大変な世の中になった。このご時世、常用において過度なOCや、電力垂れ流しはよくないと思うが、最低限の日常を壊してまで自粛する必要もないだろう。上手にPCを使い、仕事も遊びもバリバリこなせば経済的にも貢献出来るし、その方が建設的な考えだと思う。
地味かもしれないが今回は省電力OCで遊んでみよう。

■省電力OCとは?
目的としてパフォーマンスは落とさずに、消費電力だけを落としていこうというものだ。
誰にでも簡単に出来る方法として、2つの方法が挙げられる。

1.ハードウェアの駆動電圧を下げる設定に変更する。
2. 冷却を強化させる。

つまり動作Clockなどは固定したまま、電圧を下げ冷却を強化することにより省電力化を計っていくというものだ。

まず1.についてだが、ビデオカードの電圧を変更するツールを入手することから始める。
Webを見回せば色んなものが出回っているが、MSI がリリースしているアフターバーナーが使い勝手がよいだろう。
http://www.msi-computer.co.jp/Afterburner/



このアフターバーナーはClockや電圧はもちろん、冷却ファンの回転数まで任意に制御できるようになる。

2.について説明すると、半導体は性質上、電力を食うのは信号のON、Offの切り替え時の瞬間だ。ONもしくはOff状況だとあまり電力を消費しない。

冷却を強化することによって切り替え性能が上がると、同じ周波数で安定している場合など「切り替わり」状態の時間の割合が減り、消費電力が減ることなども要因の一つと考えられる。

これらの手法は一般的な他のハードにも共通するものだが、今回はNvidiaのカードを使って検証してみる。最近のNvidiaのグラフィックチップは発売時設定されている定格動作よりも遥かに大きいマージンがとられていることが多いからだ。

テスト環境
VGA : GTX590(定格電圧0.938v Clock 608MHz/Mem854MHz/Shader1215MHz)
CPU : Core i7-980X
M/B : EVGA E762
Mem : KHX2133C9 x 3
PSU : SST-ST1200G

3DMark Vantage実行時の消費電力測定。


この環境で始めるわけだが、まずは何も弄らないディフォルト状態での消費電力を測定した。ワットチェッカーにはWatts up proを使用した。
Watts up pro

全てディフォルトの状態だとピーク時には524Wを記録した。

凄い数値になったが今日現在、最強クラスのGTX590なのでこれは仕方ない。この数値を先に述べた方法を使ってどこまで消費電力を落とせるか? 試してみよう。

まず、電圧設定は変えずにビデオカードの冷却ファンの回転のみを最大(95%)に上げて冷却を強化してみた。確かに冷えそうだ・・・しかしノイズも増え消費電力は上がりそうなもの?だが、結果はピーク時501Wと平均的にも約20W以上の節電となった。

冷却ファンを最大にしても消費電力は数ワット程度なので、冷却による電力低下の効果が勝る結果となるのだ。

次に電圧を定格の0.938vから0.900vに落としてみる。やはりこれは大きな効果がみられ490Wまで下がった。そして最後に電圧と冷却強化の合わせ技だと486Wまで落とすことに成功した。

もちろん、ベンチマークのスコアは落ちていない。


ディフォルトの524Wから比べると-38Wとなった。ビデオカード単体だけでの節電で裸電球一個分の差がついたと考えると馬鹿にならない数値だと思う。

これにM/B側が持っている省電力機能をプラスすればそうとうな節電に繋がるのは明白である。

さて・・GTX590というオバケカードで、ある程度の結果は出たので、ここからが本題だ。
もっと一般的なカードなGTX560tiを使って検証してみる。


このチップも非常に高いOC耐性で有名な上、OC版(GALAXY製)を使うことにより、
更に自由度の高い省電力チューニングが期待できる。

まずディフォルトの数値を見てみよう。GPU-Clock950MHz 電圧1.01v、システム全体の消費電力は330Wだ。


GTX590の時と同じ経緯でチューニングしていくと、テキメンに効果は表れ 330W → 318W (0.987V)と省電力化していき、最終的には電圧0.962v 時に 306Wまで節電が可能だった。もちろん、ベンチマーク時にも不安定動作はなかった。


その差24Wは地味?な数値に感じられるかもしれないが、dualコアのGTX590でさえ38Wだったことを考えるとシングルコアのGTX560の24Wという数字はよく頑張ったと言える。
もともと大幅なOCが施されているGALAXY製カードなのにここまで電圧を落としても冷却だけで安定動作出来るというのは驚異的とも言える。

さて、冷却と省電力には密接な関係があることが証明された。こうなると次が見てみたくなるものである。どんな温度にも温度コントロールが可能な液体窒素を上手に使ってカードの温度をベンチ中も室温以下(約10~20℃)に保ち検証してみた。

なぜ?窒素を使ってまで10~20℃までしか温度を下げなかったかというと、空冷環境で達成できるであろう?ギリギリの温度だからである。

今回使ったチューニング技を使えば、節電とはいかないにしてもGTX560のディフォの消費電力330Wを超えない範囲でClockを上げることが出来るハズだ。

結果は電圧0.987v 時に定格950MHz→1000MHzまでOverClockに成功。ベンチマークを難なくクリア出来た。


この時の消費電力はピーク時318W。

やはりClock上昇による電力上昇は大した値ではなく、低電圧化と冷却が大きく数値に影響することがわかった。ディフォの330W範囲内で、まだまだ上までClockを上げることも可能だったが、不安定要素も出始めた(画面にゴミ等)ので、今回はここまでとした。

液体窒素でマイナスの世界まで温度を落とせば更に低い電力でOCも可能だろう。

正確に言うと今回の検証は『純粋なOC』ではないけど、マージンを使い切るといった点ではOCと考え方は同じだ。オーバークロックであろうがアンダークロックになろうが?
道具を使いこなそうという目的に変わりはない。

常に変化する社会情勢、限られた環境の今日だからこそ臨機応変に対応し、多少不自由であったとしても逆に楽しんでいく位のスタンスでありたいものだ。

そんなスキルを身につけるには今がチャンスだと私は思う。

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