米 Amazonが発売する電子ブックリーダー「Kindle」の売れ行きが好調だ。Amazonによると2009年のクリスマスシーズンに同社でもっとも売れた電子端末はKindleだったという。また同年クリスマスの12月25日、Kindle向けの電子ブック販売量が初めて紙の書籍販売数を超えたとのことである。
AmazonはKindleの販売量をあきらかにはしていないが、電子ブックを販売するプラットフォームとして同社の柱となる製品になっているようだ。
KindleはAmazon.comでも主力製品として販売されている

Kindleは3Gモデムを内蔵しており、世界中どこにいてもその場で電子ブックを購入することができる。しかも紙の書籍のように配達を待つ必要はなく、購入後その場で読むことができるわけだ。
Amazonがオンラインでの書籍販売を開始してからは「書店に出向かわずに自宅で書籍を購入する」動きが加速化したが、「購入した書籍を瞬時にダウンロードして読むことができる」ことまでも今では現実のものになっている。
Kindleの登場は出版業界に大きな革命を起こすだろう。

だが、Kindleは電子ブックリーダーというガジェットから、大きく化ける可能性を秘めていることに気づいておられるだろうか?

それは通信機能を内蔵していることだ。たとえば、オンライン雑誌を販売し、文中にAmazonストアへのリンクをつければ雑誌を読みながらその場で簡単にどんな商品でもオーダーができるわけだ。Amazonは今や書店を越えて、家電から日用品までを扱うネットの総合デパートになりつつある。アカウントの設定も不要で、Amazonアカウントとの紐付けがされた状態で配送されるKindleを購入さえすれば、ショッピング雑誌を配布して物販で利益を上げるといったことも可能になるわけである。

ちなみに電子インクは、電気を切っても表示状態を保持することができる。液晶や有機ELは電源を切れば画面表示は消えてしまう。この特性を生かせば、たとえば航空券のEチケットを電源OFF時に表示するようにしておけば、飛行機搭乗前に書籍を読み終わり、電源を切って航空券を表示して飛行機に乗る、といった使い方もできる。電源を切っても画面に表示ができる、これは液晶など従来のディスプレイには無い大きな利便性のある特性だ。

またWEBブラウザを搭載していることにより、インターネット上の情報検索も可能だ。Kindle本体の CPU性能や、電子ペーパーの表示に使われる電子インクの特性により画面書き換え速度が遅い、というネックはあるものの旅行先で地図や観光ガイドを見るといった程度の使い方ならストレスは感じないだろう。

動画や写真の表示はモノクロの電子ペーパーでは実用性が無いが、Kindleはその用途は考えておらず、テキスト情報をどこでも見ることができるという用途に絞った設計になっているからだ。この大胆な「割り切り」こそが、Kindleが売れている理由でもあるだろう。
Gmailを表示してみる。表示にややもたつくが閲覧だけならば十分利用できる

今後はWEBブラウザの利用だけではなく、WEBサービスとの連携により「情報ツール」としてのKindleの活用も広がるだろう。たとえばWEBページを簡単にクリッピングしてあとから読む「Instapaper」がKindleにも対応している。

PCで気になるWEBページをどんどんInstapaperで取り込み、Kindle形式でダウンロードすることができるのだ。InstapaperはもとのWEBページをテキスト中心の無駄の無いレイアウトに変更してくれるためKindleとの相性もよい。

また1月21日にはKindle用のアプリケーション開発キット「Kindle Development Kit(KDK)」が発表された。これによりKindle上で動くアプリケーションを開発、販売することが可能になる。見た目が派手なアプリケーションの開発は難しいだろうが、手軽なゲームやデータベース、辞書やWEBサービスとの連携アプリといったものがおそらく登場してくるだろう。そうなればスマートフォンやAppleのiPadとはまた違う層向けの「WEB情報ツール・マルチメディアツール」として人気が高まりそうである。

この他にも、新聞社が電子新聞の年間購読者にKindleを無料提供する、といった販売モデルも今後登場する可能性がある。本体に自社のロゴを入れたり、電子ブックを表示していない「待ち受け状態」画面に常時自社の広告を表示することも可能であり、広告ビジネスのツールとしてもKindleは適しているわけだ。

Kindle の好調な売れ行きに対抗し、今後他社からも電子ブックリーダー端末が続々と発売される予定だ。だがiPodが音楽プレーヤーで一気に首位に躍り出たのは iTunes Music Storeがあってこそ。すなわち電子ブックリーダーも多数のコンテンツを用意し、しかもワンクリックという購入のしやすさを提供することが必須である。

単体の性能だけがよいだけでは、おそらく消費者は購入してくれないだろう。しかもAmazonはリアルな物販も行っているため、書籍を買う用事がなくともついついAmazonストアへ寄ってしまう、という魅力も備えている。電子ブックリーダー端末の競争が今後激しくなったとしても、Kindleの優位性はそう簡単に崩れないだろう。

Kindleの本体のスペックはiPadやスマートフォンには及ばないものの、どこでもネットにつながり、テキスト系の画面表示は液晶よりも見やすく、そして電池の駆動時間も長い。派手な機能はなくとも、使いやすい「日用品的な情報ツール」としてこれからも着々と売り上げを伸ばしそうだ。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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