クラウド相談室--ある金融機関の質問「データセンター事業の事情が知りたい」多摩市火災、建物は「データセンター」だった

2017年10月13日

データセンター、クラウドサービス事業者の階層化

データセンター、クラウドサービス事業者の階層化

ファシリティ提供者

データセンターのファシリティ提供事業者は、データセンターの用地、建物、電力会社が提供する電源、予備電源、主なバックボーン回線を提供します。もちろん、自らIT機器を配置して、IT機器をサービスとして、時間貸やトラフィック量、CPU装置の利用量による課金も行います。まぁ、パンツとパジャマ、歯ブラシから、エレベータと玄関ホール、寝床まで提供するホテルの様なものです。データセンター専業の運用事業者や、巨大なインターネットサービス、例えば Facebook や Google なんかはこうしたデータセンターに投資します。勿論ピンキリがあって、都心のランドマークホテルから、地方の巨大なリゾートホテル、民宿程度の規模まで様々な企業がやるわけです。大手のSIベンダーやISP、通信事業者なんかも、こうしたファシリティに投資しています。中には、大手企業が「社員保養所」の様に、自ら土地建物、IT機器から通信設備まで、自社利用オンリーで運用するケースもあります。しかし、巨大なファシリティの利用率が自社だけで満たされない場合、余剰した設備をデータセンターとして「部屋貸し」することもあります。

IT機器のみの装置貸し

当然、巨額の費用をかけてファシリティを作ってもすぐに満室になるわけがないので、中小のデータセンター事業者は、こうした土地、建物を借りて、サーバールームを作り、IT機器を設置します。
よく、都心のホテル&オフィスのビルディングの様に、29階まではオフィスで30階から40階までホテル、42、43階と地下街はショッピング&レストランのようなものですね。ビルと土地の所有者は「✖✖金融不動産」なんかが所有しています。立地条件が都心の様に利便性だけ考えると非常に高価な値付けができるデータセンターです。都心型のデータセンターの主な事業形態です。「✖✖インターネットサービス」なんていう感じの企業が主に借りて、ホテルとして経営して、パンツとパジャマ、部屋とベッドを提供します。エントランスやエレベーター、電源、通信インフラはファシリティ事業者が提供します。もっともファシリティ事業者の用意した回線容量が足りない場合は、部屋借りしている事業者が自前でエレベータ、ならぬケーブルを引いてくる事もあります。

自前の設備を持たない事業者、利用者

言わば「旅行代理店」や「結婚式場企画会社」のような事業者です。機器から電源、IT設備の全てはファシリティやデータセンター事業者から借りて、中のソフトウェアサービスだけ、自社で運用する、クラウドサービス専門の事業者です。ホテルの部屋まではファシリティ事業者や、データセンター事業者が提供し、内装レベルからホテルの備品程度のサービスまで差はありますが自前で提供する、という業者ですね。「隣の部屋」とはチト違うのよ、と言った「差別性」を持たせる事で、チト違うサービスをクラウドとして提供するわけです。多くの零細なクラウドサービス提供者のスタートアップ企業は、こうした「部屋借り」をします。もっとも、部屋にどういったIT設備を持つかはそれぞれの事業者で違ったりします。また、多くの顧客企業が「データセンターに機器を置いてユーザに提供する」形態のサービスもこの中に含まれます。

Google の様なサービスもスタートアップの時は自前のガレージに機器を置き、次にデータセンターの部屋貸りをして、次に自社のファシリティを作った方が安いし、余剰したリソースを逆に他人に貸し出すという具合にエスカレートして行きます。Amazon のクラウドサービスも書籍の小売りを始めたころのスタートアップは小さく、そのうちに貸し部屋に移り、そのうちに自社ファシリティを持ち、今では言わば 「Amazon 書店の空きリソース」を他人に貸し出したようなものです。Google も初期では、こうしたデータセンターを借りて運営させていましたが、自社でデータセンターを持った方が安価であるため、自社のファシリティを使い、かつて隣人だった、中小事業者にファシリティを貸し出すまでになっています。



石狩川流域をシリコンバレー化する勝手なプロジェクト




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