の状態は、いくつかの異なる状態の重ね合わせで表現される。このことを、どちらの状態であるとも言及できないと解釈し、観測すると観測値に対応する状態に変化する(波束の収縮が起こる)と解釈する。

「観測者に対応する状態に変化する」ってのは、「思考は現実化する」と同義ですからね。
脳細胞の中でおこってる思考も、ミクロの視点でみれば、素粒子の運動ですからね。

ともあれ、『ソフィーの世界』の話に戻るが、これはまた、そのままわれわれと、われわれの見ている世界が「あるともないともいえない」ということこそが真実である。つまり、真実はわからない、その人が自分にいいように考えればいいということにであるわけだ。

もっとも、なんでも勝手に考えれられるわけではなく、人間の理性には限界があるのだが……。
そしてその限界をおおよそ提示したのがカントなのだから、やはりこの作品が最高潮に盛り上がるのはカント哲学が語られるあたりなのだろう。

われわれの理性は時間と空間というものさしで縛られた状態でしかものを認識できないにはじまり、われわれはものそれ自体を知ることはできないとか、われわれの理性にはものごとを因果律で見る能力が生まれつきあるために、すべてを因果で見てしまうが、決して知れないものそれ自体には因果律を適用できないとか、まあカントはやっぱ凄いわ……と唸ってしまったわけだ。

われわれは、一応デカルトが言ったように「自分がここにある」ということは感知できるが、われわれの身の回りのものは感知できないわけで、それはわれわれの感覚が作りあげた、印象でしかないとかね。
まあ、このことこそが一番驚愕すべきことなのだが……。
つまり、自分が生きているということは誰でもまず間違いなく感じられるが、他人が生きているのかどうかを知ることは決してできないということだからだ。
他人というのは、自分の意識にのぼった印象にすぎないからだ。

だって触れれば相手の体温感じるだろ!! バカかお前はと言いたいんでしょ。
その感じているのは、自分の手にある細胞が温度を感じとってるだけであって、あくまでもあなたの感覚があなたにもたらすものであり、相手がどのくらいの体温なのかは知れてるわけじゃないでしょ。

んま、こいうことは何度も書いてきたし、訴えてきたが、ほとんどの人は、深刻に受けとりもしないし、考えもしなかったみたいですがねぇ……。

でも、ヨースタイン・ゴルデルは違う。
本作の中でも環境世界ってのは夢みたいなものと書いているし、最後のガーデンパーティーが夏至に開かれるあたりの表現も心憎いのだ。

夏至、すなわちmidsummer。つまり、この世界で起こってることは、真夏の世の夢みたいなもんだよ。
この世界で確実なのは、あなたの感覚と感覚が捉えたものではあるが、それはあなた自身に対してしか適用できないというわけ。
夏至は一年で一番昼が長くなる日だが、北半球がそうなら、南半球では一番昼が短い日でもあるわけだ。
つまり、夏至は本当のところ「どちらともいえない」という例の一つだってわけ。
また夏至を聖ヨハネの夜ともいっているが、ヨハネは神イエスが生まれる前に現れた人で、神が現れることの暗示たる人だったわけだ。つまりゴルデルは聖ヨハネの夜で、神もけっきょく人間がつくった概念なんだろうけどねと、自分の考えを暗示しているわけだ。
ゴルデルさんは、芸が細かいんですね。

これらを知ったうえでどう生きるか、それが問題なのだ。
この世界はあるのか、ないのか。それが問題なのだ。
to be or not to be, that is the question. というわけだ。

んまあ、結論をいえばどう考えたっていいんですがね。
どう考えようが自由。
ただし、思考は現実化するということをお忘れなく!
けれども、思考(意識)には二種類あって、意識、無意識があり、実は自分が本当に望んでいるのは、無意識にあるらしいので、無意識を見ることが大事らしいですけどね。
まあ、そのあたりも『ソフィーの世界』は、フロイトを持ちだしてぬかりなく触れているので、読んでみるといいですよ。


人は可能性に対して常に開かれた存在である。かつそのうえで、可能性を理解(それが可能か不可能かを判断)することを任された存在だ
(ハイデガー)


ipsilon at 23:10コメント(0) 

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