初読み


なかなか読む時間がなかったのだけど…ようやく読了。


伊坂幸太郎さん
『夜の国のクーパー』


これは猫と戦争、そして何より、世界の秘密についてのおはなし

どこか
不思議に
なつかしいような、

誰もがまったく
読んだこと
ない、

そんな破格の小説をお届けします。


帯にはこんな文句が、シンメトリックに謳われている。何ともお洒落な作りで、一目惚れで買ってしまった。

喋る猫、何故だかわからず、それと対話する人間、不思議な“ふたり”の会話を中心に物語りが進む。

とても個人的な話だが、僕は猫を1匹飼っている。時々、その猫にはこちらの言葉が通じているような節もあり、そういった下地があるからか、凄くナチュラルにその不思議な状況に溶け込めた。

メルヘンチックでファンタジック。それでいてリアリズムに溢れていて、伊坂幸太郎さんならではのアプローチで、とても考えさせられてしまう。

【トム】という名の猫が主人公で、この猫が物語りを引っ張る。一方、もうひとりの主人公は、40歳・公務員。妻に浮気をされて現実逃避に逃げ出した先で遭難した【僕】。

【トム】の住む場所は大変な自体に直面しており、助けを求めに出た先で【僕】と出会う。

東京創元社の書き下ろしな訳だから、当然あるであろうカラクリは影を潜め、危機的状況も語り部が猫なものだから牧歌的で心地好い。途中で大概の読者であれば

「嗚呼、成程。そういうことか」

…と気付くはず。「ヤラれた」と舌を巻くというより、「ニヤリ」とさせられる仕掛けは、個人的には凄く好きだった。

伊坂幸太郎さん特有の、胸の熱くなる、子供にも読ませたい作品。でも、本当は、まだまだ若者だという自意識を持つ僕等の世代や、僕等の親の世代が読むべき作品かも知れない。そして、政治家の皆さんも。この作品には、オブラートで幾重にも包まれているが、痛烈な問題提起が潜んでいるような気がする。


一気読み度★★★☆☆
意外性度 ★★★★☆
感動度  ★★★☆☆
満足度  ★★★★☆

天才的なシチュエーションですね。

喋る猫と話す僕。

猫の欠伸に対するアプローチなんか、読んでいてもうキュンキュンしてしまいました。猫って、可愛いですよね。その猫が一生懸命に話し、走り、考え、また話し、走り、そして考える。大活躍なはずなのに、何故かいい加減な感じで、何処か適当で、他人事な雰囲気で…。

伊坂幸太郎さんの作品で良く出て来るのが

1.頼もしいお父さん
2.逞しい彼女
3.愛嬌ある彼女
4.飄々とした友人
5.頼りなくも勇敢な主人公

だいたいこの誰か、はたまた何人かが、緊張感を演出したり、それを緩和したりしながら物語りを彩るんですけど、原点回帰とも言えるような、もうひとつのファクター、【謎の生き物】が出て来ましたね。デビュー作『オーデュボンの祈り』に出て来た【喋るカカシ】のような【喋る猫・トム】。この猫なくしてこの作品はなりたちません。そのくらい味があって良いです。

最近、ここ1ヵ月程は暗い作品や切ない作品ばかりを読んで来ましたので、たまにはこういうのんびりした作品を読むと、心が洗われて良いですね。

読んでるとついつい綻んでしまう頬を、抑えられませんでした。でも、実は結構真面目な内容でもありますので、油断は禁物です。温かな読了感の中に、一抹の危惧を植え付けるこの作品は、好き嫌いが分かれるかも知れませんね。伊坂好きには堪らない作品ですが、伊坂デビューの方は、別の作品から入った方が良いかも知れません。

何はともあれ、可愛い飼い猫に、もう少し喋り掛けるよう、心掛けてみようと思います。