2007年11月26日

不毛。(後)

麻雀は運が9、実力が1。

最近流行りの棒テン即リーの雀風を見ていると、本当にそう思う。
与えられた配牌を最短の手順で捌いてゆく。

最も速い手牌を、最も効率よく和了れた者が勝つというのなら、
サイコロが振られた時にはもう勝負がついている道理だ。

 

雀荘の一角で見た、見知らぬ青年の話。
親立直に二向聴から無筋を立て続けに3つ切り飛ばしたり、
後ろで見ていて、おや、と思うような手もあるが、
結果オーライとでも言うべきか、オーラスで2着につけていた。

2000点の出アガリでトップという状況。
西家でこんな配牌。

 赤伍萬六萬九萬一筒二筒三筒三筒四筒七筒九筒七索七索中 ドラ二筒
ツモ中

中々に楽な手だ。
中を一鳴きすれば、確定3900。
四面子一雀頭の目処も立っていて、5分6分はトップを取れそうだ。

だが彼は、麻雀の神様は違った道筋を用意したらしい。
8巡目にして、こんな手牌に脹れあがる。

 伍萬赤伍萬六萬一筒二筒三筒三筒四筒五筒七索七索中中
ツモ中

少しばかり、過剰なツモ。
もっとも真っ直ぐな打ち方ならば打伍萬の立直。
だが、四萬七萬待ちの立直では、出和了りは厳しい。
5200の確定で問題はない。
単純に打伍萬の闇聴で構わないだろう。
私ならばそう打つ。

そんなことを思いながら眺めていた。
7割、8割の人はそう打つのではないだろうか?
誰が打っても変わらないものというのはあるものだ。
それこそ、サイコロが振られ、
山を取り出したときから決まっているような牌の繋がりが。

だが、

「立直」

青年はそう宣言して、牌を曲げる。
おや、ひどいな。
そこまでがっつくか、と思った。

確かに、少し攻撃的に素直に打五で立直も悪くないかもしれない。
トップ目が引いて、ノーテンならば上々。
彼我の差は3000点縮まり、トップは逆転する。
それを嫌って突っ込んで来ても悪くは無い。

そう思い直したが、手牌を見ておやと思う。

 伍萬六萬一筒二筒三筒三筒四筒五筒七索七索中中中
赤伍萬

なるほど、そういうのもあるか、と思う。
伍萬赤伍萬六萬四萬伍萬赤伍萬と持っていれば、普通は伍萬を落とす。
わざわざ赤伍萬のほうを落とす必要も無いだろう。

宣言牌が赤五の立直など
二萬三萬赤伍萬  赤伍萬七萬八萬 からの切り、
あるいは、くっつき聴牌狙いで、他の牌にくっついたとき。
まあ、そんなものだろう。
赤伍萬切りの立直では、三萬七萬は確かに死角だ。

 

数巡後に青年は一萬をツモ切り、
それにあわせたような下家が四萬を切る。
一見、無筋に見えるのだが、四萬七萬待ちは無いとの読みだろう。
うぇ、と微かに下家が洩らした疑問の声が、
数秒後に、妙な感嘆の表情に変わる。

四萬七萬が死角になって、の出和了りだ。
狙っていたのは七萬のはずだが、結果オーライ、まくりトップである。

 

麻雀は運が9、実力が1。
誰が打っても変わらないものというのはあるものだ。

だが、なるほど。
やはり、自分の1で動かせるものというのも、確かにあるのだろう。
卓上で横を向いている赤い牌が、
妙に誇らしげに輝いているように見えた。

 

ランキングに登録しています。人気の麻雀ブログはこちらからどうぞ。

ランキングへ参加しています

 

 



is44 at 23:30│Comments(2)TrackBack(0)clip!麻雀 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by toshi   2007年11月27日 19:50
面白いですね…。あえて、赤五萬切りリーチですか。

自分なら、そのリーチに思いっきりひっかかりそうです。
2. Posted by 人間演算機   2007年11月28日 01:49
>>toshiさん
コメントありがとうございます。
後ろで見ていて、あのお兄さんの赤切り立直は格好良いものでした。
前に出て、かつ他人からの出和了りも拾える。
単純な手なんですけど、実に効果的だと思います。

まあ相手が、
赤5切りなら手の中に5がない、
という発想を持ってくれなければ効果のない手ですが……

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Profile

人間演算機

Recent Comments