先月はゴールデンウィークに合わせた
公開映画が多く、ほぼ毎日映画館に通って
テラフォーマーズ、ルーム、ズートピア
アイアムアヒーロ、シヴィルウォー
を観ました、忙し!

で、今月原稿終わって真っ先にみたのはこちら↓


「古谷実」先生原作のヒメアノ~ルは
生涯ベスト級の漫画です

その実写化作品はどうだったかと言うと
すごい映画でした

コメディとスプラッターのスイッチが曖昧な感じが
少なくとも僕は今まで観たことがない感覚でしたし
原作の二人の主人公をどう映画にまとめるかの
構成が見事でした

まず冒頭からコメディタッチの会話劇がぬるっと始まります
そのまま女性を巡る話の展開ができてきて
忘れた頃、約40分ぐらいにしてようやく映画のタイトルが
表示されます、R15の文字と一緒に...

それが、まず、大変かっこいい、ってのと「こっから先ヤバイから」
って宣言されるわけです、で本当にヤバイ映像になっていきます

この映画を観た誰もが言うように
森田を演じるV6の森田さんがヤバイ
役者としてこんなに魅力的な方だったなんて
失礼ながら知りませんでした

あまり音楽に頼らない感じとか好みだし
随所に見られる秀逸な演出...カレーおいしそうだな...とか
映像もテンポもどれをとってもセンスがよくて
かっこいい良く出来た映画だってことはわかるし
すごい映画みたなーって感想に終始してたでしょう

僕が原作ファンでなければ...
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

一番素直に感じた感想は

あれええええええええええええええええええ!?
原作のテーマ描かないんだあああああああ!?
なんでえええええええええええええ???????

でした

え?なに?
森田は高校の時ひどいイジメを受けたから
快楽殺人鬼になったの???
はああああああああああああああ??????


...何故、僕が原作漫画ヒメアノ~ルが
生涯ベストかと申しますと、この漫画のテーマが
「反社会性人格障害者の悲哀」を描いた作品だからです

快楽殺人鬼の森田は人の首を絞めて殺す
ことにしか生きる意欲が待てない人間です

彼は何故そんなサイコキラーなのかは?
原作では「先天的なもの」として描かれています
つまり生まれた時から彼はそういう人間だと
決まっていたのです

ここが「本当はやさしかった少年がイジメた奴を殺して
人を殺す快楽を覚えてしまった」みたいなものとは
決定的に違う所であり
原作の最大のテーマが矮小化されている所です

確かにいじめっ子への復讐は原作でも一つのきっかけとして
描かれていますが、彼が自分は「普通ではない」と言ってたのは
イジメを受ける前だとはっきり言ってますし
気づいたのは最終回で描かれている通り
田ん道でうずくまって泣いている時です

僕はその最終回を読み終わってから
それ以前とは違う考えをするようになりました

それまでは、実際こういう殺人鬼をニュースで見かけても
「こんな奴死刑になればいい」程度の感想しか思いませんでした
「何でこんなクズのために人の人生が奪われたり
残された家族が不幸にならなければならないんだと」

それは誰しもが「普通」にそう思う所だと思います
ただ、この漫画はその「普通」の尊さを訴える一方で

「なんでお前ら「普通の人」は人の痛みや悲しみに共感できるか
 わかるか?」

「なんでお前ら「普通の人」は人を殺して性的な興奮を
 覚えないかわかるか?」

「それはたまたまだよ、運がよかったからだよ」


そんな叫びのようなものを古谷先生の作品から感じたんです

人それぞれ顔の形が違うように、脳の形もそれぞれ違う
その脳の造形が性格や趣味趣向に影響するのなら
それは身体的特徴の一部ではないでしょうか

近代的な社会はそういった人それぞれの違いを理解し合い
助け合うことを理想としています

しかし、森田のような快楽殺人鬼に近代社会が
差し伸べる手はあるのでしょうか?

そんな奴よりそんな奴による被害者のことを考えるのが当然だし
何より普通の人は人の痛みを理解しない奴のことなんか
理解できない、敵や脅威以外の認識は持てないでしょう

自分だったら、どうにかして檻に閉じ込めるか
社会からいなくなってもらうか
そんなふうにしかできないと思います

じゃあ森田はどうしようもなかったのか?

彼はまず死ぬことを考えました、こんなクズこの世から消えるべきだと
しかし、彼には死ぬ前にどうしてもやりたかったことが一つだけあります

それは、バスケでもサッカーでも宇宙に行くことでもなく
人を絞め殺して性的快感を得ることだったのです
できるだけ多く

いや、僕は偶然にも快楽殺人鬼ではありませんでしたけど
人との違いに悩んだことがある人ならそれが快楽殺人じゃなくても
理解できる部分もあるんじゃないでしょうか

「別に俺が選んでこうなったわじゃないんだけどね」
っていう生まれ持った性についてです

この世で最も、誰も同情し得ない最低のクズ野郎に
古谷先生だけは空也上人像のように寄り添ったのです



映画の話に戻します、吉田恵輔監督のインタビューを読む限り
原作のテーマを描かないことは意図的な判断だそうです
http://chubu.pia.co.jp/interview/cinema/2016-05/himeanole.html

確かに漫画と映画は違うから何でも原作道理ってわけには
いかないことは重々承知しております

色々書きましたが、エンタメ寄りの映画作品として
楽しかったし...世間の評価は高いしどう見ても
映画作品化は大成功ですよ!

あの編集さんは正しかったわけだ!
あの編集さんって原作の五巻に出てくる
漫画家の打ち合わせで

「この一ページ丸々使っちゃってる
 田んぼの風景は何?」

「わかりづらいよ~~~~
 長いし田舎臭いしさぁ~~~」

って言ってた編集さんです
責任ある立場の人にしかわからない重圧や
商業的な現実も関係ないいち消費者の
無責任な感想ですけど


けど...僕は知りたい...

じゃあ、何でヒメアノ~ル映画化したの?って...



いや...でも、ピンクローターの使い方とか最高だったよなぁ...