「理義字」という言葉がある。
Wikipediaから引用すると・・・

理義字(りぎじ)は、同じ漢字を2つ、ないし、3つ組み合わせて構成される漢字のこと。古くは平安時代の小野篁による歌集『小野篁歌字尽』などに見られ、寺子屋などにおいて漢字を学習する際の手引きとして用いられた書籍(『童子字尽安見』、『年中往来用文章』など)にも「理義字集」が見られる。

らしい。
『小野篁歌字尽』・・・もう1年以上更新してない・・・。三日坊主である。
『小野篁歌字尽』には確かに以下のような覚え方が掲載されている(ここではそれぞれの字に関して解説はしない)。しかし、「理義字」という言葉は見られない。


みつかける とりはあつまる しかおろか うをはめめざこ ひつじなまぐさ
(三つ掛ける、隹はあつまる、鹿疎か、魚は目目雑魚、羊生臭)

雥 麤 鱻 羴

みつかける ひはひばななり みづふかし きもりひひかり むまはおどろく
(三つ掛ける、火は火花なり、水深し、木森日光、馬は驚く)
焱 淼 森 晶 驫

こういった同じ字を「品」のように三つ重ねた漢字は「理義字」の中でも特に「品字様」とも呼ばれ、なかなか興味を惹かれる字形のようです。中国の「朝日新聞中文網」が「我们又双叒叕要换首相了」というツイートをしたところ、2時間で9000RTもあったとか。それからちょっとした「同じ漢字を重ねた漢字」ブームが起こったそうです。


では、「理義字」という言葉はどこで生まれたのだろうか?
Wikipediaの記事には出典がない。しかし、『童子字尽安見』、『年中往来用文章』などに「理義字集」が見られると書かれている。
調べたところ、『童子字尽安見』は1716年、『年中往来用文章』は1787年の出版だったので、『童子字尽安見』の方が「理義字」の古い用例となる(これより古い例を知っていたら是非教えてください!)。幸いにも、我が校の図書館にある『節用集大系 第二五巻』に『童子字尽安見』の写本があった。まず、『節用集大系』に書かれている『童子字尽安見』の解説を以下に記す。

[書名]収録書名は扉による。外題「万貨字論・古語註解 童子字尽安見」。首題「四民童子字尽安見」。
[編者]松井庄左衛門(自更軒免睡)編・序。菊需淮堂跋。
[年代]正徳六年(一七一六)一月刊。江戸・須原屋茂兵衛版。
[体裁]一冊。二二九ミリ×一六二ミリ。九〇丁。
[内容]本書は「同訓別格門」以下六四門ごとに語彙を集めたもので、行書体の漢字表記に平仮名で読みを付し、所々語彙の下に、語注・用法・故事などを掲げてある。子どもの関心を引くために、通常の節用集の語彙分類とは異なる独自の分類を用いており、各分類の中もほとんどイロハ順によらずに語彙を集録していある。序文にもあるように、もっぱら「寺子入学少助」のために編集された節用集である。


たしかに、六四門には「理義字集」というものが載っている。今回からは、ここに掲載されている字を調べていこうと思う。△とか丶三つ重なった字などがあって、なかなか面白いのである。
「理義字集」は最初は品字様が51文字掲載されている。続いて、二つ横に組み合わさった漢字(双字様・林字様とでも呼ぼうか)が46字、二つ縦に組み合わさった漢字(炎字様とかどうだ)が10字、その次には「」、「」がある。
そして、その後に並ぶのは「形などが面白い漢字」35字なのである。

Wikipediaの理義字には、

同じ漢字を2つ組み合わせて構成されるものに関しては、「昌」などのように、左右ではなく上下に同じ漢字を2つ組み合わせて構成されるものは、理義字とされない。

と書かれているが、『童子字尽安見』では炎字様も掲載されているのだ

というか、「同じ漢字をいくつか組み合わせてできる漢字」というWikipediaの定義そのものが、『童子字尽安見』の「理義字集」では成り立っていない。確かに最初はそういった字が並んでいるが、後の方の漢字は、

凹凸・・・丫兕・・・閂閊䦒・・・夵尖・・・糴糶 (・・・は中略)

理義字の判定に全く統一性がないのだ。

要するに、ここでいう「理義字」は、現在でいう「変な漢字」みたいなものだったのではと思えてくる。つまり、「漢字同士が組み合わさった漢字」を意味しているのではなく、「会意・象形性が強く、面白い形をした漢字」だったのではないかと思うのだ

Wikipediaの「理義字」の定義の出典が知りたい。



(参考:2015年12月19日加筆)

上にある通り、「理義字集」にのっている字を一つ一つ解説する記事を作ろうと思ったが、三年ブランクがあって完全にやる気が失せたので、以下に画像を載せてしまう。

はしだて」という漢字は面白い。『運歩色葉集』にも「あまのはしだて」と読ませる難しい漢字が載っていたが、それとも字形が異なる。


次記事では、理義字という言葉の解釈について述べたが、まあ結局分からなくなっているので、見る必要は特にないだろう。


以下に、『童子字尽安見』の「理義字集」の画像を載せる。As you see, Wikipediaの理義字の定義は、途中までしか成り立っていないのである。

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