2008年01月
2008年01月15日
また一緒

ただ、5回続けて同じバンドに曲を書いている、しかも指揮者は5回とも音楽監督の若林義人さんでありながらも、演奏する学生は毎年顔ぶれが変わり、「三角の山」や「森の贈り物」をコンクールで演奏したときのメンバーも、全員卒業(または進学)し、社会人として、それぞれの道を歩んでいます。
そう。龍谷大学吹奏楽部は私の曲ばかり演奏している。そんなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、一人一人の学生にとってみれば、コンクールで私の新作を演奏したことがあるのは、多い学生でも3回。しかも、そんな部員はわずかで、全体で150人ほどいる部員の中には、一度も私の作品を演奏したことのないメンバーも結構多いのです。
卒業生との交流も増え、そんな話を聞くにつれ、オーディションで選ばれた(コンクールに出場出来る)55人の学生に贈る曲と言うものに、私自身も特別な責任を感じるようになりました。
「この55人に出会えたから、この曲が生まれた」
いつも、そのことを一番大切に考えています。
約150人いる部員の中からオーディションで選ばれたメンバーの中には、音大生顔負けの上手な子もいますが、全員がそうと言う訳ではありません。
2004年春「三角の山」「森の贈り物」でBassoonを吹いてくれた学生が卒業し、龍谷大学吹奏楽部のBassoonパートは、誰もいなくなってしまいました。
その年の入部者の中には、Bassoonの経験者はおらず、大学生になって初めてこの楽器に取り組むことになる二人の1回生が、このパートをまかされることになりました。もちろん、コンクールにも(課題曲にBassoonパートがありますので)写真右側の長谷山さんが数少ない1回生のメンバーとして出演しました。
この年の自由曲は「七五三」。Alto SaxophoneやEs Clarinetなどに、華やかなソロがたくさんある作品ですが、Bassoonは、Bass ClarinetやBaritone Saxophoneとほとんどユニゾンで、なるべく負担が無いように書き、彼女も懸命に練習してくれたのですがコンクールでは、多くの場所で、降りてもらうことになり、なんとも心苦しい思いをしたものです。
そんな彼女も今年は4回生。名門の中学、高校を経て入学してきた、スタープレイヤー?も魅力的ではありますが、大学生になってBassoonに出会い、その魅力に惹かれてコツコツと練習を重ねてきた彼女に、なんとかこの曲でキラッと光ってもらえないか?そんな所から今年の曲作りが始まり「また一緒」が生まれました。
さてさてこの2007年の自由曲として書き下ろした「また一緒」。副題はあまり知られていませんが「In Unison Again」です。
そして、この作品の主題は、バルトークのピアノ曲、ミクロコスモスより「Unison Divided」と「In Yugoslav Style」から引用しています。
さて、少し話がそれますが、私は色々な人に、
「メロディーはどんなときに思い浮かぶのですか?」
と、尋ねられます。
まあ、普段は「きれいな景色に出会って〜」と、適当に返事をしていますが、内心少し反発しています。
やっぱり、メロディーを作り出すことが作曲なのでしょうか?
では、バルトークのメロディーを用いたこの曲は、私の曲では無いのでしょうか???
そうではないんじゃないかなと、この曲を書くことによって主張(いや問題提起くらいかな?)してみました。
話を元に戻します。
この曲の主題として引用したバルトークの作品。特に「Unison Divided」は全体でわずか8小節(演奏時間17秒)と言う「断片」と言って良いほどの小さな作品なのですが、この人を食ったような旋律にすっかり魅せられ、いつかこのテーマを用いた奇想曲を書きたいと思っていました。しかも、このメロディーを奏でるのにぴったりな楽器は?やっぱりBassoonしかないのでは、と言うことで、長年の夢を実現させました。
この曲の中ほどにある、2本のBassoon, Bass Clarinet, Contrabass Clarinet, そしてString Bassによるアンサンブルは、私自身、この曲の中で一番のお気に入りの部分ですが、長谷山さんに出会うことが出来たから、生まれたアイディアだと思っています。
改めて彼女に感謝するとともに、卒業してからもBassoonを続けて行って欲しいなと、心から願っています。
と言う訳で、写真はコンクール(長野での全国大会)後のレセプションで、Bassoonの2人の4回生。左側が川端くん。右側が長谷山さん。
コンクールの結果は残念ながら、銀賞でした。ただ、私としては、かなり特殊な内容(by鈴木英史さん。Band Journal 2008年1月号86ページ)の作品に(しかもコンクールと言う場で)全力で挑戦してくれたことを、私は一人の作曲家として、誇りに感じています。
「また一緒」に、龍谷大学吹奏楽部の皆さんと、新しい挑戦をしたい!と心より願っています。
2008年01月05日
GOTHIC

GOTHIC(2007年)
[BOCD-7182]
2007年12月に発売された新譜です。
CDをリリースしているブレーン社で出版されている吹奏楽作品を集めたアルバムで、私の作品は「波の通り道」が収録されています。
他に、建部知宏、櫛田てつ之扶、天野正道、高橋伸哉、真島俊夫、木下牧子さんと、吹奏楽の世界ではおなじみの作曲家の作品が収録されています。
私の「波の通り道」は龍谷大学吹奏楽部の2006年吹奏楽コンクールの自由曲として書き下ろしたもの。初演からわずか一年後に、プロのバンドによる演奏で、CDに収録されると言う、なんとも光栄なお話です。
私もレコーディングに立ち会わせて頂き、四弦のコントラバスで、E線をCに下げてもらって、最後の低いCを弾いてもらったりと、色々無理を聞いてもらいました。
何せ、二日間のレコーディングで、長いものでは17分近い曲も録らないと行けない訳なので、私の作品に割り当てられた時間は2時間。正直言うと、要所要所のテンポは私の想い描いている理想とは少し違うものでしたが、2時間の収録時間で、私の理想のテンポに修正するのは無理と判断し、指揮をしてくれた武田晃隊長の音楽作りを信じました。すでに初演が終わって出版された作品、なぜ私がここに呼ばれたのか、微妙にその責任とどこまでわがままを言って良いものか悩みつつも「この作品は、すでに私の手を離れ、今収録しているCDは、陸上自衛隊中音楽隊、武田隊長、そしてレコード会社のもの」と自分に言い聞かせて過ごした2時間になりました。
もちろん、練習時間もさほど多くなかったと聞きますが、それでいてここまでの演奏をしてくれるとは、プロのバンドの底力は素晴らしいと思います。武田隊長、陸上自衛隊中央音楽隊の「波の通り道」、みなさんも是非お聴きください。
他の収録作品も、素晴らしい作品ばかりですが、やはりアルバムのタイトルにもなっている、木下牧子さんの「ゴシック」の演奏が、個人的には一番迫力を感じます。
購入は、
http://worldwindbandweb.com/brainmusic/7.1/BOCD-7182/
からどうぞ〜♪