いまではネットと言えばインターネットを意味するのが当たり前の時代となった。二十年近く前は、ネットと言えば、イーサネットを使ったローカルエリアネットワーク(LAN)を意味し、外部とデーターのやり取りを行うのはパソコン通信を利用していた。特定のサーバーにアクセスすることでコミュニケーションを取るといったことが行われており、自然に現実世界と似たような社会構造を形成していた。

たとえばPCやネットに関する知識レベルに関しても自然にレベル分けが行われ、知識が足りない人に対しては、自身が質問するか皆で教えあって初心者が知識レベルを向上していくという流れが自然にできていた。

パソコン通信を行う際に最低限持つべき知識を持ってパソコン通信を利用するという前提条件が自然にできていたわけだ。しかし、パソコン通信はあまり一般的とは言えず、会員数が数百万人と規模は大きいもののクローズドな環境であった。

しかし、インターネットが当たり前になると状況は一変する。ネット接続が当たり前になり、さらには携帯電話、PDAといったPC以外の機器がネットに接続するようになると、それぞれの知識レベルにばらつきが見られるようになった。


こうなると、インターネットに関連するテクノロジー等に関して、ディスカッション等を行うにしても、それぞれの知識レベルのすり合わせができていないと、用語の解説だけで話がまったく進まないということになってしまう。

こういった知識レベルの指標となる基準があれば、その基準に合致する人は「最低限、このレベルまでの知識は持ち合わせている」ということが明確にわかるため、いちいち専門用語の解説を行う必要がなくなり、話もスムーズに進んでいく。インターネットが当たり前に使われている現状で、こうした統一した基準が存在しないまま、どんどんユーザーが増えてしまったため、最近ではネット上でのトラブルが後を絶たない。

こうしたトラブルの発生の防止やネットを利用する上での最低限のマナーやモラル、そして知識を一定のレベルで切り分けて資格として認定する「デジタルコンテンツアセッサ(DCA)」という制度が登場する。この資格認定を行う「一般社団法人インターネットコンテンツ審査監視機構」(通称:I-ROI)が発表会を開催したので紹介しよう。

この制度に開始から参加する大学として「青山学院大学」「東京工科大学」「千葉商科大学」「東北福祉大学」が紹介され、それぞれの大学からDCA担当の先生方が発表会に参加し、各大学における取り組みや今後の方向性などについて説明がなされた。まずはI-ROI代表理事でもある東海大学名誉教授 白鳥 令氏よりDCAについての説明があった。 

発表会は、DCAの説明から始まった。



I-ROI代表理事 白鳥 令氏


■資格は3段階、レベルに応じて認定
DCAは、資格レベルが3級から1級までの三段階に分かれており、3級が学生や学校の先生や公務員といった基礎的な知識を押さえているというレベル。2級からは、実務に関わってくるレベルで情報システムの管理者やメディアや出版関係、上長の役目を持つ教員や公務員が対象となる。そして1級は、かなり高度なレベルになっており、情報コンサルタントやICT産業やソフトウェア産業の幹部が対象になる。

このように所持している資格によって「この程度までの知識を最低限持っている」という証明になるわけで、当然のことだが学生であれば、将来の就職に有利に働くようにしていくのも、DCAの目指す一部であるそうだ。

知識レベルや対象者によって3種類のクラスにわかれる。


DCAの知識ドメインも3つに分類される。


■偏った対象からネット全般における知識に拡大
白鳥氏によると、インターネットに関してのコンテンツ管理やマナー向上、トラブル対策というのは、アダルト関連や射幸心を煽るような課金ゲームといったコンテンツが中心になっており、SNSや利便性を向上させるネットサービスといったものは対象に含まれていなかったのだそうだ。今回、DCAは「iコンプライアンス」「インターネット&デジタルコンテンツテクノロジー」「ネットワークリテラシー」といったインターネットに関するほぼすべてにまで資格取得に必要とする知識範囲を拡大。これによって1つの資格だけで、ネット全般に関する知識で、どの程度までのレベルであるか一目瞭然になるわけだ。

■各大学のアプローチもさまざま
白鳥氏の説明の後、各大学でのDCAへの取り組みが、それぞれの大学の担当の先生方より説明がなされた。「青山学院大学」「東京工科大学」「千葉商科大学」「東北福祉大学」の4大学は、学風も異なれば、文系に強い、理系専門など、それぞれ得意としている分野が異なっている。

そうした違いのある学校が集まっても、DCAによる一定レベルの資格認定によって、学生の知識レベルを統一できるわけで、こうした指標は、人事などの採用担当にとって非常に有意であると言えるだろう。

■青山学院大学による専門家育成プログラム
青山学院大学は、社会連携機構ヒューマン・イノベーション研究センター(HiRC)センター長・教授である玉木欣也氏によって、同大学のDCAへの取り組みに関する説明があった。文系・理系をほぼ網羅するオールマイティな同学だが「学びのプロ」育成に向けた産学連携教育・研究拠点であるHiRCにより学生向けのDCA3級および社会人向けのDCA2級の専門家育成プログラムを考えているという。

青山学院大学によるDCAへのアプローチ



青山学院大学
社会連携機構ヒューマン・イノベーション研究センター(HiRC)
センター長・教授玉木欣也氏


■東京工科大学のDCA向けカリキュラム
東京工科大学は、同学メディア学部学部長・教授の飯田 仁氏によりDCAへの取り組みについて説明があった。1986年に開学した同大学だが、日本で初めてメディア学部を設置するなどIT系に強い特色を持つ。そのメディア学部だからこそDCAに関する内容を、4年間を通して必須カリキュラムとして展開することを目指すという。

4年間を通じたトータルでのカリキュラム編成



東京工科大学
メディア学部
学部長・教授 飯田 仁氏


■通常の授業を受けるだけでDCA認定が可能な千葉商科大学
創立85年の長い歴史を持つ千葉商科大学は、同学情報基盤センターのセンター長である柏木将宏氏によってDCAへの取り組みに関する説明があった。たとえば同大学の政策情報学部は、DCA取得に合致する情報や知識ドメインに非常に親和性の高いカリキュラムがすでに用意されており、通常の授業を受けているだけでDCAが取得可能になるという。商学部のカリキュラムに関してもIT関係の科目も多く、それほど苦労せずにDCA認定を通常の授業に取り込んでいくことが可能になるという。

通常の授業内でDCA対応が可能だという千葉商科大学



千葉商科大学
情報基盤センター
センター長 柏木将宏氏


■インターンシップによる実践の活用を狙う東北福祉大学
東北福祉大学は同学総合マネジメント学部の学部長・教授である鴨池 治氏により、同学のDCAへの取り組みに関する説明があった。「行学一如」という言葉を基本に理論と実践の融合を目指すのが同学の理念になっているが、DCA取得にも実践を盛り込んで、即戦力的な人材の育成に期待できそうなカリキュラムになっている。「副専攻」等を活用して一部を除く、全学部で卒業単位化するのに加えて、実践の場としてのインターンシップを活用するのが特徴だ。DCA取得というだけでなく、卒業と同時に関連した仕事に即座に取り掛かることが可能な人材を育成できるといった点で要注目だと言えるだろう。

全学部でDCA関係の即戦力である人材育成を目指す東北福祉大学



東北福祉大学
総合マネジメント学部
学部長・教授 鴨池 治氏


DCAのロゴマーク


以上で各大学のDCAへの取り組みを紹介した。最後に発表会の進行を務めたI-ROIの理事である松原 卓氏によりDCAのロゴマークがお披露目され、発表会が終了した。それぞれの大学の強みや性格を活かした取り組みになっており、またDCAの認知が広がっていくことにより、その大学への入学を希望する学生も増えることが考えられる。

こうした統一基準の登場は歓迎すべきで、代表理事の白鳥氏によるとDCA資格の取得により「労働市場へのマッチング」も狙うことが可能になるとしており、今後広く一般に普及することでさらに参加大学が増え、資格の重要性も増してくることを期待したい。

一般社団法人インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)