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薔薇の詩人の〔恋男〕⑥


 親愛なる 道野 さま
 ご無沙汰いたしております。お元気でいらっしゃいますか。

 時は何も告げずに過ぎてゆき、早や水無月の音色が僕を犯します。
 部屋には数々の暦が、気ままな時の移ろいを無情なまでに示すだけ。
 これから来る未来でさえ、先走った無造作で知らせてくれるだけです。 

 電話をかければ、すぐ話しができるけど、電話はただの冷たい機械で、
 ひたっすらに電話恐怖症になってしまうのです。
 何度かけようと思ったか分からない。でも、右往左往の惑いが心を苦しめ
 結局、今日のこの書面……。

 「画集&歌集」は完成の日の目を見ましたか?名古屋のお仕事は、無事
 成功に終わりましたか?
 今のところ、忙しさは如何ですか。繁忙の一時は過ぎたでしょうか。
 それとも、新しい仕事で東京に、大阪に東西奔走の日々の連続でしょうか?

 6月には手がすくはずだったけど、予定が狂って自由な時間がとれない、
 今の僕です。でも、一度伺わなければならないのです。
 いつまでもお借りしているわけにはいきません、3冊の本…。
 小包で送り返すことだけは、いくらでもできます。でも、まだそこまで心の準備、
 いや心の整理ができないから、毎日、書棚の中をうつろな眼差しでみつめています。
 思い切って平日にお休みをとろうかなと思っています、2日ばかり。
 一度、やっくりと京都の空気を吸ってみたいなって思ったりして……。
 昨日、雑誌の懸賞に当たって、東洋文化社ってところの「のんちっく京都」って
 本が届いてました。いろんな情報が、またまた僕を引きつけるのです。

 NОW 夏の号、読みましたか?〝日本のホモセクシャル〟〝伊藤文学
 〝美輪明宏〟〝薔薇族〟……驚きました。まさか、こんな雑誌に……。
 もうずっと、買っていません。しばらく遠ざかっていました、この世界。
 周囲には、同性もいない、異性もいない、ただひたすらに孤独な僕だけが
 浮き彫りさながら、何を糧に生きていたか分からない数か月……。
 4か月ぶりに同級生の彼からの電話。目が覚めたその時。待ち望んでいたように
 やはり僕には、同性に抱かれている時が最高なのかも知れない。
 酒も煙草も僕を酔わせてはくれない。ミュージックもドライブも、何をも…。
 熱い火照った胸に、男の香りが漂う胸に抱かれている時が、僕自身の
 生きてる証し。 でもなぜ、こんな僕がいるのでしょう、同性に抱かれる僕が…。

 蛍光灯の白い光があまりに眩しすぎるので、部屋の灯りを替えました。
 でっかいフロアースタンドをひとつ買いました。全く違った灯りの世界。
 忘れかけていた幼い頃を思い出します。白熱球しか無かった頃を。
 蛍光灯は冷たい死のイメージ、白熱球は温かい生のイメージ。
 読書のひととき、音楽のひととき、ウヰスキーのひととき、徐々に生き返ってくるみたい。

 京都は雨の多いところですか。盆地だから少ないかな。
 しっとりと雨の京都を佇むってのも、いいでしょうね。
 今、銀花を購読しています。(多分、道野さんも読んでみえたと思います。)
 ここに毎回、塚本邦雄さんの文学が連載されています。気に入っています。

 ずっと手紙を書かなかったものだから疲れました。
 いつも文面も構成も相変わらずで、すみません。
 22歳の幼さをお許しください。

 書かなければならない、という使命感に押され、ここまで書き上げました。
 しかし、数か月間、何もないままの生きざまだったから、少しの進歩も見ることが
 できないかも知れません。その分は、どこかで取り返したいと思っています。

 また、お返事いただけますか。
 何かにたよって生きていかないと、自分の心が死んでしまうようで切ないのです。
 一行でも、いいですから……。

                                         敬 具

     露曼の画人   さねゆき  さま

                         絽曼の詩人     るい・累

                                       5X. 6.19

                    ◆

 手紙の交信は、これで終わったのですが、とうとう書籍を返すことができずに歳月を経て、
2年ほど後に返却の請求が届いています。
 ただ、何度かはアパートを訪問しているはずなのですけど、彼の裸身というものは、あまり
記憶がないのです。
 腰タオルは、なんとなく記憶の端にある気がしますけど、そのままの姿で、ダブルベッドに
入り込んでみえたのだったかなー。
 僕も、シャワーを使わせてもらったのかなー。未だかって、謎めいています。

 ポートレートは、大切に保管しています。
 いろんな人から手紙をもらっていますけど、ほとんど処分しました。
 そんな中で、この彼からの手紙だけは封書ともに、保管してあるのです。
 ブルーブラックの万年筆で書かれた、大人びて年齢を想像できないゴツゴツとしたでっかい
文字、筆さばき、言の葉、これらの全てに魅力を感じ、捨てることができませんでした。

 そして、懐かしいことに最初の手紙は、『局止め』って書いてありまして、宛名書きの文字と、
差出人の裏書が全く違うのです。
 僕も毎週、郵便局に通い、「局留」の到着を確認していましたが、変に思われていたのでは
ないでしょうか。
 僕の顔を見たら、「あっ来てますよ」って、お馴染みになってしまいましたけど…。

 とりあえず、この章は完了とします。

 でも、あんまり官能的な部分はなかったですね。不思議だなー。.。o○.。o○.。o○










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