中小企業の法務・組織再編はこう進める!

司法書士法人名南経営 岩本直也 公式ブログ

 では、具体的な事例に当てはめてみます.。

 時価1000万円、簿価500万円の財産を甲社に対し現物出資して、甲社から100株の株式(1株あたりの時価10万円)の発行を受けた場合、①②③をいくらとすればよいのか。

 

 ①「払込金額」…会社法199条1項2号

 ②「現物出資財産の価額」…会社法199条1項3号

 ③「払込み又は給付を受けた財産の額」…会社法445条1項、会社計算規則13条の資本金

  等増加限度額

 
①は、金銭出資か現物出資かに関係なく、単に数字として1株当たり何円で株式を発行するかを定めるものです。
 
甲社は、自らの財務状況や資金調達の必要性等を考慮して、自由に決定することができます。
 
もっとも、この払込金額は当該株式の時価と比較して有利発行になるか否かの基準になり、それ以上に中小企業においては税法上の評価も十分検討したうえで決定されることになります。
 
この事例では、時価と同額の1株あたり10万円とします。

 ②は、例えば払込金額が1株当たり10万円としている場合に現物出資財産を1000万円に設定すれば1000万円の金銭が払い込まれた場合と同様に、100株が発行されることになります。時価や簿価に拘束されることなく、現物出資者との交渉で甲社の裁量で自由に決定することができます。ただし、①と同様に、税法上の制約は受けるでしょう。

 
この現物出資財産の価額が500万円を超える場合、検査役の調査が必要になります(会社法207条)。たとえば、検査役の調査を省略するために、現物出資財産の価額を500万円として定めたとします。すると、時価1000万円の財産を出資して、500万円分の甲社株式(現物出資財産の価額500万円÷①の1株あたり10万円=50株(1株あたりの時価10万円))しかもらえないため経済合理性がなく、この条件では現物出資者は現れないと思います。
 そこで、①の払込金額を1株あたり5万円とし、100株(1株あたりの時価10万円)を発行するか、②の現物出資財産の価額を時価と同じ1000万円とするか、を甲社は選択できることになります。
 
前者は時価1株あたり10万円の株式を払込金額1株あたり5万円で発行するため、有利発行の規制を受けることになります。一方、後者は有利発行の問題はないが、検査役の調査が必要になります。また、給付期日に現物出資財産の時価が下落し、1000万円に著しく不足する場合には価額填補責任(会社法212条)が生じます。
 
甲社は、これらの論点を含めたて現物出資財産の価額を決定することになります。

 
③は、甲社に裁量の余地はなく、会計慣行や会社計算規則によって算定される額です。
 
多くの場合(企業結合会計基準等においてパーチェス法が適用される場面又は企業結合会計基準等の適用がない現物出資)、現物出資財産の「給付期日」における「時価」によって算定されることになります。

 

つづく

いわゆる増資は、引受人が金銭を払い込む対価として、発行会社の株式の交付を受けることです。
現物出資の場合は、対価として金銭以外の財産を給付することを言います。


会社法では、増資の決議にあたりいくつかの「額」を決定することになっています。
 
①「払込金額」…会社法199条1項2号
 
②「現物出資財産の価額」…会社法199条1項3号
 
③「払込み又は給付を受けた財産の額」…会社法445条1項、会社計算規則13条の資本金
  等増加限度額

 

①は、1株あたりの払込金額であって、有利発行(会社法199条3項)の基準となる額
②は、金銭と異なりすぐに金銭的な価値がわからない現物出資財産について、金銭だったならいくらとして、何株が発行されるか、という計算のために便宜的に当該現物出資財産に付された価額
③は、資本金等の計上の基準となる額であって、会計慣行及び会社計算規則14条により発行会社の裁量の余地なく決定される額。

③の額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができます(会社法445条2項)。
簡単に言うと、2分の1以上は資本金にしなさい、残りは資本準備金とすることができますよ、資本金とする場合は増加させる資本金の額×1000分の7(最低額は3万円)を登録免許税として納めてくださいね。

登記の添付書類で言いますと、①②が議事録、③が資本金の額の計上を証する書面に、それぞれ記載されることになります。

つづく

法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会
企業統治等に関する規律の見直しに関する論点の検討について
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900888899.html


「株式会社(以下「株式交付親株式会社」という。)は、他の会社(外国会社を含み、当該株式会社の子会社を除く。以下「株式交付子会社」という。)の株式その他の持分(以下単に「株式」という。)の取得により株式交付子会社をその子会社としようとする場合には、会社法第199条第1項の募集によらずに、当該株式を取得するのと引換えに当該株式を有する者に対して株式交付親株式会社の株式を交付すること(以下「株式交付」という。)ができるものとすることについて、どのように考えるか。」

【株式交換:会社法第2条第31号】
株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう。以下同じ。)の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。
 
1.完全親子関係を創設する組織再編行為
 2.子会社になる会社は株式会社に限られる
 
3.当事会社間での契約に基づき、原則各当事会社の株主総会での承認(特別決議)が必要

【検討されている新制度は】
 1.「子会社としようとする場合」完全親子関係ではなくてもよい
 
2.「他の会社(外国会社を含む…)」株式会社でなくてもよい
 3.株式交付子会社では、特別な手続きは不要
   
(非公開会社の場合、譲渡承認手続きは必要でしょう。)

手元に資金的な余裕がない株式会社が企業を買収しようとする場合に、対価が金銭ではなく自社株でできる、ということでしょうか。

今後の動きに注目したいと思います。

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