2009年10月02日
コンピュータと電力の話
私はコンピュータの専門化なので電気については詳しくありません。一般的な話としてご理解ください。
パソコンの電源が取れない!
パソコンを買って、コンセントにつなごうとすると「あれ、これじゃ繋げないじゃないか」と思った方は沢山いらっしゃると思います。なぜなら買ってきたパソコンの電源ケーブルは3つのコネクタが付いていて、壁のコンセントは二つしか穴が開いていません。家庭用の電源は二相電源で、コンピュータは三相電源です。
仕方がないので、電気店でプラグ変換コネクタや、三相電源タップを使います。ふつうはこの三番目の穴はアースです。洗濯機や冷蔵庫などの大型電気器具にも、電源のよこにアースが付いていて、鉄の水道管やベランダの鉄枠につなげる様に説明書に書かれています。しかしほとんどの人は無視しているようですね。感電などの事故を防ぐためにもアースはつなげた方がよいでしょう。
問題は壁に二相の電源があり、そこにコンピュータ用の三相の電源を繋げなければならない点です。電源アダプタをつなげると壁から大きく飛び出し、机を移動したときに外れたり、ケーブルの重量で抜けたりします。
コンピュータの専門化からすると、古いオフィスビルや小さな工場ではこのような電源しかなく苦労します。
そこで、コンピュータを設置するために電源工事をしてもらい、三相の電源を用意してもらいます。コンピュータの台数が増えるにしたがって、工事>設置>工事 の繰り返しで、そのうちに契約アンペアを変えてもらう必要があります。また大規模なビル電源の工事でコンピュータシステムを止めてもらわなければなりません。
200Vの装置
日本の電気器具はほとんどが100V電源です。日本の電源事情は複雑で、50Hzと60Hzが混在している珍しい国です。北海道をはじめとする東日本ではヨーロッパ型の60Hzです。
困るのは、コンピュータをはじめとする大型電気器具はアメリカ型の200V電源を前提に設計されているため、大型の冷蔵庫や大型の機械では200V電源を用意しなければならないことがあります。通常のコンピュータはほとんど100Vでも問題がないのですが、最近のコンピュータで特に高密度型のものは200V電源を用意しなければなりません。
したがって、最近のオフィスビルではコンピュータルームに100V電源と200V電源を混在させて用意しなければならないケースがあります。
当然100V電源に200Vの装置をつないでも動きませんし、200V電源に家庭用の照明機器を間違ってつなぐと壊れます。普通コンピュータの裏側は暗いので、ついついやってしまう間違えです。
不安定な電力供給
工場など電力を使う施設では、休日の操業していない時間帯は、構内電力が上がります。平日99V程度なのに、週末だけピクリと115V位に上がるという現象です。この現象をサージと呼びます。一般の電気器具ではあまり問題になりませんが、コンピュータの場合は大きなダメージを与える場合があります。
逆に電圧が一時的に下がる現象をブランクアウトと呼びます。これは落雷や、大型電気器具のスイッチを入れたときに発生します。工場の月曜朝一番のコンピュータのトラブルの原因です。古いビルでは、プリンタやコピー機と同じタップにコンピュータをつないだ場合にトラブルの原因となります。これは経験者でなければ見抜くことのできないトラブルです。
安定した電力供給
新しいオフィスビルではこうしたトラブルは滅多にありません。しかし海外の広大な国では落雷や竜巻などの自然災害、途上国のインフラの整備の問題でこのような問題は頻繁に発生します。そこで通常、コンピュータを使うにはUPS(無停電装置)と呼ばれるバッテリーを経由してコンピュータをつなぎます。
通常、電力会社から送電される電気は交流(AC)です。コンピュータはコンセントから100Vの交流電源を受け取って内部では6V程度の直流(DC)に変換されます。電源事情がよい日本では、送電される交流が不安定でも、コンピュータの電源装置にはほとんど影響がありませんが、電源事情が悪い地域では、インバータ型のUPSバッテリーを使います。
インバータ型のバッテリーを使う場合、交流>直流>蓄電池>直流>交流>コンピュータ>コンピュータ内部で直流へ、と何度も電源を変換します。インバータ方式は常時バッテリーに負担をかけるため、バッテリーの消耗が激しく、バッテリーを交換するために装置全体を止めなければならない場合があります。
バッテリーは鉛や酸性の液体を使う危険物です。クルマのバッテリーをこぼして服に焦げ穴を作った経験がある人には理解できるでしょう。リサイクルの環境負荷が高いものです。
最近のコンピュータ用のUPS(無停電装置)は、サージやブランクアウトなどの緊急時に回路が動作するタイプのものが多く、このタイプのものは回路とは別にバッテリーがあり、装置が稼動していてもバッテリーの交換ができます。
中部空知地区は、豊かな水を使った電力事情に恵まれ、ノン・インバータタイプのバッテリーでもデータセンターの運用は問題ないと思います。