誰しも子供を経て大人となるが、子供のころの無垢さと残酷さを記憶している人は少ない。倉岡研一氏は、無垢な子供だからこその残酷さを作品で表現している作家だ。

倉岡研一氏の作品は、誰しもが忘れがちな子供のころの心情を「ときには切なく」、「ときには怖く」見る人の心に響いてくる。

倉岡研一氏のアニメを見て、あなたも、昔の自分と向き合ってみてはいかがだろうか。

■布切れと青銅

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【作品解説】
少年の頃から女性の銅像を拭き続けた男の話。
大学2年のときに、初めて作ったストーリーのある映像です。使っていたPCのスペックも低く、学校の授業や課題もあったので、結局完成までに1年近くも費やしてしまいました。
ときのうつろいを描きたかったので、時間が進むに連れて変化する背景や主人公、それに対してまったく変わらない青銅像を、ほとんど一定の固定カメラで撮るという演出にしました。
見所は、変化する風景や主人公と、やっぱりラストのお爺さんの表情でしょうか。

■ToMy

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【作品解説】
兄弟のモノではなく、自分だけのモノが欲しかった長男が、猫を拾って公園で飼い始める話です。
自己反省みたいな面もありましたし、何よりも「子供」をテーマとした作品ですので、自分の一番素な描き方をした絵をアニメーションにしました。2週間で制作した作品です。見所はセロハンテープとラストです。

■恐竜が死んだ日

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【作品解説】
父親が買ってくれた恐竜図鑑を持って家出した少年の話です。学部での卒業制作の作品となります。
少年の目からみた世界の、とある一日を描きたかったので、クレヨンのテクスチャーをベースにしたグラフィックでアニメーションさせて、それを手持ちのようなカメラワークで撮影することによって現実味のある演出にしました。見所はカメラワークと、後半の実写映像との合成。そして映さずに描いた「父親」の存在でしょうか。

■残酷でもあり、わがままな子供としての思い出が作品作りの原点
「布切れと青銅」のキッカケは学校の課題なのですが、アフターエフェクトで簡単にアニメーションが作れるということがわかったので、ストーリーのある映像を作りたくなったというのが一番大きいと思います。最初に、何を描けば良いのか悩みました。「ここは素直に自分が経験したことを元に作ろう」と考えたとき、幼少期に遊んだ空き地のことを思い出しました。

引っ越して以来十年ぐらい訪れていなかった遊び場の空き地が、ただのキレイな公園になっていたのに非常に驚いたんです。なんだか寂しい思もしましたが、それと同時に、「まぁ。しょうがないかな」と納得してしまう自分がいたんです。

その、自分が体験した複雑な気持ちをなんとか作品にしようと考えたのですが、映像作りはほとんど初めてでしたし、自分の技術力の限界も知っていたので、どうストーリーや映像にすればいいのかわかりませんでした。
そんなとき、たまたま『天井桟敷の人々』という映画の中で主人公のバチストが銅像の女性に恋をする(という劇をやっている)シーンをみて、「コレならイケる!」と閃いて制作することができました。

「ToMy」は、僕の実家で猫を飼ってるんですが、子供の頃に猫たちに随分酷いことをしたなという反省があるんです。無理矢理抱っこしたり、ほかの兄弟に渡したくないから自分の部屋に閉じ込めたりとか。
2代目の猫を飼うことになったキッカケも、死んだ1代目の代わりが欲しいってだけで、今考えたら自己中心的なことを猫たちに押し付けたもんだなと、反省しちゃうことが色々とあるんです。
猫のこと以外にも、自分は子供時代には残酷なこともしでかしたなぁと、思い当たるところも色々あって・・・。
その子供時代の自己反省と、最近の映画に出てくる子供は大抵『子供』じゃないという不満がゴッチャになって、制作したという感じです。

「恐竜が死んだ日」は、子供から大人へ、妄想の存在から現実の存在になってしまう瞬間を描きたいという欲求が自分にはありました。最初に浮かんだのは、街を練り歩く巨大な怪獣と、それと一緒に歩く少年という絵でした。
「この少年は何者なんだろう?」「この怪獣とはどんな関わりがあるんだろう?」そういうことをひたすらずっと考え続け、ようやく物語が完成しました。

■子供はかわいさの中に、残酷な一面がある
「布切れと青銅」では、「永遠の存在なんかない」ってのがテーマです。でも、僕個人としては一番やりたかったのはお爺さんの心境を知らない孫の存在でした。意外と身内の人間についてすら知らないものなんじゃないかと思います。

「ToMy」は、「子供」そのものがテーマです。子供って無垢ですけど、その「無垢」ってカワイイというような意味じゃなくて、本来は非常に残酷な意味なんじゃないかと思うんです。子供は世の中のことや人間関係の複雑さなんてわかる筈もありませんから、やっぱり不器用なわけで、不器用な故に残酷だと思うんです。でも子供ってそんなもんだし、それが成長して大人になると思うんです。

そういうことを忘れてほしくないなと思い、制作しました。でも僕自身がそう考えて作ったというだけであって、単純に少年らや猫を「カワイイ」と思っていただければ、それはそれで十分嬉しいです。

「恐竜が死んだ日」は、「よくわからない」というのがテーマです。
人間関係において、妄想よりも、現実の世界の方がモヤモヤしているとつくづく思うときがあります。
自分が考えている世の中の仕組みや人間関係、そして自分の気持ちは単純で明快なのに、実際はそうではなく、友人や家族、そして自分の気持ちすらよくわからないというのが現実です。

母親は裏切り者なのか、それとも父親と自分を愛してくれているのかわからない。妹がなんで家出に着いてくるのかわからない。自分が好きだった父親は、本当にイイヤツで、自分は本当に父親のことが大好きだったのかもわからない。そんなモヤモヤした現実の中で、どこに居場所を求めればいいのかわからなくなった少年の話なんです。

悲観的だろうと楽観的だろうと、現実の不確かさを再認識して頂けたらと思います。

■作品を制作するポイントは?
・何を描きたいのかをひたすら悩む。
・何を描けるのかも自問自答する。
・言葉で簡単に言えちゃうようなテーマなんか作らない。
・どう表現すれば良いか考える。
その上でとっとと作る。で、作りながらも、なお考える。
「こりゃダメだ」と思ったら全部やり直すか、寝かせておく。

といった感じでしょうか。色々自己反省含めて言ってますが。
あとは「バカをやるなら頭良く徹底的にバカをやる。」とか・・・。
とにかくイイ映画や作品を知ってた方がお得だと思います。

■CGはジャンクっぽいのにドライな手法
ハイクオリティーでモノ凄いCG映像は別として、CGは「誰にでもできる」という点で、一種のジャンクさがあると思います。しかしその割に、アナログ特有の温かさや賑やかさがなく、冷たくドライで静かな演技ができるところがイイです。

アナログではできないアプローチがCGにはまだまだあるんじゃないかと思っています。
それと、擬似的に空間を作れたり、構図を簡単にかえられたり、手持ちのカメラで撮影したような映像にできたりする点が便利でいいです。

何よりも絵が描けない僕がアニメーションを作れるという時点でCGはとてつもなく優れものです。

■時間が経つと昔のアルバムをみているような気恥ずかしさが
出来上がった直後は「映像になった」というだけで興奮していますが、時間が経てば昔の写真が入ってるアルバムでも見てるような感覚になります。
「あぁ、こんなことあったなぁ」とか「なんか見てると痒くなってくるなぁ」とか「俺太ってるなぁ」とか...。
大概恥ずかしいということです。でも制作中の思い出があるんで大切だったりもしますね。

■今後の活動、目指す方向について教えてください
今後もストーリー性を重視したアニメーションを作るつもりですが、長期的には自分は何をしたいのか、何ができるのかが、まだ明確にわかってはいません。今はまず、自分が本当に作りたい映像を一本でも作って、そこから答えを導きだそうと思っています。

「布切れ~」は別として、今までは制作期間の8から9割ぐらいを企画に使っていたので、今度は制作の方に時間をかけたいと思っています。

もうちょっと人物(キャラクター)のドラマ描写に力を注ぎ、絵も凝るようにしたいですね。
あと音はとてつもなく大事です。スクリーンでみて頂く前提で作らなきゃいけないなと思っています。

■首都高で爆裂カーチェイスにゾンビマラソンが撮りたい!
倉岡研一氏は、現代っ子らしく甘いお菓子とウェンディーズのハンバーガーが好きなほか、小物などもよく買っているという。また、机をやたら改造したり、夜中徘徊(散歩)したり、youtubeでイイ映像を探したりするのが好きなのだそうだ。

もし望みを叶えてくれたら、映画を撮りたいという倉岡研一氏。その内容は、爽やかではない男優を主人公にして、首都高を舞台にしたプリウスのカーチェイス。しかも、やたら爆薬を使ってクラッシュさせるという派手な映画だ。ほかにも、ゾンビに東京中をマラソンさせる映画など、意外にも過激な映像を撮りたいという。

■倉岡研一氏 プロフィール
1988年山形県生まれ。
2006年茨城県の水戸短期大学付属高等学校卒業。
2010年東京工芸大学メディアアート表現学科卒業後、
東京工芸大学院メディアアート専攻に入学。
主に、アフターエフェクトを用いた切り絵アニメーションを制作しています。
現在も大学院にて、ストーリー性を重視した2DCG映像を制作中。

NHKデジタルスタジアム伊藤有壱セレクション ベストセレクション
しずおかデジタルコンテンツグランプリ2008 表現賞
ShortFilmFestaNippon-under29-最終審査ノミネート
など。

iPhoneサイト
iPadサイト
・ドコモサイト(iモーション対応端末)

ブロスタTV

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