八田雅弘

2014年01月25日

 彼は1981年にSKYという男性デュオで、アリスの堀内孝雄作曲による化粧品のCFソング「君にクラクラ」をスマッシュ・ヒットさせている。
 ただそれが彼本人の望む方向とは違ったのか、後にソロに転身、より男っぽい路線を歩むことになる。Istソロ「Mr.ナーバス」はサウンド的にはシティポップ的なものとクロスオーバーするところも多いものだったが、この2ndでは同時期の尾崎豊や小山卓治の対抗馬とも言うべきストリート・ロック・スタイルになっている。
 編曲は佐藤準。ドラムスは、渡喜敷裕一、山木秀夫、青山純、ベースは岡沢章、高水健司、、ギター北島健二、松原正樹とか、もう錚々たるメンバーが集まっている。ただ、今になって聴き直してそれが良かったか?というとかなり疑問が残ってしまう。プロの隙のないクリアなサウンドが、もちろん80年代半ばというこの時代特有のサウンドでもあるのだけど、作品から緊張感を奪ってしまっている。
 ストリートロックとは本来、長くライヴで磨いてきたものを作品に反映させるというスタイルが一番合っているのだろう。ちょっとラフだけど、仲間(ダチ)感が出てるバンド・サウンドがきっとちょうどいい。
 とは言え「10カウント・ゴングは鳴らすな」という曲では、普通のライヴ・バンドじゃちょっと太刀打ちできないような演奏がかえって聴き所になっている。

 スプリングスティーン「ハングリーハート」というより、尾崎「坂の下に見えたあの街へ」を思い出させる「BAD SHAKIN' LOVE」、これまた尾崎「シェリー」を意識したかのような「ジニー」など、本人の意図じゃなくレーベルの意図かもしれないが、尾崎のファン層へもアピールする狙いは十分あったようにも思う。

 そして、大きなポイントは歌詞。歌の常套句やイージーな英語を、多くの人にわかりやすい表現で使ってしまうと、風化させられる作用が強くなるのだとつくづく思った。その点、佐野、浜田、尾崎、小山といった人たちはいかにその辺に細かく神経をくばる卓越した言葉の遣い手だったか、とあらためて思う。

 80年代的なクリアでまとまりのいいサウンドと、大衆に寄り添い過ぎた言葉遣いがロック・シーンを席巻してゆき、それが「ストリート・ロック」を風化させる要因だったのだと、皮肉にも気づかせてしまう作品でもある。

 実際、この時代以降(80年代中頃〜90年代)に作られた作品を聴いて気恥ずかしくなることがよくあるが、ただ、このアルバムはそういった気持ちにはさせない。それは、アルバム全体通してぶれることなくしっかりと伝わってくる彼の切実で真摯な姿勢があるからだ。

 ちなみに、この印象的なアルバム・タイトルは収録曲とはリンクしていない。なぜか、その後リリースした彼の「星が降る前に」という曲の冒頭に出てくる。
 ちなみにこの曲がアップされているYoutubeには、彼本人と思えるコメント(書き込み)が残されている。もう長い間人前で演奏していないようで、今後もないだろうと書いている。音楽活動をやっていくなかで何か深く思うところがあったのだろう。


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iroh at 12:50コメント(0)トラックバック(0) 
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