2005年06月01日

社外取締役について考える 後編 日本における社外取締役の監督機能の理想形を提示してみる



社外取締役の制度について「社外」の条件(※)などは詳細は専門書にゆずるが、商法・商法特例法・証券取引法等に根拠のある監査で、会社従業員の目から見てぶっちゃけた話、名実ともに監査らしい監査がまともにされたなあと思ったことは一度もない。もっともこれで制度の有効・無効を検討するのは大変な乱暴で、もともと名古屋には比較的キャッシュリッチな会社が多く、資本の効率性を除けば(笑)、上記法令で問題とされているようなレベルでは経営に問題もないところが多いので、社外だろうが国外だろうが地球外だろうが、監査が入っても痛くもカユくもないというのが第一の理由である。



平穏時の消火器を眺めていざというときに使えるかどうかを論じるがごとしなのである。しかし自分が関わらなかった現場に関する見聞によれば、ここは通してはいかんだろうと思うところが通っている例も複数ある。社外取締役の監督機能に至ってはなおさらであり、期待されている機能を果たされていないと思う。どのように機能を奪われているかというと象徴的に言えば、1)社内取締役に懐柔されているか、2)懐柔すらされずにお客さん席に座らされているか、のどちらかであっていずれにせよ社内取締役たちに不都合なおイタをしないような有形無形の工夫がなされて法令を骨抜きにしている。「社外取締役出席時用取締役会」という名の三文芝居が延々と演じられ(しかもこんな芝居してもらえるなど気を遣ってもらえている方である)社外取締役を丁寧に全員お見送りした後にアジトの飲み屋で改めて本物の取締役会が行われるのが通例である。このように内部の人間が通牒してこのどちらかの扱いをすることに決めたらこれを切り崩すことは不可能であり、そこを切り崩すことを社外取締役に期待するのは酷に過ぎる。

では社外取締役がする監督は理想論で現実にはあり得ないかというとそうは思わない。参考にすべきではないかと思う事例を見たことが一度ある。ただし上記諸法令による監査ではなく「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」に関する経済産業省の立入検査(23条)だ。

方針を簡単に一言で言うと、通常時の書類についてはほとんど文句をつけないが実際にカネの交付がなされる段階に近づくとそこそこに集めた資料と担当者をざっと見て(ああここはアウトだ)と内部で決定したらその会社を徹底的に精査しまくる方法である。相手が「ああごめんなさい。私が悪うございました。もらうだけもらって適当なことして失敗というつもりでした。申請した補助金は丁重に辞退させていただきます」と頭を下げるまで徹底的に検査する。一応検査のやりすぎを咎める条文(24条不当干渉の禁止等)もあるがまず使ってこないのでほぼ100%勝つことになる。普段はほとんど関わっていなくても、すべき検査が必要十分なだけなされていたし絡むべきところにきちんと絡んでいたと思う。

こんな曖昧模糊とした書き方しかできなくて申し訳ない。(何言ってんだこいつ。大雑把なたとえばかりで具体的にピンとこないぞ。もっとはっきり書け)と思われる方は、今話題の旧通産省出身・村上世彰氏のさまざまな会社の経営陣への絡み方を想起していただきたい。私が見るところ村上氏の活動方針はいろいろ言われているがごくシンプルであり要は氏が通産官僚時代に身につけた会社の取締役への絡み方を武器にその武器を株主としての立場で行使しているのだ。でその通産省の検査の仕方とはこの会社はダメだこの取締役はダメだと事前に○×を決めたら相手がポッキリ折れるまでの戦略を全部組んでしまい後はその戦略に沿って機械的にやるそういうやり方なんである。「徹底的にやるぞ」とターゲットスコープにロックオンされた時点で相当な確率で云々・・・ということになる。

まとめよう。制度上言葉は同じ社外取締役であるが、アメリカと日本では相当な違いがある。基本的な点だけでも以下の2点が指摘できる。

1)日本ではアメリカのように取締役会のメンバーの過半数が社外取締役なのではなく、取締役会に設置される3つの委員会のメンバーの過半数が社外取締役でなければならないとされるに過ぎない。
2)アメリカの社外取締役は日本のそれに比べて相当に独立性の強い者が予定されているため一般に親会社の関係者・重要な取引先・親族等が社外取締役にはなれないが、日本ではなれる(商法188条2項7号の2・商法特例法21条の8第4項)

従って日本の社外取締役の機能の仕方は独自に模索されてしかるべきだが、○×を決めるのに重要な情報がきちんと社外取締役にわたることが担保されており、かつ、×と決めて是正すべく活動するために必要な権限が十分に与えられていればという条件の下で、上述した監督(検査)方法は日本の社外取締役の監督機能の具体的かつ理想的な機能の仕方として想定されてよいのではないかと思う。


(参考文献)落合誠一著
      「放送大学教材 商法」(ISBN4-595-2369-8 2004年4月20日第2刷)
      p68,p89

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(書き終わって)確かに一生懸命自分の知る限りで思うところを書いたのですが同時にやっぱ素人が慣れねえことするもんでねえべという気持ちもたくさんございます。忌憚のない厳しいご批判心よりお待ちしております。「その担保のしかたが問題なんじゃねえか」「社外取締役に官庁と同じ権限与えろってか」等々。だって素晴らしかったんだもん。



itobun at 18:15│Comments(8)TrackBack(0)日本を知る 社会制度・法 

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この記事へのコメント

1. Posted by toshi   2005年05月17日 02:02
どうもです。
現実、私も社外監査役ですが、結局のところ、会社で独自の動きができるかどうかは、社長さんに取り入ることができるかどうか、というところにかかっているように思います。社長さんに気に入られたら「どうぞ、存分にやってください!」って言われて、内部監査も張り切っちゃう、みたいなとこまで行きます。でも、それって実は社長さんと信頼関係を築いているようなもんで、本当に社外の人間に要求されている「社長に物申す」的なことは、すでに困難な状況になってるようで、なんか矛盾していますよね。
本当に考えるとむずかしいです。
2. Posted by bun   2005年05月17日 08:37
toshiさんおはようございます。コメントありがとうございました。

はい。「どうぞ、存分にやってください!」って社長さんが言えるところって、それを社長さんが言えるってことだけですでにほとんど合格なんではないかと思うのです。難しいですね。
3. Posted by 47th   2005年05月18日 03:35
社外取締役って、なるほど「消火器」なのかも知れませんね。
実際に機能するのは、組織絡みの違法行為の疑いがある場合とか、企業の支配権移動なんかの限られた局面でもいいのでしょうが、その代わりいざ火事のときに「隊長、消火器効きません」では困りますよね。
局面をしぼる代わりに、その局面ではかなり大幅に社外取締役に権限を与えるような仕組みを考えるとすると・・・実は、これってメインバンクによるモニタリングと理論的には似たような構造ですから、意外と日本でもはまるのかも知れませんね。
4. Posted by bun   2005年05月18日 06:42
47thさんコメントありがとうございました。最大限好意的に読んでくださっていて感謝しております。おっしゃる通りでいざというときの権限がなさすぎたためむしろ社外取締役をはじくために開き直らせてしまうというか半端な監視をする社外取締役がいるためにかえって事態を酷くする弊害があると思います。やらなくていい悪事に手を染めて「悪い俺たちを止められなかった君も仲間だよね」というやり方です。そうでなくても、これってマズいんでないのと皆が思いながら「まあ俺のせいじゃなければいいか」と誰も止められず、誰がやったとわからない状態を保ちながら事態をどんどん悪化させてしまうということもある。早いうちにブレーキをかけてもらえて実はありがたかったということのもあるはずで、通常時にはあまり権力がなくても怒らせると怖い存在を置くというのは通常の業務を妨げないで適切な監督するのに大変効果的だと思います。
5. Posted by おおた葉一郎   2005年05月19日 17:03
itobunさんこんにちは、
米国的社外取締役ではないのですが、出資会社の管理の仕事もあり、いくつかの子会社の役員もしているのですが、最大の悩みは「隠蔽体質」ですね。というか、これにつきるような気もします。社外取締役にどうやって内緒にするかって苦労されちゃうわけです。
ところが、一方、ERPが加速していて、世界中がSAPかORACLEの仕組みを入れてしまうような方向があるわけですね。(たとえば米系企業はQ決算なんか、Qが終わってから1週間強で発表するけど、日本では1ヶ月以上はかかります)。そしてERPが進むと、即時に会社の決算三表なんかがわかるかもしれません。本日正午の当社の資産額とかが表示されたりするわけです。となれば、取締役すら要らない(株主が直接統治)時代がくる可能性があるのではと予感しています。(ERP関係だと、納入業者もSAP、ORACLEの導入を強制されるかもなんて予想もあります)
6. Posted by bun   2005年05月19日 18:56
おおたさんいらっしゃい。貴重なお話ありがとうございます。感激しております。勉強になります。おっしゃる通りだと思います。隠蔽体質対ヨソモノ。インフラはすでに毎朝割引現在価値で出せる状態にあると思います。私も常々その1ヶ月の間に何しているんだろう心の準備だろうかと不思議に思っておりました。私が関わるようなおおたさんが見られるような企業よりもずっと小さな企業にERP/SAPは不評でして、「メンテナンス寄生虫」呼ばわりする人すらあります。あるいはあまりに露骨に企業価値を計算してのけるところがおっしゃる隠蔽体質に嫌われているのかもしれないです。
7. Posted by おおた葉一郎   2005年05月20日 22:30
名古屋の中心部にも、資本金1000万円の子会社があるのですよ。
この前、金庫の底の方の契約書やら委任状やら、虫干ししてあげたら、社長の顔が3年物の梅干しなってしまいました。
8. Posted by bun   2005年05月21日 00:01
えーそもそも契約書や委任状の整理以外に社長の仕事ってありましたっけ?(笑)和歌山出身の方の梅干し顔だったら美味しそうかもしれませんね(笑)。ご苦労が忍ばれます。ご苦労様です。

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