最近の政治的時流と財政

2025年05月03日

消費減税論の問題点

 消費税減税を求める声が、国民や政党を含め大きくなっています。そのような中、4月25日付日経新聞のコラム「大機小機」に「消費減税論への7つの問い」と題する文章が掲載されました。要約すると、次のような論旨です。

 

    今はインフレである。景気刺激のための減税はインフレを加速する。困窮者対策が目的ならば、受給対象を絞った給付金が適切なのではないか。

    今の日本経済は需要が足りないというより供給力不足が問題だ。消費減税という施策では人手不足という課題には無力である。

    消費税率を変えるには法改正が必要であり、年内実施は容易ではない。また、実施前には必ず買い控えが発生する。消費税減税という政策には即効性を期待しにくい。

    時限的な消費減税を実施する場合、いつ戻すかが課題。

    消費減税の際には、会計ソフトの更新など事業者の負担は、増税時と同じコストがかかる。                            

    消費減税によって個人消費が増えるという保証はない。減税による増収は疑わしい。

    減税によって国の財政赤字がさらに悪化することで日本国債の格下げリスクも無視できない。長期金利を上昇させ、企業のコストを増やすとともに住宅ローン金利などを通じて国民生活を圧迫する。

 

以上は初歩的シミュレーションである。「減税は民意である」と唱える人たちは、せめてこの程度は考慮しておいていただきたい。

 

l  今は緊急対策

 以上がコラム要旨で、これを踏まえ私の考えを申し述べます。

確かに物価高や米国関税措置への対策は必要です。ただ例えばガソリンについて、原油は下落傾向であり同時に為替も少し円高に振れていることからガソリン価格は落ち着くものと思われますし、コメや野菜についても遠からず落ち着くものと思われます。現在は一刻も早く賃金と物価の好循環を実現し、先進諸国の賃金や物価水準に追いつけるよう頑張る時です。また、米国関税についてもトランプ氏特有の最初に高めのボールを投げるディールであり、既にさまざまな見直しが行われていることからバタバタするのではなく、しっかり交渉の経緯を見たうえで対応すべきです。それだけにまずは、ともに変動要因が大きい現状では、緊急対策によって対応すべきだと考えます。

 

l  制度変更の難しさ

制度の変更、特に消費減税は、時限的というには「言うは易く行うは難し」であり、その減収分をどう賄うか、さらに財政悪化に伴う市場の信認低下リスクなどを考えれば、簡単なことと考えるべきではないと思います。



ishida_masatoshi_net at 18:38│ 石田の発言 | 主張・提言
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