マイナス金利となる国債がドイツで発行された。意図的にマイナス金利にしたのではなく、結果的にマイナス金利になったのである。機関投資家の落札した平均価格が100.16ユーロ、償還時の価格が100ユーロ、設定利率は0%、発行予定額の2倍の応募のあった結果である。

 一方で8月30日に発行されたイタリア国債10年物は5.19%。イタリアは本当にデフォルトするのか。市場関係者の思惑がこの結果として表れたとしても、機関投資家は損が確実である取引を本当にするのかと言う素朴な疑問がわいてくる。

 日経ヴェリタス233号を読んで理解できた。要約すれば以下のとおりである。

 「潜在的な為替差益が国債の価格に織り込まれている。もしユーロ圏が分裂すれば勝ち組で造る新しい通貨は価値が高くなり、益が出る。また、アセットスワップの影響で、非ユーロ圏の投資家がドル資金をスワップ取引を利用してユーロに交換すると、ドル資金が逼迫していることから上乗せ金利を受け取れる。これを利用してユーロ国債を購入すれば小幅ながらプラス金利に変身する。」
 なるほど、アウトサイダーでは解らない世界の話だが、疑問は一応解決した。

 さて、経済評論家の藤巻健史氏が、著書の中で、デフレ脱却のために銀行預金にマイナス金利を導入したらと提言していた。
 貸金庫のように、預けていることの預け料として、銀行預金からその料金を支払うのである。
 マイナス金利になれば預金者はそれが嫌で、現金化し、消費が促進されるという論理である。しかし、直接的マイナス金利は預金取り付け騒ぎが起こること、銀行は様々な手数料を引き上げてマイナス金利化させていること、仮にマイナス金利や手数料を上げても銀行預金が現金に成り代わるだけで、「金の巡り」が良くなるわけではないといった理由から現実的ではないと専門家筋は見ているようだ。
 余談だが、この「金の巡り」をよくするために、世界恐慌時の1930年代、オーストリアの地方都市ヴェルグルで、月初に紙幣の1%の印紙を貼らないと、その紙幣は使用できなくなると言う制度を導入した。貼るのが嫌な消費者は紙幣を手にしたとたんそれを使い、消費増大につながったという話が日経ヴェリタス233号に紹介されていた。先人達は色々な事を考えていたのだと改めて感心させられる。
 
 さてこの7月、デンマーク中央銀行は、現実にマイナス金利制度を導入した。民間銀行が中央銀行に預け入れる預金に月一定額を超過した準備預金にマイナス金利を導入したのである。これにECBが追随するか注目の的となっている。ドラギECB総裁は「我々にとって未踏の領域だ。」とマイナス金利を牽制しているが、白川日銀総裁は7月12日の日銀政策決定会合で、マイナス金利の導入を否定している。
 民間サイドでのマイナス金利は預金者への動揺が大きいことから現実的でないにしても、世界を取り巻くこの不況感、金利は限りなく0に近づき、報われない公共投資の結果、国家財政はどこも火の車。打つ手の無くなった現在、日銀と民間銀行における超過準備金利を、ちょっとだけマイナスの、未踏の領域に足を踏み入れてみたらと思うのですが、如何でしょうか、白川日銀総裁。