2011年1月11日(現地時間)、北米最大の通信事業者Verizon WirelessとAppleはCDMA 2000方式に対応したiPhoneの発表を行った。発売は2月10日からで、これまで通信方式の違いから諦めていた同社の顧客の多くがiPhoneに飛びつくことになりそうだ。販売形態も2年契約縛りのみならず、端末代金を先払いすれば単月支払い契約も可能など、購入しやすい選択肢が用意される予定だ。

Appleが初代のiPhoneを販売開始したのは2007年、同じ北米のAT&Tからだった。それ以降両社は密接な関係を築きながら拡販を進めてきた。販売当初に導入したレベニューシェアなど業界の常識を打ち破るビジネスモデルは結局失敗に終わったものの、その後すぐに軌道修正を行ったこともあり、世界各国の通信事業者経由でiPhoneは拡販されるようになった。今では多くの国で複数の事業者がiPhoneを取り扱うようになっており、iPhone=一国の一事業者による独占という販売モデルも変わりつつある。

だが北米市場だけは通信方式の違いからAT&Tによる独占が続いていた。同じW-CDMA方式を採用するT-Mobileは周波数が異なりiPhoneは利用できず、逆に世界初のAndroidスマートフォン『G1』を発売するなどGoogleとの結びつきを強化している。一方、加入者数9000万、北米最大の通信事業者VerizonもMotorolaの『Droid』を2009年冬に販売開始。Droidはその後好調な売り上げ数を記録しVerizonは「iPhoneが無くとも顧客は増やせる」ことを証明したのだ。

各国で高い満足度を誇るiPhoneも、AT&Tの貧弱なネットワークインフラに対する利用者からの不満は高く、一部のユーザーはiPhoneを捨ててまでもVerizonに乗り換える動きが出ているという。VerizonとしてもARPUを高めるためにはスマートフォンユーザーを増やすことが重要であり、Androidに限らずiPhoneのCDMA2000対応をAppleに求めていたという話である。

Apple側は数の少ないCDMA2000対応端末を作ることは当初は乗る気ではなかっただろうが、2010年第4四半期決算で40億ドル以上の税引後利益を記録するなど、今は資金にも余裕がある状況だ。北米第一事業者のVerizon向けにiPhoneを出すことはコストを差し引いてもメリットが大きいと判断したのだろう。

Verizonの総加入者数は2010年10月末時点で約9300万人。北米の調査レポートによると同社の加入者の半数近くがiPhoneへの興味を持っているという。またウォールストリートジャーナルによると北米のアナリストの多くがCDMA2000版iPhoneの販売台数を1000万台前後と見ているとのこと。これはAT&Tが2010年の1月から9月までに販売したiPhoneの台数とほぼ同等であり、2011年は北米で販売されるiPhoneの数が一気に倍増する計算である。

またAppleはVerizonをCDMA2000版iPhoneの独占販売事業者には指定していない。すなわち他国のCDMA2000事業者からも販売される可能性があるということだ。とはいえ現実的にはヨーロッパにはCDMA2000事業者は皆無であり、アジアや南米でもiPhoneを販売するだけの体力のある事業者は多くない。

となるとVerizonの次に販売が予想されるのは約8500万の加入者数を誇る中国の中国電信(チャイナテレコム)と予想される。Appleも世界最大の通信市場となった中国市場での拡販には興味があるはずであり、既存のW-CDMAモデル(中国聯通、チャイナユニコムから販売)と合わせれば北米のように販売台数を倍増させることも期待できる。
北京のAppleストア。iPhone購入客で常時賑わっている

中国でのiPhone人気は諸外国以上に高く、iPhone4の正式販売初日に北京や上海のAppleストアが殺到する購買客で大混乱に陥り、店舗が臨時休業に追い込まれたほどだ。中国電信は加入者数こそ上位2社(中国移動、中国聯通)に引き離されているが、2010年1年間の加入者増加率は約60%と急成長している。また同社のネットワーク品質も評価が高い。もし中国電信からCDMA版iPhoneが発売されれば、年間数百万台規模の販売台数も十分達成可能だろう。

そして最も気になるのが日本市場での展開だ。CDMA2000対応ということで同方式を採用するauからの販売を期待する声も多いだろう。

auのネットワークは通信の上下周波数を国内の諸問題から海外と逆に運用しており、海外のCDMA2000端末は日本向けに対応した特別な製品のみが利用できる状況だった。2006年から使用が開始された「新800MHz帯」は上下問題が解消され海外と互換性が保たれているが、現在は新旧の800MHz帯がまだ併用されている状況だ。

新800MHz帯への完全切り替わりは2012年7月が予定されており、それまでは海外で販売されているCDMA2000端末をそのまま国内向けに販売することは難しいだろう。とはいえ主要都市など人口カバー率の高いエリアの切り替わりが早く進めば、そのタイミングでCDMA版iPhoneの販売に踏み切ることも可能かもしれない。

だが端末が自社の通信方式に対応したとしても最終的に販売を決めるのは通信事業者の意思である。auがどこまでiPhoneに興味を持っているのか、スマートフォン戦略を今後どう展開していくのか、さらにはauのユーザーがどれくらいiPhoneに期待を抱いているのか、そこが日本での販売実現の大きな鍵となりそうだ。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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